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合宿 3
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一日目の合宿は、基礎で難なく終わった。
かのように見えたけど、シャワーの時間は他の部活と被らないようにと短いし、シャワーは個室とはいえ狭いし、夕飯は多いし、残すなとか言われるし。
極めつけは、みんなで布団を敷いて雑魚寝ってとこ。
ありえないんだけど。オレ睡眠はデリケートな方だし、なんかやたらといびきうっさい奴いるし、先生は普通に保健室のベットで寝てるし。
もう消灯して三時間たったけど全然寝れる気しない。
「はぁ」
思わずため息をこぼしながら、そっと布団を出る。
水のんで、少し外の空気を吸おう。
他の人を起こさないようにこっそり外に出て、自販機に向かった。
「あ、」
自販機のすぐそばのベンチに座っていたひとつの影がゆっくりこちらに振り返った。
「なんだよ、寝れねーの?」
「あんなとこで寝れる人がおかしーんだよー」
たばこの煙を宙に遊ばせて、せんせーはふっと笑った。
「お前そういうの敏感そうだもんな」
ココアを押すとガコンと音がなり、暖かい缶を拾うと、せんせーの隣に腰かけた。
「もー、オレこーゆー体育会系的なノリ会わないんだってー。帰りたいー。家のベットが恋しいー」
「お前ん家のベット狭いだろ。変わらねーよ」
そういえば、一度この人をなりゆきで泊めたことあったんだ。
人と寝るのなんて無理なのに、せんせーの匂いとか、暖かさとかがやたらと安心できて熟睡したんだっけ。
「その狭いベットで熟睡してたくせにー」
カコン、カコン。と、いくら爪を立てても中々空かないココアに苦戦していると、ひょいっとせんせーにとられ、簡単に開けられてしまった。
「ほら」
「あはは。おっとこまえー」
ココアを受け取り、一口飲むとじんわりと口の中に甘さが広がり、ほっとため息をついた。
「そういえば、お前夕方さ」
「うん?」
「郷田に尻揉まれてただろ」
思わずブハっとココアを吹き出しそうになったけど、なんとかこらえせんせーに顔をむけた。
郷田って、部長?名前すら知らなかった。
てか、見てたんだ。ならやっぱりあれは助けてくれたのかな?
「あー、あれね。ありがとー。むこうは教えてくれてるつもりだし、嫌がるのも不謹慎かなって困ってたから助かったよー」
へらりと笑うと、呆れたように頭をくしゃっと撫でられた。
「あほか。嫌なことを嫌がってなにが悪いんだよ。お前わがままなくせに変なとこ気使うよな」
「あはは。そうかなー?」
そんなこと、ないと思うけど。
ひゅうっと風が吹き、春の夜の肌寒さに腕をさすると、せんせーが上着を肩にかけてくれた。
「もう2時だぞ。明日もお前たち部員は朝早いんだから早く寝ろ。めんどくせーから風邪引くなよ。俺の仕事が増える」
オレは、イギリス育ちだし、日本の寒さなんて屁じゃないけど。
「ありがとう」
せんせーの香りのする上着に包まれるとあのお泊まりの日みたいに熟睡出来そうな気がして、素直に受け取ってしまった。
布団に戻りその上着をぎゅっと抱き締めて顔を埋めると、安心できるこの匂い。
気が付けば、目覚ましがなるまでまた深く眠ってしまっていた。
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