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may.3.2017 teal green
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ふわ~~~~
あああ・・・朝がきちゃったのね。朝ですね~
日の入りが早くなるので自然と目覚める時間が早くなる。さて今朝のハルの様子は?
「おはようございます。」
ハルに向き合うために身体を反転させたら、いきなりのご挨拶。もう起きてたの?
「おはようさん。起きちゃってたのね。」
「起きちゃってました。」
ワシャワシャしようと手をのばしたら、パシっと手首をホールドされた。俺の行動を読んでいたな?(読まれるほど毎朝恒例・・・とも言える)
こういときの力具合がやっぱり男子だよね。俺はハルを女の子の代わりにしているわけではないので、こういう力強いところを目にすると、おっ!って思っちゃう。かわいいくせに力持ちって格好よくない?
いいよね?
「ミネさん、おめでとうございます。」
あああ~~あああ~~~でした。今日は3日ね。「ごみの日」こと俺の誕生日でした。
ヒャッフ~29歳です。来年はなんと三十路にございます。いや~早いもんだね。
「おめでとう第一号さん、ありがとうございます。」
ハルがポスンと俺に背を向ける。ちょっと何?なんで?
モゾっと上半身がベッドから消える。ゴソゴソしたあと上半身が戻ってきて、にっこり振り向く。
「おめでとうございます。」
差し出されたのはブルーのリボンがかかった包み。プレゼントですよ!プレゼント!
「ベッドの下に隠してたの?」
「朝すぐ渡したかったので。」
「ハル~~!!」
抱きしめようとしたら腕をつっぱり俺の接近を阻止するハル。
「先に開けてください!」
う・・・む、仕方あるまい。
ベッドヘッドに枕を立てかけてよしかかる。二人並んでベッドに座りますの図。プレゼントを受け取って重さを確かめつつブルーのリボンを解いた。それほど重くないので食器の類じゃないようです。小物的な何かかな?両手にのっかる位の大きさだから調理器具ではないだろうしね。もちろん本であるはずもない。時計?俺が腕時計していないから可能性はある。仕事中はアクセサリー含め何も身に着けないから時計だったら完全休日利用だなあ。
包装紙をはがしてたたむとようやく箱に辿り着いた。こういう時はパカっといきますよ、パカっと。
「パカっ。」
箱をあけるとき思わず声がでちゃったよ。ハルはクスって笑ってくれた。
「綺麗な・・・色だな。」
「トアさんの誕生日の色、覚えてます?」
「赤だったっけか。」
「ミネさんの色は「ティールグリーン」でした。」
「ティールグリーン?」
「和名だと「鴨の羽色」らしいです。綺麗なグリーン。」
「ああ~なんとなく。それでこれ?」
「はい、ティールグリーンで検索してみつけました。」
「・・・ありがとう。」
箱からとりだした財布は二つ折りタイプ。ムラのあるティールグリーンとナチュラルタンのコンビになっている色味がちょっとない感じ。タンの部分のステッチはグリーン系の糸が使われていた。赤や青はあるけどタンと緑って新鮮だ。
「今使っているお財布、使いにくそうにしてますよね。」
「バレてたか。」
「はい。とくに小銭出す時いつもしかめっ面になります。」
小銭はポケット派だったけど、若造でもあるまいしちゃんと財布を買おうと用意した。コンパクトさを重視して買ったが、ポケットに突っ込んでいたら落としてしまう悲劇に見舞われた。だったらデカいの買えばいいんでしょ!大は小を兼ねるっていうしね!ということで長財布にしたのが失敗。使い勝手を考えなかったせいで、小銭入れのキャパが小さすぎた。財布があるのにポケット小銭スタイルに逆戻り。長財布をポケットに入れるのは危険なので書類や伝票を入れるトートに突っ込むわけ。んでこれが黒いトートに黒い財布で夜はすこぶる見にくい。黄色い合皮のポーチに店関係の経費を入れているけど、こっちばっかり目立っちゃって。あ~~もう!ってなる。ハルと買い物に行って会計するとき財布とポッケ両方から支払いをする俺の姿を見ていたのだろう。
