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潤と譲と夏目「因習」
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「別に本気で言ってるわけじゃないよ。もし仮にしたとしたら、って話だよ。それに、実の弟じゃないって言ってるのに」
譲が彼氏に言い訳した。
「実の弟じゃなくても血はつながってるんだろう? 情はないのかよ。それなのに、なんで仮にも弟を人に与えるみたいな言い方できるんだよ」
夏目は弟想いらしく、さっきからすっかり憤慨してしまっているようだった。
「いや、例えばというか、仮に、の話だよ」
譲がなだめるように言った。
「そんなの嫌だって言ってるだろう」
夏目は不機嫌だった。
「わかった。隼人が、嫌なら、もう、そういうことは言わないように気をつけるよ」
譲も、少し腹を立てたように言った。
「いや、言うくらいは、言ってもいいけどさ」
夏目は、少し、怒りと衝撃がおさまったようで、また、譲が怒り出したので、態度を軟化させて言い直した。
「なら、よかったよ」
譲兄は、怒りで優しい恋人を脅したりして、ずるいな、と潤は思った。
「言うくらい言ってもいいけど、譲の考え方、普通じゃないから」
夏目は、あくまで言った 。
「わかってるって」
譲は、なんと言って説明するのか、潤は、固唾をのんで見守った。
「普通じゃない、そうかもしれない。きっとそうだよね。でも、これは大洗家の習慣で」
譲が、恋人に、自分の家の習慣を解説しはじめた。
「習慣? どういうこと? そういうの因襲っていうんじゃないか?」
夏目は、眉をひそめた。
「うん、因襲だね。俺らは、子どもの頃からそうだから、もう、慣れてしまっているんだけど、はたから見たら、不気味だよね、きっと」
譲は、努めて冷静さを保とうとしているようだった。
「不気味というか、反社会的というか、反道徳的、反倫理的、発達心理学的にも、まずいんじゃないか?」
夏目は、難しい顔をした。
「まあ、そうかもしれないんだけど、とにかく、大洗家では、それが日常なんだよ。みんなの非日常が日常」
「薄々感じてはいたけど、ハードな日常なんだね」
夏目は、含みのある言い方をした。
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