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may.8.2017 心配無用、お見通しです
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「空模様が怪しいですね。」
GWはいい天気が続いたのに。
僕達が出かける時まで踏ん張っていてほしかった。
「朝は雨だったみたいです。理さんが紗江さんに電話で聞いていましたね。」
晴れていたら洞爺湖はもっと深い青だったはず、あ、脇見運転はいけませんね。それよりも何よりも、何故ハルさんはこちらの車に乗ったのでしょう。そして・・・後部座席に二人で座っている位置取りも、ちょっと僕としては、なんと言いますか・・・です。
「ハルさんはこっちでよかったのですか?」
「あ~トアさん。坂口さんと二人でドライブしたいからって。」
「いえ・・あの、そういうことではありません。」
坂口さんのクスクス笑う声が聞こえて、ちょっと大人気なかったかなと反省。日曜のランチを終え、慌ただしく後片付けと掃除をして移動。夕方にチェックインして夕食バイキングに突入。あれこれ言いながら料理を選び、皆で囲むテーブルは楽しい時間だった。最初緊張気味だった坂口さんも徐々に打ち解けて場がさらに和んだ。理さんの的確な質問、ミネさんは僕たちの馴れ初めを聞くにいいだけ聞いた。僕の答えが惚気っぽかったら「うわ~トア、ノロケてるうう~」とヒャーヒャー言い皆が笑う。ハルさんは偵察にいったことを坂口さんに言う始末。飯塚さんですか?飯塚さんはどっしりです。「坂口さんの穏やかな雰囲気はトアにぴったりだと思う。」なんていうお言葉を頂戴しました。坂口さんは照れていました。ですよね、男前光線とともに発せられる言葉は威力がありますから。
そのあとは花火を見ました。僕と坂口さんは湖の傍にある遊歩道に立って空を見上げました。大きな音が周囲の山に木霊して、街中の花火とは全然違う趣。「ド~~~~ン」が重なっていく時間がとても素敵でした。輝く空から光が湖面に落ちてくる。そして湖面に光が映って地面から空が始まっているような錯覚は素晴らしい眺めでした。何度でもみたいですね、豊平川の花火大会とはまったく違う自然の中にある花火。
「ハル君、遊覧船からの花火はどうでした?」
「綺麗でしたよ!すごく近くて、上から降ってくるみたいでした。湖面に反射する光がさざ波でユラユラするんです。光が躍っているみたいで素敵でした。でも首が痛くなりましたね、真上をずっと見ていたので。」
「岸でも少し首が痛かったかな。でも温泉に入れば問題なし。」
「そうなので~す。」
ハル君と呼ぶ坂口さん、すっかり二人は仲良しさんです。ハルさんは弟君っぽいですし、かわいいですからね。女性も話しやすいでしょうし。ああ・・ええとお断りしておきますが、嫉妬をしているとかそういう事ではないのです。人と打ち解けられる才能が羨ましい・・・その能力にジェラシーです。
「上のお風呂、女性のほうも小さかったですか?」
「うん、こじんまりして朝風呂にぴったり。」
「僕も朝入ってきました。人がいなかったので独り占めです。」
「ミネさんと一緒じゃなく?」
「ああ・・・ええと、ミネさんはどっちのお風呂も制覇したかったみたいです。」
「朝と夜は男風呂と女風呂が入れ替えでしたよね。迷って結局上に行っちゃった。」
「湖側の露天。気になったんですよ。女性なら露天から花火が見られるってことですよね。」
「のぼせちゃうかも。」
「それもそうか。」
坂口さんは部屋割りのことを僕に聞きませんでした。聞かれたら「世帯ごとに部屋を押さえることになったので。」という苦しい返答しか思いついていなかったので、ホッとしました。先入観がなければ、ルームシェアが2組、そんな風に見えるのかもしれません。その辺りは微妙ですよね。当の本人たちが何も言っていないのに「実はね・・・」なんて僕がいうのは変です。かといって聞かれて誤魔化すのも、なんだか違うような気がします。だって理さんと飯塚さん、勿論ハルさんだって間違った関係ではありませんよね。皆さん相手を大切にして大事に想っている。僕が坂口さんに対して持っている気持ちと何ら変わりがありません。でもそれを言えない・・・という現実が歯痒い。僕が皆さんを認めていないわけではないのに、していることは同じなんですよね。認めていませんっていうのと。
曇り空と同じようにドロンとしてきました、僕の心が。
「あの・・・坂口さん。」
「ハル君、なに?」
「気付いていないのかもしれませんが・・・。」
「なにを?」
「ええと・・・僕とミネさん・・・が。」
ハルさん?僕の葛藤がテレパシーで伝わった?わけはないですが・・・。
「ハル君とミネさんはとっても仲がよくていいなって思ったかな。」
