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「荷物、良かったら、自転車のカゴに乗せて」
チャリカゴに入っていたカバンを肩に斜め掛けして、おばあさんに手を伸ばした。
「そう?……じゃあ、お願いしようかしら?」
おばあさんはフフッと微笑んで、買物袋を1つだけ俺に手渡した。
「そっちも持つよ」
俺はカゴに買物袋を乗せた後、再び手を伸ばす。
「あら、悪いわよ。あなたもカバン持ってるんだから重いでしょ?」
「大丈夫。ハンドルに掛けるから重くないって」
俺を気遣うように抱え直された買物袋を、半ば強引に引き取ると、おばあさんは驚いた表情をみせる。
でも、すぐに微笑んでくれて少し困ったようにクスッと笑った。
「ありがとう。優しいのね」
たいした事をしている訳じゃないのに、そんな風に言われると恥ずかしい。
たった一度会っただけなのに、いつの間にか俺の中では『ばあちゃん』みたいな存在になってた。
だから、つい手伝いたくなってしまう。
『俺のばあちゃん』に出来なかった事を、おばあさんに対してやりたいだけなのかもしれない。
だとしたら、それは俺のエゴだ。
「この間の飴のお礼だよ」
後ろめたい気持ちから、苦し紛れにそう答えると、話題を変えて話しかけた。
何気ない話をしながら、おばあさんの歩みに合わせて歩を進める。
なんだか懐かしくて、穏やかな気持ちになった。
話をしていて気付いた事がある。
どうやら、おばあさんは俺んちの近所に住んでるらしい。
ついでに家まで荷物を持って行こうか、と申し出たけれど断られた。
おせっかいが過ぎたようだ。
調子に乗っていた自分を改めて戒めつつも
初めて話をした場所の横断歩道を、二人並んでゆっくり渡った。
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