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妬み 5
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オレと握手したあと、すがるように小さくせんせーの服を握る。
怖かったかな?
今まで保健室で鉢合わせしなかったことを見ると、不登校気味なのかもしれない。
「あ、オレ、教室戻るねー。塁くん何組?」
「さ、3組」
「オレ1組なのー。混合授業のとき、よろしくねー」
「う、うん。え、と。リ、リチェー」
人見知りの癖に懸命に答えてくれる健気さが可愛くて、クスッと笑いがこぼれてしまう。
「リチェール・アンジェリー。ルリって呼んでねー」
「ルリ、君。いいひと……」
そんなストレートな言葉をかけられ、また吹き出してしまう。
「あはは!そう思う塁くんがいい人なんだよー」
「…僕、いいひと、ちがう」
震える声で言う塁くんに、なにか不味いこといってしまったのかと、すこし、焦る。
「いいひとだよー。少なくとも、隣のやくざよりもよっぽどー」
「俺のことか?ほー言うようになったじゃねぇか」
「いひゃいー。暴力きょうひー」
せんせーが意地悪く笑い、頬を摘まむ。
ようやく、塁くんがクスクス笑ってくれた。
「なか、いいんだね」
「まぁねー。将来はせんせーはオレのお嫁さんかなー」
「俺のウエディング姿とか軽く吐けるレベルで気持ち悪いって言ってただろ」
「うん、今改めて想像してもかなり辛いものがあるねー。せんせー、二度とウエディングドレス着たいなんていっちゃダメだよー」
「俺は一言も言ってねーっつの」
今度は両頬を摘ままれる。そんなやり取りに塁くんが寂しそうに顔を伏せる。
「いいなぁ。ぼく、仲のいい人、いない」
きゅっと、胸を締め付けられる。
「そんな寂しいこと、言わないでよー。オレともう友達だよー?」
「ともだち……?」
「うん、友達ー。あ、そうだ。今日、お昼一緒に食べない?オレのグループみんないいひとだよー」
「や。こわい…」
ああ、いきなりは図々しかったかな。
「じゃあ、オレと二人でお昼食べよーよ。ここで」
「ここで……?」
「うん。それなら、怖くない?」
「うん……先生、いいの?」
不安そうに塁くんがせんせーの服を握ると、せんせーは「好きにしろ」と、笑っていた。
今日は体調もよくないし、早退しようと思っていたけど、塁くんと友達になれたしまぁいいやと、と思えた。
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