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後戻り 4
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店内はほとんどお客さんがいなくなり、遠い話し声と、お店のBGMだけが流れていた。
「千さんはさ…」
普段のオレなら、絶対こんなめんどくさいことになんて触れない。
そう思いながらも、自然と口が開いた。
ゆっくり視線をあげたせんせーと、視線が交差する。
「本当に心から人を好きになったことある?」
我ながら、なんだこの質問。と、思う。
すぐにいつものようにふざけて笑ってもいいけど、それができない。
せんせーは、タバコの煙を吐き出し、どこか馬鹿にするような声で、感情なく笑った。
「ないな。したいとも思わない」
胸に突き刺すような痛みが走る。
この人の手は、あんなにも優しいのに。
オレにはゆーいちや、ゆみちゃんがいたけど、この人にはなにか救いがあったのだろうか。
視線を落とすと、腕には丁寧に巻かれた包帯がより一層、胸を締め付ける。
ああ。いやだ。こんな感情、しらない。
気づいてしまったら、後戻りできないきがして。
見ないふりをしていた。
けれど、
「ねぇ、月城千さん、オレは好きだよ。本当に。あなたのこと」
伝えたら、距離をおかれるとわかっていても、この人に好きだと伝えたい。
あなたは、愛される人なんだって。
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