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リチェールの気持ち 4
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夜になって、さらに低くなったイギリスの気温に肩を震わせた。
何てことない。傷付いてなんかいない。
たって、普通に笑えたんだ。へらへらへらへらと。
ただ、家にはいるとその張り付いた笑顔はピタッとやんだ。どんどんどんどん体が冷たくなっていくんだ。
ゆーいちがいてくれたから、オレは幸せだった。
_____いつか二人でさ、日本にいこう。
幼い頃交わした約束を君はまだおぼえているかな。
ゆーいち家族がいきなり日本に戻ると言ったとき、気が狂いそうになった。
それでも、なんとか笑って、また会おうって送り出した。
『オレもいきたいよ……日本に……』
君がいないイギリスは、オレには寒すぎて。
_______日本はさ、楽しいんだぜ!ルリもいつかこいよ!
たまに君の笑顔が浮かんでは胸を締め付ける。
『寒い……』
ねぇ、ゆーいち、オレ日本語すっごく上手になったでしょ?
ゆーいちの家に行くと、ゆみちゃんがちぐはぐな英語で優しく笑ってくれて、パパさんが通訳してくれて、……ゆーいちがとなりにいて、みんな本当の家族のように接してくれて、すっごくうれしかったから。
もっともっと深く繋がりたくて、頑張って日本語練習したんだよ。
母親は日本人とのハーフだけど、オレは祖父母とあったこともないし、とにかく毎日毎日パパさんに教えてもらったり、日本の映画を観たり、本を読んだりして頑張ったんだよ。
それなのに、ゆーいちが日本からいなくなって、オレは苦痛を耐えるだけの毎日になった。
親父に、殴られて、犯されて、夜一人で部屋にこもる。
もう、また転んだの?って手当てしてくれるゆみちゃんはいない。男の子はそれくらいやんちゃじゃなきゃって笑ってくれるパパさんもいない。……隣に、ゆーいちがいない。
それだけで、いままでなんともなかったのに。耐えられないくらいの痛みが胸に走った。
『寒いよ…』
オレも行きたいよ、日本に。
きみがいない日常は、オレには寒くて。耐えられないんだ。
君がいたから、オレは幸せだったんだ。君がいない日常なんて、オレにはいらない。
─────────
オレはその日の夜、両親を呼び出した。
日本にどうしてもいきたいと、勿論、オレを便利に使ってた二人からは猛反対されたけど、「それなら、オレはあんたらを訴える」と、切り出した一言でようやく承認された。
長期の休みには必ず戻ると言う条件つきで。
オレは無力な子供だから、親の力がないと国外になんていけない。
訴えて、施設になんて入ったら、もうゆーいちには会えない。
殴られても、犯されても、君のそばにいたいんだよ。
それくらい、君といれるなら、苦痛でも何でもなかったんだ。
初めて、オレを一人の家族として扱ってくれたあの暖かい空間に。
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