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feb.13.2017 SABUROのバレンタインは一日早いのです/ミネとハル 3
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「おおお、いいじゃないの。見た目は100点!」
「問題は味です。」
心配そうな顔のハルがガトーショコラにナイフを入れた。
「1/16くらいでいいよ。朝から甘いものは胸やけのもとだ。」
「ですね。いつもよりコーヒーは濃いめにしました。」
ワシャワシャワシャ
「ミネさん!ナイフ持っているときはやめてください!」
「だってもう、その細かい心配り。嬉しくなるとワシャワシャしたくなるのです!」
ハルは「ハイハイ。わかりました。」みたいな顔でガトーショコラを切り分けた。
さて味はどうかな。
フォークをいれるといい感じの抵抗感。ちゃんとしっとりしている。フォークいれたとたんにボロッボロに崩れるのは俺の好みじゃないのよね。
パクリと一口。味と食感を確かめながらゆっくり噛みしめた。
「うん、美味しい。合格点!」
「ほんとですか?やった!」
心配そうだったハルの表情がパアっと輝く。ガトーショコラの一口と、ハルの顔だけで最高のバレンタインだって気持ちになる。またハルに教わった俺だね、何かを贈るって値段じゃないよ~気持ちだよってこと。
いつもより濃いコーヒーがガトーショコラとベストマッチ。
俺はテーブルの下から小さな箱を取り出した。ハルがコーヒーをセットしている間に、部屋から移動させた包み。
「ミネさん、これは?」
「どうぞ、開けてみて?」
包装も何もしていない黒い箱。パカっと蓋をあければ、赤いモシャモシャ(よくあるでしょ、ラッピングコーナーに売っている)とともに収まっているのはチョコチップクッキー。
「ミネさん・・・これ、チョコチップクッキー。」
「そうだよ。ハルが好きだって言うから。」
旅行から戻ってからそんな話になった。小さい頃好きだったお菓子について。俺はルマンドなんだよね。何故かというと俊己おじさんが好きだったらしく仏壇によく供えられていた。だから俺のオヤツ頻度はルマンドがダントツの一位。
ハルはミスターイトウのチョコチップクッキー。なんでもミスターイトウのが一番美味しいらしく、無性に食べたくなるんです!と熱く語っていた。
チョコチップならバレンタインにぴったりじゃないか!ということで作ったけど、店で焼いたのでハルは気が付かなかったと思われる。
ハルは大事そうに一枚持ちあげて俺の顔を見る。いいのに、お断りなしでパクっと食べていいんだよ。
「どうぞ、お召し上がりください。」
「・・・いただきます。」
ハルの一口はサクっという音がした。どうだね、このサクサク感、お気に召しました?
「・・・おいし。」
「そか、よかった。」
「すごいサクサクです!あと・・・なんかスパイス?ですか?」
「生地に少しココアを練り込んで、ナツメグを微量。バターの分量は多め。クッキーがサクサクで軽い仕上がりにするためにはバターをケチらないことなのよ。クロワッサンだってあれはバターを空気のように食べるがコンセプトだからバターたっぷりでサクサク。クッキーも同じ。」
「ミスターイトウより断然美味しいです!これ僕の為に作ってくれたんですよね。」
「そうだよ、他に誰がいるの。」
ハルはもう一口クッキーを食べ、とびきりのニコニコ顔になった。
「高級チョコレートって食べたら美味しいだろうけど、僕はこういうほうがいいな。だって僕の為なんですよ?そして僕だけが食べられる。それがこんなに嬉しいなんて知らなかった。なんかいつもより嬉しいから我儘言っちゃおうかな?」
「俺のできる範囲でよろしくおねがいします。」
ハルはコテンと俺の肩に頭を預けた。そしてキュウと手を握る。
「ミネさんのプリプリ海老チリが食べたいです。」
「それで我儘のつもり?」
「えへへ。」
ワッシャクチャ、ワシャ、ワシャ!!!
「じゃあ、掃除と洗濯をちゃっちゃとして買い物に行こう。特大の海老で作っちゃる。」
「やった!じゃあ僕もなにか作ります。」
「そう?じゃあ、回鍋肉。」
「・・・え、作ったことありません。」
「ハルの初回鍋肉、俺にくれる?」
「・・・なんかイヤらしいですよ・・・ミネさん。」
俺はアハハハと笑いながらハルをギュウと抱きしめた。きっと一生懸命俺の為に回鍋肉を作るはず。買い物の時から真剣に食材を選んでね。
俺はそれを眺めて思うんだ。
幸せだな・・・って。
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