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mar.1.2017 春のプランができましたよ!
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「なんかこう、少し風が柔らかくなった気がしない?」
夜が明けるのは確実に早くなっているし、日の入りも随分遅くなってきた。16:00で真っ暗だったのに、16:00はまだ明るくてちゃんと夕方だ。道路の雪も大分とけたし、路面が渇いている。そうはいっても道路脇の雪山は消えていないし、歩道はいまだにザクザクでツルツルだ。
「そういえばニュースで桜の開花予報がでていたな。」
「だろだろ?札幌はいつ頃?」
衛はう~んと考えて「GWぐらいだったかな。」と言った。札幌がGWってことは実家の町は10日前後ってところかな。
「去年花が散っていたのが残念だった。」
「充分綺麗だったぞ。あれで満開だったらすごいだろうな。でも花びらが雪みたいに降っていて、道路がピンク色になっている景色も捨てがたい。」
まだ黄緑色の若い草と白とピンクの桜の花びら。春が来たと実感できる色のコントラストは心が浮き立つ。ずっと長い間暗くて白い世界だったのに、一気にすべてが開きだす。花も葉も草も。
その景色を思い浮かべるだけで、ワクワクしてくる。
北国は1年の半分が冬だから、春を心待ちにして3月から指折り数えて待つんだ。桜を早くみたいな、春がこないかなって。ついでに言うと桜の下でジンギスカンを食べたいけどね。
あ、今年は天ぷらかまぼこをかじるって決めたんだった。
衛はスマホでカレンダーのチェックをしている。そうだった何事も計画が大事って身にしみたので、SABURO軍団のお楽しみは早めに予定を立てたいよね。
「7・8日か、14・15日だな、日月の日付。」
「なんか微妙だな・・・。7・8じゃ少し早い?でも14・15じゃまた散ってるかもっていう感触。せっかくだから満開を見てほしいよ、町民として。今は札幌市民だけどさ。」
「よし、善は急げだ。」
衛はノートパソコンを立ち上げさくさく検索をし始めた。
画面は宿泊予約のサイト。善は急げ?急ぎすぎじゃないの?
「それってトアの役目じゃないのかな。」
「今日予約するわけじゃない。あくまでも情報収集だ。」
「そっか、去年登別行けなかったし、皆で行くのもいいよね。」
衛はマウスをカチカチさせながら情報収集を始めた。見ればまだ先の日程だし、GW以降だからハイシーズンではない。けっこうリーズナブルで泊まれるみたいだ。
「客室露天風呂付を探すってこと?」
「もうそれはそれぞれで解決してくれってことでいいんじゃないか?」
「それぞれ?」
「だってれっきとしたカップルだろ?坂口さんを誘えば3カップルじゃないか。客室露天がいいなら高い部屋を押さえればいいし、そうじゃなければ各々が解決策を探せばいい。」
「んで?」
「何?」
「衛はまだ俺の裸を見せたくないとかいうわけ?色々な風呂があるから大浴場に行きたいよ、俺。サウナだって入りたいしさ~。」
ミネが一時期サウナに凝っていたじゃないか、と言いそうになって俺はゴクンと飲み込んだ。温泉問題においてミネの名前は禁句だ!
「・・・それはとりあえず置いておく。」
置いておくのですか・・・そうですか。
「トアが行ったの洞爺だったよね。じゃあ登別のほうがいいかな。」
「おお!」
「おお?トアのしっぽり温泉に対しての「おお!」?」
「なんと4/28から洞爺湖は花火大会が毎日開催されているぞ。」
「花火?」
「湖面から打ち上げるって、綺麗だろうな。」
山の上にある洞爺湖はカルデラ湖。中心に中島がポカンと浮かんでいる。湖の縁に温泉宿が立ち並んでいるけど夜は真っ暗だ。空なのか山なのか湖面なのか境目がはっきりしないくらいの黒い景色の中にあがる花火は綺麗だろう。
「これみてみろよ。」
衛が指さしたのは光り輝く花火の画像だった。画像検索したらしく沢山の画像が光っている。
「うわ・・・綺麗だな。その船なに?」
「あ、船があるな。」
カチカチパチパチ←衛が検索中
「花火あげているときに、船から見ることもできるらしい。」
「ええ!まじで?それすっごく綺麗じゃない?おまけに迫力満点だよ!うわ、なんか興奮してきた!」
建物の中よりずっと近くてドーンっていう音もダイナミックなはず。そして山にはね返ったドーンが聞こえてくる。花火は湖面に映りこんでいて、とても大きく見えた。これ生で見たい!絶対見たい!
