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潤と譲と夏目 「病室で」
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「僕がついてるから」
夏目が潤の手を握り返した。
「うん」
潤たちは、病室に入った。ベッドに横たわった怪我人は、死んだように目を閉じていた。
「怖い……」
潤は、夏目の胸にすがりついた。夏目の手が潤の背中を撫でた。
「おい、親父」
譲が声をかけた。
潤は、かたく目をつぶって、夏目に抱きついた。
「おい、潤、何してんだよ。勝手に人の彼氏に抱きついてんじゃねぇ」
譲が来て潤の耳に低い声でおどすように、すごんでみせた。
「怒ってる?」
「誰がだよ? 俺は怒ってるけどな。親父のことは、知らねえよ。潤が自分で聞けよ」
潤は、こわごわ振り返った。そしてすぐに、夏目の胸に戻り、すがりつくようにして言った。
「夏目先生、好き」
「こいつの言うこと気にしないで。誰にでも言ってるから」
譲が説明するように言った。
「ちがうよ」
潤は、必死で否定した。
「だから僕のこと殺さないで」
「潤、離れろよ」
譲が潤の肩をつかんだ。
「痛いっ」
潤は泣きだした。
「譲、乱暴するなよ。かわいそうじゃないか」
「してないよ、ちょっと引っ張っただけだろ」
「潤君、興奮してるんだね。ちょっと座ろうか?」
夏目が潤に椅子をすすめた。
潤は、うなずいて座った。
「疲れた?」
潤は夏目に聞かれて首を縦にふった。
「ちょっと二人だけにしてあげようか?」
「ええっ、危ないぜ」
「どうして?」
「だって、こいつが刺した……」
「そうなの?」
「言うなよ」
「誰に?」
「警察とか」
「言わないけど、なんでそんなことに?」
「知らないよ。潤に聞けよ。俺は居合わせただけだし」
「どういう状況でそうなったの?」
「そんなこと、他人に話せないよ」
「他人?」
「あ、いや、家族にだけしか理解できない儀式というか、習慣というか」
「儀式? 習慣?」
「うん。変な話しなんだよ」
「それ言ったらダメだよ」
潤は言った。
「そうなの?」
夏目がきいた。
「うん。誰にも言ったらいけないんだよ」
潤はこたえた。
「そうなんだ?」
「うん。言ったらお仕置きだもん」
「お仕置き好きのくせに」
「好きじゃないもん」
「うそだぁ。お仕置きしてっておねだりするくせに」
「あのさ」
夏目が口をはさんだ。
「もしかして、何か性的なこと?」
「え?」
「その儀式とか習慣とかいうの」
「ああ……」
「言っちゃダメだって言ってるでしょ」
潤は怒って言った。
「叱られるのは僕なんだからねっ、譲はいいかもしれないけど、僕は」
「興奮してるんだよ。ちょっと僕は席をはずすよ」
夏目が言った。
「待てよ」
譲が夏目の後を追って部屋から出ていってしまった。
潤は一人取り残された。
竹春がベッドに横たわっていた。
相変わらずぴくりとも動かない。
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