アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
痛い優しさ 2
-
休憩室の机にうつ伏せになって少しだけ仮眠をとると、あっという間に出勤時間になってしまった。
立ち上がり一度大きく伸びをして、髪を簡単に手直しして、曲がったネクタイを締め直し、店頭に向かった。
オープンは、七時から。出勤すると、すでにちらほらとお客さんがいて、静かにカウンターに向かい他のスタッフに小さな声で「おはよーございます」と、声をかけた。
「あー、ルリ、おは…………なんだ、その顔」
「うわ。顔。」
よくシフトが被る光邦(ミツクニ)さんと、暁(アキラ)さん。
それぞれリアクションが違う。
「あはは。コケちゃいましたー」
何でないように笑い手にアルコールの霧吹きをかけて、除菌すると、二人がしていたように手近にあったグラスをふいた。
「はー?てか、お前それ、絶対コケただけじゃねーだろ。大丈夫かよ?喧嘩で負けたの?」
光邦さんが、いたずらっぽく笑いながら、オレの頬を「いたそー」とつつく。
いたそーじゃなくて、いたいっつの。
「喧嘩なんてしないですよー。階段から転げ落ちちゃって。もうめちゃくちゃ痛いですよー」
光邦さんと暁さんは、幼馴染みらしく、たしか二人とも22歳。大学は違うらしい。
「どうでもいいけど。固まってやってたら怒られるよ」
フレンドリーな光邦さんと違って、暁さんは言葉だけだと少し距離があって冷たい。
でもそれはオレだけじゃなくて、多分、みんなに対してそうだから特に気にならない。
それに言葉がぶっきらぼうなだけで、厄介なお客さんに絡まれてたりするとすぐフォローに来たくれるし、本当は優しい人だって滲んでる気がする。
「暁ぁー。お前生理かよ。年がら年がら年中ピリピリしやがって」
暁さんの頬をつついていた光邦さんの人差し指は振り払われ、「うざ!」と、一言吐き捨てて、暁さんは離れたフキンを手にテーブルを拭きにカウンターから出ていった。
「ごめんな、ルリ。久しぶりの出勤なのにあいつ、ピリピリしてて」
「あはは。ぜんぜーん」
特に光邦さんは正直かなり嫌われてると思う。なのに、気にしたようすもなくけらけらと笑う。
幼馴染みと言ってもバイトもたまたま被っただけで、中学からほとんど音信不通だったと、以前光邦さんから少し聞いた。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
39 / 985