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mar.6.2017 頑張るエネルギー
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「今年の温泉とお花見楽しみですね。」
「だあな。天ぷらかまぼこ絶対食べてやる。」
理さんの実家からさらに40分以上車で走った場所にある、かまぼこ屋さんの商品。
一枚60円?65円?お手頃価格なのにすこぶる美味しいらしい。理さんのお父さんの大好物で一度に50枚~60枚買って冷凍しておくんですって。すごい量ですよね。朝に予約をして数を押さえるあたり、相当な常連さんっぽいです。
去年はナポリタンを食べましたが、今年は車庫の中でジンギスカンをすることになりました。車2台が入る車庫はスペース充分だし、天気が悪かったり肌寒くても問題なし。バーベキューではなく、やはりここ北海道ならジンギスカンです。お店で食べるジンギスカンも美味しいですが、やはり外で気の合う人達とわいわい肉をつつくのは別の美味しさと楽しさがありますからね。
「綾子ちゃん大きくなってますよね。」
「そうだろうな。もう歩いてるかもしれない。」
「ですよね~すごいな、子供の成長。」
温泉は皆で検討して泊るホテルを決めました。部屋は各々が予約することになったので、僕達はさっきHPと睨めっこしながら部屋を決めたところです。客室露天風呂は結構なお値段なのでやめることにしました。去年はミネさんとお風呂なんて絶対無理!だったけれど、もう大丈夫
えへへ
ミネさん以外の裸んぼうを見たって無反応だろうし
えへへ
大浴場満喫しちゃいます。もちろんお部屋は和室!畳ベッドではなく本物の畳の上にお布団なんて久しぶり。理さんたちはツインにしたみたいですね。和室は布団を敷きにくる人がいるから落ち着かないとか何とか・・・普通ごはん食べている間にチョチョッと敷いてくれますよね?
覗かれてまずい状況に対応するためでしょうか?
でも思いませんか?ベッドってくっつけても絶対間があくし、どんどん広がりますよね?二つのベッドにそれぞれ寝るのでしょうか。
そんなわけないでしょう?僕なら別々は嫌です!
えへへ
トアさんは坂口さんのお休み調整中って言ってたかな。日曜日勤務を早退ってことになるので、サービス業は早い時期から根回しが必須ですから。
密かに僕は坂口さんと仲良くなりたいと企んでおります。憧れがあります「お姉さん」的な存在に。男二人兄弟なので、妹かお姉ちゃんが欲しかった。どっちか選べると言われたらお姉ちゃんかなって。
少し歳の離れたお姉さん・・・かなりいい響きです。
それと観察をしてモンキー、キャット、ドッグの分類をしなくてはなりません。どのタイプなのかな?
色々楽しみですよ、今年のお花見は。
掃除と洗濯も終わったし、常備菜作りもすみました。これから海外ドラマ視聴タイムです。ミネさんが何話か見逃してから見なくなった「パーソン・オブ・インタレスト」が最近ハマっているドラマです。
シーズン全話がイッキ放映になったので録画しました。本編はCM一切なしだし、続けて見られるのがいいです。毎週1話ずつもいいけれど、ドドドド!っとストーリーが展開していくので連続視聴はドキドキします。困るのが止め時。「どうする?もう一話だけいっとく?」というミネさんを止めるのが僕の役目なのですが、3回に1回は「ですね、でも一話だけですよ?」と言ってしまう弱い僕。
それくらい面白いってことです。ということで「ブラックリスト」の最新シーズンは録画だけして、これもイッキ見をすることになりました。
ブーブーブー
テーブルの上に置いてあるミネさんのスマホに着信。画面を見て「んーーーー。」と言ったあと手にとりました。でることにしたようです。
「はいはい、どうしたの。久しぶりだね。」
僕は口パクで「ビール」をミネさんに向かってサインを送りました。ミネさんはフニャっと笑って頷いてくれた。ソファから立ち上がって冷蔵庫に向かう。
背中からミネさんの相槌が聞こえてきます。
「あ~だから。俺のところには来てないから日程知らなかったし。でもあれだろ?土日だったんだろ?どっちにしても行けなかったし。」
「ん~ああ、まあね。祝電?そんなの貰っても迷惑だろうし、こっちに言ってこないってことはそういうことだと思うけどね。なに、お前あれか?報告して俺の反応聞いてって頼まれた?」
なんだかこれは、あまり聞いていて気持ちのいい話ではなさそうです。祝電ということはおめでたい話ってことで、これは結婚式ですよね。僕にはまるで昨日事のように思い出されるミネさんの朝帰り。
あの人結婚するってミネさんに言ったし、タイミングとしてもきっとそうです。おまけにご本人さんからの電話ではない・・・元カノさんのお友達ですかね。冷蔵庫からビールを取り出し、とりあえずリビングに戻ってみた僕。なんだか居心地が悪いし、ここにいたらダメな気がしてきました。
「あははは、自惚れるな!って?まあ、そうだな。でも電話してくる意味がわかんないし。」
僕もわからないです、知りたくもないですが。
ビールの缶をテーブルに置いて、自分の部屋に行こうとしたらミネさんが僕のシャツを引っ張った。振り向くとソファの座面を指さしている。ここに居ろって事?
