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距離感 2
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「あ、せんせー、オレの家じゃなくてゆーいちの家におねがいしていい?」
「はいはい」
車に乗ると、せんせーは早速運転席の窓を開けてタバコに火をつけた。
せんせーのタバコと香水の混ざったいつもの匂い。
さっきまでの気まずさはもうなくて。
イギリスでもずっと思ってた。
またこの空間に早く戻りたいって。
せんせーに、早く会いたいって。
「ねぇ、せんせー、さっきの、せんせーは色んな人に愛されてるって話」
「あ?」
あ?って。相変わらず口が悪いんだから。オレも英語だと人のこと言えないけどさ。
それでも、このひとの優しさを知ってるから、その一言でも、なんだか声を聞けるだけで嬉しいような気がするのはきっとオレがイギリスで疲れて帰ってきたばかりだからだと、自分に言い訳をして、言葉を続けた。
「オレも、せんせーのこと愛してる一人だよー。手当てありがとう。月城千さん、愛してるぜー」
冗談っぽく笑うとせんせーは、ばかじゃねぇのって鼻で笑うだけだった。
「あはは。ほんとだよー?せんせーがいつまでも女の人のとっかえひっかえで婚期遅れたら、オレが嫁にもらってあげるからねー」
「オレが嫁かよ。きもちわりぃな」
「そうだねー。あはは。オレも自分でいっといて何だけど、せんせーのウェディング姿とか全身鳥肌立つくらい気持ち悪いねー」
「最近お前俺に大した口叩くよな。一回調教が必要か?」
丁度赤信号で車止まり、せんせーは腹黒い笑みを浮かべてオレの顎をつかんだ。
ずいっときれいな顔を近付けられ、思わずどきっとする。
「いいいやいやいやいや、せんせー?大人げないよー?」
ちょっと焦りながら身を引くと、せんせーは『くっくっ』と、喉をならして笑いながら体を離して、青に変わった信号を進んだ。
「掘り返して悪いけど、お前さ前襲われかけたとき、どーでもよさそーにしてたよな」
「え?あーー、あの時?そうかな?」
普通に厄介だなぁとか思ってたけど。
「そんな風に顔赤くして焦ることもあるんだな」
「はぁっ?なにいってんのー?ばかじゃないのー?あはは、焦ったこととかないし」
うそ。焦ってる。でも、なんか悔しくて、悪態つくと、せんせーは面白そうにオレの頭をくしゃくしゃした。
「はいはい。かわいいかわいい」
男に可愛いとか、ほんとばかじゃないの。
「うれしくないよ。もー、ほんっと意地悪。やめてよね」
でも、この頭撫でられるのはちょっと嬉しい気がして。
なんだか調子が狂う。
だから、怒ったふりをして顔を背けた。
でも、また楽しそうにくっくって笑うせんせーの声が聞こえるのは、やっぱり好きだな、なんて思ってしまう。
こんなの、イギリスで疲れて帰ってきたせいだ。
だから、距離感掴めてないだけ。
走ったあと見たいに心臓がばくばくするのも、全部そのせい。
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