「それは・・・SABUROの皆は仲良しですし。」
「ハル君。」
「はい。」
「気を遣わせちゃってごめんね。今回、私とっても嬉しかったの。一緒にお花見と温泉行きましょうって皆さんが言ってくれたこと。最近こんなにドキドキしたかしら?って思うくらい緊張してたけど、皆さんが優しかったし、場を楽しく盛り上げてくれて・・・すごくいい仲間なんだなって感動しちゃったくらい。
そしてね、歩くのも座るのも場所が決まっているのねって。理さんと飯塚さん、ハル君とミネさん。絶対隣同士なの。」
「気が付かなかった・・・そうでした?」
「そうだよ~。トアさんはどこにポジショニングしてたのかって考えたらおかしくなっちゃった。」
言われてみれば・・・ですね。僕は皆さんの後ろが定位置です。6人掛けテーブルならハルさんの隣。向かい側に理さんと飯塚さん、常にモンキーバーナードはセット。
「それにミネさんはハル君に触りすぎ。」
「なっ!そんなことないですよ!」
「触ってるよ~頭ポンポンとグシャってするでしょ?私の店の店長はスタッフの髪をそんな風に触らないよ?」
「ああ・・・それはそうでしょうね。」
「髪くるくるもするよね。職業柄つい目に留まるというか。ハル君もミネさんもそれが当たり前なんだなってわかったの。自然でいいなって。」
「気持ち悪いとか・・・変とか思わないのですか?」
「ハル君を?」
坂口さんはアハハハと笑った。とっても明るい楽しそうな声。
「いやだ~なんで?私トアさんと出会って、誰かと一緒に過ごす時間の大事さがわかったの。今までも誰かと過ごす時間はあったけど、自分を取り繕ったり背伸びしたりしていたから・・・当たり前でいいっていう感覚がとっても気持ちがいい。ハル君もそうなんだなって。気持ち悪い?全然。それなら中年のおじさんが子供に興味を持つ方がよっぽど気持ち悪いよ。」
「坂口さん、すごい例えですね。」
「ええと私が言いたかったのは、男と女が当たり前で、それ以外は普通じゃないって言うのは違うよねってことなの。セクハラとか強要された関係だってそうよ?男女だから普通っていえる?いえないよね。ハル君とミネさんみたいに相手を想い合っていることこそが普通だと思う。」
「坂口さん・・・。」
「だからハル君、そんな顔しないで。私自身偏見がまったくないかと言えば違ったと思う。男同士、女同士なんて絶対無理って思っていた。でも皆でテーブルを囲んだ時にね、ああそういうことなんだ、想い合うのに性別は関係ないんだって素直に思えたの。トアさんに聞くことだってできたけど、トアさんを困らせるだけでしょ?ね、トアさん。」
「ああ・・・ですね。聞かれなくてホッとしていたのが本音です。」
「実はミネさんが言いだして。坂口さんに打ち明けたほうがいいだろうなって。たぶんトアは自分の口から言えないし、かといって黙っているのもイヤだって悩んでそうだからって。トアさん・・やっぱりそうでした?」
「そう・・・ですね。皆さんの関係を勝手に僕が言うのも違うし、かといって言えないって皆さんを否定しているように思えてしまって・・・悶々としておりました。」
やっぱり、ミネさんはミネさんです。理さんとは違う心配りがいつも優しい。ちょっとウルっとしそうになるくらい・・・優しい。
「ハルさん、それでこちらの車に?」
「そうです。変だなって思いましたよね。」
「変というより仲良しだな・・と。」
「やっぱり面白くなかったんだ!トアさん!」
「あわわわ、そんなことありません。」
「トアさん!前見て!高速ですよ!」
「大変だ!」
運転手は常に平常心をキープしなくては。飛ばし屋ばかりの北海道ですからね。
「じゃあ、理さんたちにも私から「わかっちゃいました」って言った方がいいのかな。」
「え?」
「は?」
ハルさんと僕がシンクロ。あの二人はミネさんみたいに触らないし、デレデレもない。どうして?何かしましたっけ、昨日。
「位置取りだけではなくって、昨日理さん女子のグループに話しかけられたじゃないですか。」
「ああ、そんなことありましたね。」
坂口さんの言う女子グループは3人。理さんと飯塚さんが料理を物色しに行ったときに話しかけたんだった。僕と坂口さんは向かい側でカレーにするべきか蕎麦にするか思案中でした(両方食べました、結局)
「一緒に食べませんか?」
やる気満々の女性の一声。理さんはニッコリしたあと平坦な声で言った。
「職場の仲間ときているから無理だね。」
僕にはわかります、これ以上踏み込んでくるなよ?という理さんの警告が。しかし理さんのニッコリ笑顔を頼みの綱にして諦めない女性。
「是非お仲間さんもご一緒に、大人数のほうが盛り上がりますよ。」
あああ・・・モンキーアラートを無視。
「充分盛り上がっているから他をあたってください。」
飯塚さん、極寒のオホーツクよりも冷たい低音ボイス。馬鹿丁寧な言葉遣いがさらに怖い!
