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京都にて / 鴨川
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「1番・・・はじっこだな。」
飛行機に乗る場所は千歳空港の一番端でした。
「そりゃLCCだしね。たぶん外歩かされるよ。」
理さんの言葉に僕とミネさんは「へ?」となった。飯塚さんは当たり前だろ?な顔です。そりゃあ僕たち飛行機初心者ですからね!それはイコール空港初心者でもあります。
「外って?」
「飛行機が止まっている下まで自力でいくってこと。「1B」ってことはそうだよ。前は3Bだったような気がしたけど。あれ?羽田の30番台でBがついた搭乗口の間違いかな。でもとにかく通路からすんなり飛行機に乗れないのは間違いない。」
そしてそのお言葉どおり・・・通路を歩き、寒い外を歩き階段で飛行機へ。事前の座席指定が有料なので指定しなかったから、僕とミネさんはバラバラの席でした。
修学旅行の時機内サービスででたコンソメスープが美味しかった記憶があったんです。それで今回も密かに楽しみしていたら、機内サービスはオール有料でした!カップ麺が400円!
約二時間のフライト。座席が狭い・・・。前の座席に膝が当たる。僕でさえこんなだったらトアさん絶対窮屈ですよね。安いのにはワケがある…今回勉強になりました!
関空に到着してみるとやはり外を歩けと客室乗務員さんが仰います。
「大変風が強く、荷物や帽子が飛んでしまいます。飛ばされてしまった場合は拾いに行かず、近くの係員にお申し付けください。」
そのお言葉どおりビューーーという海風の中をヨロヨロ歩いて建物に到着。
飛行機の旅ってやや疲れますね。快適な空の旅をするにはそれなりのお値段の航空会社を選びましょうってことですね。そうなると計画的に日程を決めて早割のチケットを買う必要があります。SABURO旅行をはじめ、これからは日程をきちんときめなくては!
「OOOは計画的に」・・・ええ、何事も。
その後バスに乗ってホテルのある四条烏丸へ。約2時間。僕はイマイチ関西の位置関係がわかっていなくて、意外と京都が遠くて驚きました。
「なんだかな~~移動で一日潰れたな。」
「本当ですね。やっぱり関西は遠いんですよ。」
「どっか散歩するか?どっちみち晩飯も食べなくちゃだし、小腹が減った。」
ホテルのフロントでもらったバスの周遊マップと観光ガイドをみると、祇園は歩ける距離です。そのあいだに四条河原町があってお店が沢山ありそう。なんとなくブラブラ歩いてみることにしました。
「なんだかすごい人ですね。」
「想像以上かも。やっぱりこっちはあったかいな。」
気温がプラスっていうだけでホンワリしている気分になります。それに本当に寒くない。京都って暑くて寒いというイメージがあったけど、北海道より寒い場所はないってことでしょうね。
沢山の外国の方が声高に話しながら歩いています。マップやスマホを片手に重そうな買い物袋を持っている。そして和装の人が沢山いてびっくり。京都は普通に着物を着る習慣があるのでしょうか。
・・・ん?あれ?
「ミネさん、着物女子ですが。」
「ああ、日本人の子たちじゃないな。」
「やっぱり、なんか違いますもんね。」
「着物なのに外股で歩かれるとゲンナリする。」
僕は噴出してしまいました。ああ・・・何か違うというのは立ち振る舞いかもしれません。日本人は着物を着たらおしとやかに動きが変わったりしませんか?それがないからですね。あと真っ赤な口紅はどうかと思いました。でも皆さん楽しそうです。いつもの自分と違う格好をしたら楽しいでしょうし、思い出になるはず。
そして祇園。もうこうなると日本じゃないですね!っというぐらいの人口密度と外国度。テレビで見る、舞妓さんが歩いているなんて風情はゼロです。ずらっと軒を並べた沢山のお店とそこに吸い込まれていく人達。なんとなく左側通行の約束ごとがありますよね?札幌のチカホとかそういう歩き方で人とぶつかることはないのに、なんかもう無秩序な通り事情。キョロキョロしてたら人とぶつかる事必至です。
「抹茶アイスの店すごい行列だな。」
「並びたくありません。」
「ハルがいいなら通り過ぎよう。」
「なんかもうすこし落ち着ける場所がないのかな。」
人を避けつつ歩く僕たち。のんびりお散歩には向いていない通りでした!でもこれはこれで楽しい。いつもと違う場所、いつもと違う雰囲気。旅に出たっていう実感。
「あ、橋ですよ。」
「おおお~ここテレビや写真でみたことある。」
「これ鴨川ですよね!」
橋の上も大混雑。川を背景に写真を撮影する着物女子たちが鈴なりになっています。カメラアングルに入り込んではいけないと通行人が避けるように歩いている。
「当たり前ですけど豊平川と全然違いますね。」
「穏やかだな。豊平川は場所によっちゃゴーゴーしてるもんな。」
川の縁に座っている人達がポツポツしている。だいたいがカップルや熟年夫婦の皆さんたちだ。
ここに座ったら変に思われてしまうだろうか。
「ハル。」
「あ、はい。」
「下に降りよう。ぼーっと座るのもいいじゃない?」
ミネさん、お見通しですか?