ミネさんは僕の手をとってギュウと握ってひっぱったので、僕はあっけなくソファにポスンと座ることになった。でもミネさんの手は離れず、僕の左手をしっかり握ったまま。
「何を聞いたかしらないけど、店と心中とかね、勝手に思えばいいんじゃないのって話。俺は滅茶滅茶充実しているし、大事な仲間ができた。毎日が楽しいし、働いてワクワクしているよ。
それに大切な人ができた。」
僕はびっくりしてミネさんの顔をみると、悪戯っぽくウィンクされた。顔が赤くなったのが自分でわかる。
「お付き合いしますって、ご両親にも逢ったしね。」
電話の向こうから言葉としては聞き取れない声が漏れている。
「だから何も問題なし。最後にあった時けっこう言いたい事言われたけど、もういいのよ。俺は今までにないほどいい時間を過ごせている。大事な仲間と大切な人とね。だから幸せな結婚生活を送ってください、おめでとうぐらい言っておいてくれよ。もう会う事もないだろうし。
あ~でも客なら大歓迎だから、旦那と来いってついでに言ってくれるか?
なんの意図があって電話してきたのか、俺にはさっぱりわからないけど。今日は貴重な休みなわけ、んで今熱烈デート中だから、もうこれ以上時間はとれないから。次は予約いれる電話にしてくれよ、じゃあね。」
画面をタップすると「プウン」と音がして通話が切れた。そのままテーブルにスマホを置くとミネさんは繋がった手をさらにギュウと握る。
「お友達・・ですか。」
「友達っていうか、奈見の親友だな。色々聞いていたんじゃないのかな、そんな口ぶりだったよ。いい結婚式だったわよって報告の電話だけど、それ俺が聞きたいことだと思ったのかな?全然わからん。」
「・・・親友としてはミネさんの反応を試したかったのかな。あとは・・・逃がした魚はでかかったわよ?みたいな事ですかね。」
ミネさんはソファにクタンと沈んだ。そしてフフフと笑う。
「逃がしたってね、逃げたのは向こうです。フリーの時はフリーダムっていう生活してきたからタイミングが合っただけで、別に未練があったわけでも何でもないし。向こうもそうだろうしね。」
ミネさん・・・わかっていませんね。「向こう」には未練があったんです。
「お互い幸せってことでいいじゃないか。奈見に言うかはしらないけど。
あ~ハル、一応言っておく。フリーの時はフリーダム派だけど、そうじゃない時は余所見をしない男なの、俺。だから元カノさんたちには「恋人ができましたので、遊びに来ても時間がとれないよ。お客さんとしては大歓迎です。」ってメールしておいたから。」
「番号消去・・・していないのですね。」
「それは未登録の番号でうっかり出ちゃったら面倒だろう?かけてきた相手を把握してスルーする。んん・・・でもハルが嫌なら消そうか。だな、消しちゃおう!」
ミネさんはテーブルの上のスマホを手にとると、僕に差し出した。ええ・・と
「ハルが消してくれる?それに恋人できましたメールを送ったのに電話がかかってくるかもって、随分な自惚れさんじゃないか~俺。恥ずかしい!」
「・・・何件あるのですか・・・いや、聞きません。それにアドレスに残っていようが消そうがどっちでもいいです。人の携帯を見るのは僕の主義に反するので、消すならミネさんが自分で消してください。」
「そっか、わかった。」
ミネさんはそれからタップを何度か繰り返してアドレスを消した。そして動きが止まる-画面をじっと見ながら、さっきと全然違う表情と雰囲気。消したくない人…ですか?ミネさん。
「な~ハル。」
「なんですか?」
「こうやってハルの番号消す日がきちゃったりするのかな。ふとそんなことが浮かんできて・・・俺今すっげ~怖い。」
大切な存在を得たらすぐに生まれる「失ったら?」という不安。それはつねに幸せと表裏一体だから、時々幸せをおしのけて顔をだす。僕だって怖くなったりします。
「僕も怖くなりますよ。そのときはミネさんの笑った顔を思い出します。そうならないように、ミネさんの笑顔を見続けるために頑張ろうって思える。怖いって気持ちを得たからきっとずっとにいようって思える、僕はそう信じています。だからミネさん、怖くなったら僕の何かを思い出してください。」
ミネさんが僕を引っ張るから素直に胸の中に納まった。そうだよね、ここが僕の居場所。
「ハルはかわいいのに、格好いいな。サトルが言ってたよ。「俺を持ちあげる言葉をくれる。正明は天才だよ。」って。怖いから頑張れるか・・・だな。俺頑張るよ、ハルに愛想つかされないように。」
「ですよ、ミネさんがションボリしてたら僕もションボリ。ミネさんが笑ってくれたら僕も笑える。二人で笑っていたら、不安や怖さは出る幕なしです。」
「んん・・・だな。」
「二人一緒に沢山のことをしましょうね。ビールは冷たいのを持ってこなくっちゃ。それに僕はフィンチとルートがどうするのか気になってしょうがないんです。」
ミネさんに抱きしめられたまま、ワシャワシャ攻撃を受けた。それも相当なワシャワシャ・・・です。そしてミネさんは笑っていた。僕の大好きな楽しそうな笑顔。
「そうだな、ビールは俺がとってくるよ。テレビつけてくれる?」
「はい。」
急にグワっと気持ちが高ぶって、僕はミネさんにキスをした。
「5話は見ますから覚悟してくだいね。」
一瞬ミネさんの表情が泣きそうな時みたいにクシャっとなった。ふうう・・・と息を吐き出したあと、ニッコリ笑ってキスを返してくれる。そうですよ、僕達は一緒に沢山のことをするんです。もちろんキスだって。
「じゃあ、ドラマタイムに突入だな。」
ビールを取りに行ったミネさんの背中を見て僕は少し嬉しかった。
僕を失ったらって怖くなるって・・・
大事だって大切だって僕を想ってくれているんだって。
それは僕も同じです。
二人で一緒に沢山のこと、同じ想いを重ねていこう。
そうすれば二人の時間が続いていきます、そうですよね、ミネさん。
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