理さんはまあまあという様に飯塚さんの腕を叩いて女性に向かい合った。しかも今回は無表情。うわ~飯塚さんと違う種類の怖さです。
「職場仲間と楽しみます。」
「・・・。」
そしてソロソロと女性たちはその場を離れた。そして何事もなかったように飯塚さんは「あっちにパンがあるな。」と理さんに言いました。いたって普通、いつもの飯塚さん。
「俺の好きそうなのいくつか持ってきてよ。」
当たり前のように言う理さん。ここで坂口さんが「プププ」って笑ったんですよね。どうかしましたか?って聞いても「思い出し笑いです。」っていうものですから。
もしやあのプププは思い出しではなかったということですか!
「理さんは冷静な対応だったけど、飯塚さん怖かった!そして切り替えの早さ。「俺の好きそうなのも持ってきて」って甘いお願いですよね。」
「坂口さん・・・そんなにわかりやすいものですか?」
「んん・・・どうかな。声をかけた女の子たち可愛かったでしょ。確かに皆で食事していてもそのあと時間はあるんだし。「今はダメだけど、花火一緒にみましょう。」って男の人なら言っちゃいそうな高レベルだったのに。あれは完全に追い払っていました。そうそう!追い払っていたの、シッシって。」
モンキーの攻撃・・・
セントバーナード吠える・・・
「坂口さんは全部お見通しかあ。」
「ハル君たちはかわいいカップルで、理さんたちはカッコいいカップルかな。」
「坂口さんとトアさんは穏やかカップルかな。」
「ええ~ハル君、なんだかそれ熟年層みたいじゃない?」
「違いますよ、優しくてゆったりの穏やかで~す。」
「ふふふ。」
僕の心配はよそに、坂口さんの中では消化されていたのですね。気を揉む必要がなくなって、肩の荷が下りました。
「坂口さんが理さんたちの事もわかったみたいですよってミネさんに僕が言います。きっと「鉄仮面、お前の行動でバレたらしいぜ。」なんて報告してくれると思います。坂口さんが直接理さんたちに話しにくいでしょうから。こういう事は僕やトアさんではなくミネさんが適任です。」
まさしく、その通りです、ハルさん。
「早く桜が見たいな。」
「向こうの空は明るいですよ。」
向かう先の遠い空は灰色の雲に切れ目が出来ていた。きっと風が雨雲を流してくれるはず。
あの綺麗な桜は知らないうちに心に溜まってしまった不必要なことを洗い落としてくれる。
昨日は花火、今日は桜。
花は美しく、儚くても癒しの力を持っている。
僕はモヤモヤが消えて、穏やかな気持ちになれました。きっと素直に桜と再会できます。
皆と、そして坂口さんと一緒に。
・・・・・・・・・・・・・・・・・
設定資料集が未完でして、辻褄が会わなかったらごめんなさい。トアは免許もっていたかどうかわからなくなりました!すいません!
持っていなかったら、この1年で取得したのです!(強引・・・・)
ハルは持っていない。そのうち取らせた方がいいだろうか・・・。
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