コクリと頷いた僕にミネさんはいつもように優しい笑顔をくれた。なんだか・・・それがぐっと僕の中にささって下を向く。僕たちは川を眺めながら一緒に腰を下ろした。
夕方の鴨川。夕日が落ちる前だから少しだけ日が陰った光が柔らかく川面を照らしていた。ポツポツすわっている人達を見ると、何かを話して笑い合ったり、遠くを指さして何かを見たり。それぞれがいつもと違う風景を楽しんでいるように見える。上をみれば橋には相変わらず沢山の人が歩いていた。橋の上から川をみている人達もいる。
少し離れたほうがいいだろうか。
「ここ・・・京都なんだな。」
ミネさんがそんなことを言う。
「ですね。移動ばっかりでしたし。そして祇園がこんなに多国籍だとは想像していませんでした。」
「ホント、それは驚きだったわ。狸小路もすさまじいけど、その比じゃないね、数がすごい。」
「狸小路のドラックストア状態ですもんね。」
「あははは、ほんとだな。」
北海道の3月くらいの気温だろうか。陽がおちたらさすがに肌寒くなるかもしれないけれど、全然寒くないし川のそばだというのに快適だ。北海道の人達より春を先取りしたような、そんな気分。
「なんだかな~。」
なんだかな?ってなんですか?
「来ようって決めたら意外と来られるもんなんだな。」
「そうですね、いつかって思っていたからこんなに早くなるなんてビックリです。」
「それで俺気がついちゃった。」
ミネさんの方を見たら、やっぱり優しい笑顔だった。
「一緒に旅行は行けない。泊りでどこかにいったりもできない。そう言われて店あるから仕方ないだろうってずっと言ってきたわけじゃん。でもそれって俺が行きたいって思っていなかったってこと。」
「え・・・ミネさん。」
「そうなんだよ。俺はハルと来たかった、そうしたら「どうしたら行けるようになるか。」って考えるだろ?店があるから仕方がないなんて全然思わなかった。」
「ミネさん・・・。」
ミネさんが僕の手をギュウと握ったから慌てて引っこめようとしたけど、強い力で遮られる。
「人に見られますって!」
「いいじゃん、別に。」
「よくないですって!」
「ハル?」
「え・・・はい。」
「ハルは皆と違うという思いで生きてきた。俺は違うとか違わないとか考えたこともなかった。散々悩んだりジタバタして自分の望みが何かって事を理解してハルと一緒にいる。他の人が俺達を見て変だと思うなら思わせておけばいい。
ハルとだからこうやって出かけることができた。
ハルとの約束だから果たそうとしてここに来ている。
俺はそれがとっても嬉しいよ。誰が何と言おうとね。俺は嬉しいの、わかる?」
ミネさんはきっと僕が何を考えたのかわかったんだ。北海道じゃない、まったく別の土地にきて綺麗な景色を見て・・・ミネさんと一緒に見ている現実がとっても嬉しくて、手を・・・繋ぎたくなった。
全部、全部わかってくれている。
「ミネさんは・・・優しいです。」
「そうかな?俺としてはハルには正直でいたいってだけなんだけど。」
ほら、やっぱり優しい。
「おしりがしゃっこくなって、寒くなるまでもう少しここに居ようか。」
「・・・はい。」
ミネさんは温かくて優しい。つながった手から伝わってくる体温がミネさんの気持ちのようで、僕は嬉しかった。
正直か・・・。
相手に優しくしようなんて気負わず、正直でいる。
自分を偽らず、ミネさんには正直に接しよう。
「好きな人と旅行がしたいって気持ちがあまりわからなかったのですが、いいものですね。」
「・・・ん、だなあ。なんかいつもと同じなようで全然違う。同じものを見て感じるのは悪くない。」
「ええ、本当です。ミネさん?」
「ん?」
「僕、ミネさんにも自分にも正直でいようって決めました。」
「そっか、俺達正直カップルだな。」
二人でふふふと笑い合う。
僕たちを見て変だと思うなら思えばいい。今の僕は誰よりも幸せだって思える。それが大事なんだ。
ミネさんのおかげでまた一つ「大事なこと」に気づくことのできた・・・僕です。
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