アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
the same
-
ホールはさっきと同じく静かで、物音一つしなかった。
これは、青峰探せるかな…
難しそうじゃん…
じゃん…
ジャン…
馬面……ww
とりあえず前へ歩きながらそう思った。
ここでぶっちゃけると、1年半もここに居続けて仲間を探し回ってたり追いかけまくってたりすると、大体の場所が真っ暗でもわかる。
このショッピングモールは円形になってて、同じ階をずっとまっすぐ進んでれば一周できる。
真ん中はどうなってんのかって言うと、エレベーターと待ち合わせのためのソファがあるだけで何もない。エレベーターなんて電気も通ってないし、動かんだろ。
円形の端の方には非常階段が設置されていて、それとちょうど反対にもう一つ設置されている。
非常階段は便利だったな。ドアだから知能低い化け物は入れないし。
繰り返す前に喫煙室に向かった時は、非常階段にお世話になった。
階段だし銃は重いし臭いし暗いしで気分は最悪になったけど、音が反響しやすくて周りに敵がいないかよくわかった。
まぁ、知能の低い青峰(←勝手に決めつけてる)には非常階段なんて発想ないだろうけどな。ハッ。
とりま一階ずつ一周するっきゃねぇな。
「め ん ど い w」
小さく口に出しながら一人声を出さずに爆笑していた。
そのまま一階を見終わり、エレベーターを使って二階に上がる。
守るものもなく一人で歩くとなると、かなり楽だ。
鷹の目も好きなところを集中して使えるし、いざ攻撃が来た時、自分の身を考えるだけでいい。
とたっ
不意に聞こえた物音に足を止めた。
いや、足音。
子供だ。夢であった子たちぐらいの大きさ。
正確に言えば、重さはきっと子供と同じだ。
とたとたっ
『それ』は走っている。軽やかに。
靴じゃない、裸足で走る音がモールを駆け抜ける。
あはは
…軽やかに、楽しそうに。
幼く、可愛げのある笑い声。
声変わりもしていない男の子の声か。
鷹の目を広げて全神経を音に向けた。
あはは、だーれだ?
ゆーくん!
たくさんの足音と、何人かの子供たちの声。
それは上だったり下だったり、右だったり後だったり。
まぁ、ありえないところから聞こえてくる。
はずれ!みなとくんだよ!
なのに、気配はない。
はっきり言って、気味が悪い。
この声を無視して歩き出そうか、そう考えていた矢先。
みれちゃんも一緒にあそぼ!
後ろから唐突に、その名前が聞こえた。
とっさに後ろを向いた。でも、そこには何も無い。
とたとたっ
今度は正反対から。すぐに向き直してもやっぱり何もない。
声と足音だけが反響する。
この子たちはきっと、コトリバコの中に入れられた子たちだ。
つまりもう、生きてない。生き返ることも出来ない。
おいかけっこ!おいかけっこしよ!みれちゃん!
あはは、いーいーよ!
そんでここは、死んだものが化け物になる場所だ。
きっとこの子たちも化け物なんだろう。
でも、ならどうして姿が見えないんだ?
その疑問は腰につけた鍵が答えになっていた。
「…は?この鍵…光ってる?」
夢の中でみれちゃんに貰った鍵。
信じ難い。信じ難いけど、それしかねぇよな。
この鍵が俺に見せてるのか。
それに、子供たちはここで死んだんじゃない。もっとずっと昔の話。
つまり、ここで死んだら化け物になるっていうルールが通じないはず。
そう考えた途端、体の緊張が解けて壁に寄りかかった。
きゃはは!こっちだよー!
まてー!あははっ!
楽しそうな声。これはまだ箱に入れられる前なのか?
この子たちはこれから起こることを知らない。
無知で純粋なまま。そのまま、きっと──
「…っ」
違うだろ俺。
俺が今すべきなのは感傷にひたることじゃない。青峰を助けることだ。そして、この子たちの入ってる箱を探すことだ。
微かに震える自分の手を持ち上げてみる。
その手は確かに銃を握り締めていた。
「…よし。」
壁に寄りかかるのをやめて青峰を探しに戻ろう。
急げ、俺にもきっと、時間が無い。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
50 / 57