「結構色々プランがあるな。遊覧船付のプランもあるし、大人数ならバイキングでも楽しそうじゃないか。飲み放題プランもあるし。ワインは期待できないが。」
「そんなのセイコーマートで買えばいいじゃん。温泉町には絶対ある。」
「去年はオーベルジュだったから、気軽な温泉もいいな。でも花火の画像を見てしまったら洞爺に一票。村崎と北川も花火に食いつくはずだ。」
「それを言ったらトアだって坂口さんとロマンチック花火鑑賞どお?って言ったらコクコク頷くと思うよ。」
「決まりだな。」
衛はニヤリ、嬉しそうな表情がプラスされたニヤリは・・・これまたなかなか威力がある。
そのあと何件かクリックしたあとパソコンを閉じた。俺はポヤ~ンと花火の想像に忙しくて衛が隣にストンと座った時も脳内一人旅をしていた。
「理?」
「ん?なに。」
「ランチをしてからになるから、スムーズにいって温泉に着くのは18:00頃になるだろう?」
「少し遅れる場合も考えなくちゃ。」
「夕食の時間は決まっているから、チェックインしたらすぐバイキングだ。
そして花火は21:00少し前に始まる。」
「ちょうどいいくらいの時間だね。飲み放題がタイムアップしたころに花火か。素晴らしい。」
「さっきチェックしたホテルは上の階に宿泊者専用のこじんまりした風呂がある。」
「へえ、そうなんだ。」
「その日はそこに入って、次の日早起きして朝風呂は大浴場に行く。これが俺の妥協点。」
「え?いいの?」
「・・・いいことにする。理が気持ちいい~プハ~と言っている姿を見るほうがいいかなと思い直した。去年の俺は少し・・目くじら立てすぎたかもしれない。」
「お、余裕がでてきたね、衛。」
「ただ・・・隠すところは隠してくれ。」
ブハ!
吹き出して笑い転げている俺に衛の腕が伸びてきてソファに押し付けられる。
「約束してくれ、頼むから。」
「わかったよ、しょうがないな。じゃあ俺からも一つ提案。」
「なに?」
「翌日大浴場に入れないのは嫌だから、お互いにキスマークは禁止。絶対つけない事。約束できる?」
衛が再びニヤリ。しかし今度のは少し・・・危ないニヤリです。俺の心臓をバクバクさせるのにニヤリしかいらないなんて、衛は狡い。
「約束するよ。でもそれはまだ先の話だ。」
衛は俺のパーカーをギュウと引っ張った。肩に近い場所に唇が触れる。そのあと強く吸われて・・・目で確かめる必要もない、ばっちりキスマークを付けられた。
「・・・ちょっと何してんだよ。」
「つけたくなったから・・・。」
頬を包まれて優しいキスをされる。心臓はバクバクで足はふにゃふにゃな俺。
「調べものは終わったから、そろそろ寝よう。」
「あ・・あ、そうしよう。」
「ベッドの中で反対側にもつけることにしようか。」
衛はニヤリ顔をして俺の腕をひっぱって体を起こす。立ち上がって再び腕を引っ張られて立つことになった俺は、しっかり衛に抱きしめられた。
「楽しみだな。」
それが花火なのか・・・
温泉なのか・・・
これからのことなのか・・・
聞いてもよかったけど聞くのはやめた。たぶん全部「楽しみ」なんだろうから。
まずは直近の「たのしみ」を二人で探求することにしようか。
な、衛。
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