チップしたマグカップと同じだな、ハル。ちゃんと俺のこと見てくれている。
「二つ折りタイプですが、小銭入れのチャックがL字なので、マチがけっこうありますよ。」
「おおお~本当だ。ポケットもいっぱいあるな。」
「カード関係は20枚入るそうです。」
「見た目コンパクト君なのにな。それにしっかり作ってあるね、この財布。」
ハルはちょっと得意げな顔をした。チョイスに自信ありってことね。
「これ手染で手縫いです。」
「それで少しまだらなんだね。へえ~手縫いか。」
俺の大好物、職人魂がぎっしり詰まった商品。商品だけど作品といってあげたいよね。
「使っていくうちにタンの色が深くなるといいな。」
「雰囲気かわりますね、きっと。」
「ハル、ありがとうな~~君のプレゼントの才能は素晴らしい。ちょっと感動しちゃったよ。」
照れ臭そうな顔をしているハルをギュウギュウ。今度は抵抗されなかった。
「ティールグリーンは「大地・情緒的・牧歌的」という意味があるそうです。澄んだ小川に憧れる牧歌的な人なんですって。」
「へえ・・・鴨の羽色だけに小川か。」
言われてみれば、サトルの実家へ向かう途中の景色やオーベルジュに泊ってから、自然の有難味が心に沁みるようになった。季節の移り変わりや植物の成長を確かめることも多くなったのは確かだから、そういう要素を持っていたのかもね。
「それを知って絶対この色の何かを探そうって決めたのです。」
「そっか~今日からティールグリーンは俺の好きな色に決定。誕生石を指輪にするのってこういう感覚なのかな。俺の色はティールグリーン。なんかいいな。」
「僕がもう一つ思い浮かべたのはスナフキン・・・です。」
「スナフキン?ムーミンの?あ~あの人緑だよね、全体的に。」
スナフキンファンに怒られそうなザックリとしたイメージですいません。
「緑っていうだけではなくって、いつも穏やかにムーミンに大事なこと言うじゃないですか。」
「だったか?」
「ですよ。それも釣りしながらギターも弾いて、おまけにムーミンに説教できちゃうんです。」
「同時進行?」
「時にはたき火もしてます。」
「焼き芋してたら尊敬しちゃうな。」
「もおおお~~ミネさん。」
「ゴメンごめん。」
「ミネさんは僕に大事なことをいつも言ってくれるし、教えてくれます。押し付けるわけではなく、僕がちゃんと考える余地をくれる。お箸もお茶碗もですが、誰かが誰かのために作った物に沢山出逢いたいと思えるようになりました。それを大事に使うって大切なことですよね。ブランドのお財布は誰が見ても値段がわかる品物です。でも値段ではなくて大事に使っている事が見えたり、手にしたときに作った人の姿が想像できる品物がいいなって。
こんな風に考えることができるようになったのもミネさんのおかげです。だからこれからも、ミネさんのプレゼントはそういう物を探していきたい。」
ハル・・・
「・・・そんな風に思ってくれるのか。」
「そんな風に思える僕にしてくれたのはミネさんです。」
「ハルは・・・ほんとにいいこだな。」
いつものようにギュウギュウワシャワシャはしない。この暖かい気持ちのままハルを優しく抱きしめる。どうしよう、ハルはこんなに素直だ。俺に向き合って考えてくれる、想ってくれる。
立ち止まっている暇はないよね、ハルを導いて歩き続けたい。そして一緒に成長していきたいんだ。ハルと並んで。
「ハル、ありがとうな。」
自分の周りに一つずつ増えていくハルからの贈り物。それは全部俺にとって特別になるだろう。
この財布も大事に何年も使い続けよう。今の気持ちを忘れずに・・・。
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