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june.20.2017 当て擦り
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「ハル、おはよう」
「おはようございます」
「今日は天気よさそうだな」
「ん……まぶし」
ボケボケのハルをギュウギュウ。ん~~休みの朝って感じ。体の力がクタリと抜けたハルはされるがままだ。いいね~素直で可愛いのは最強だ。ハルという生き物に俺は夢中です!
ハルがもぞっと動いて瞼をパチパチした。
「あ、今日は届く日です」
「何か頼んだっけ?」
「真空タッパーです、楽しみだな」
ハルが注文したのは真空状態にして食材を長持ちさせるというタッパー。テレビ通販番組をみて即決した。ナビゲーターとか言う商品を紹介する女性はだいたいが喧しい。滅茶滅茶しゃべりまくるので俺は苦手。よくあんなに言葉を継げるものだと感心はするが、煩いことに変わりはない。ハルに言わせれば「商品に集中すれば気になりませんよ」らしいが、俺は無理。
商品の大部分は女性向けのアパレルや化粧品だが、たまにキッチンウエアや家具、家電が登場する。ハルはそれを目当てにチャンネルを合わせて鑑賞。気に入ったらスマホで発注をかける。
「効果あるのかな」
「ないと商品になりませんよ。これで常備菜が傷む心配しなくてよくなりますよ。これから暑い季節が来るし。使い勝手がよかったらお店でも使えませんかね」
「店には真空機があるしな~」
家庭用ではなく業務用の真空機は便利な機械だ。固形だけではなく液体もパッキングできる。真空にして80℃のお湯で30分湯煎すると滅菌されて冷蔵庫で長持ちになる。冷凍すると硬くなる食材もこれならフレッシュの状態で保存が可能だ。
真空調理も簡単にできる。空気が抜ける時、液体は沸騰状態になるからコンポートが瞬時に作れちゃったりするのです。グラニュー糖と水で作ったシロップと皮をむかずに串切りにした林檎を袋に入れて真空に。林檎の皮の赤が淡くシロップに溶けて見た目も抜群。煮て作ったコンポートとは色も食感も違う。
「コンポートも作れるってナビゲーターが言ってましたよね。お店みたいに綺麗にできるのかな」
おお~ハル。同じことを考えているのね俺達。安定の仲良しカップル。
「どうだろうな。0.8気圧になるって言ってたから完全真空にはならないってことだ。熱を入れないとコンポートにはならんだろうし」
「付録のレシピが楽しみです」
調理だけではなく道具にも興味をもつハル。順調に成長していることが自分のことのように嬉しい。飯塚とサトルを羨ましがってた俺だけど、こういう会話はできないはず。小さいけど嬉しい優越感だったりする。
「ハルと料理の話ができて俺は幸せだな~」
「大げさですって」
「鉄仮面に勝てる数少ないところだし」
ハルはキョトンとした顔をしたから、またそれも可愛くてワシャワシャ、盛大にワシャワシャ。
「ぐちゃぐちゃですよ!もおお。僕にとってはミネさんが勝ちまくっていますよ。理さんには言えませんね、怒りそうです。負けず嫌いだし」
「サトルが怒るとシャレにならん。俺も怒らせたくない。だからあんまり飯塚ネタでからかえないのよね。そのくせ時々大胆に自分から惚気たりするだろ?うなじにチューとかさ」
「ですね。僕はもっとすごいの知っています」
「ええ?どんなのよ。教えてよ」
ハルの顔が徐々に赤くなる。おお!これは期待できるネタじゃない?
「……ええと、ミネさんが僕を放置していた時、理さんが話を聞いてくれたんですよね」
「放置じゃなくケジメミッションを遂行していただけなんだけどな~」
「その件はもういいです……今は問題ないし」
「問題ナシ。ケジメミッションが終わったその日から俺はすっかり虜ですから」
「もう!恥ずかしいこと言わないでくださいよ!横道どころか脱輪です、これじゃ」
「悪い悪い、んで?サトルがなんか言ったのか?」
「素朴な疑問だったんです。飯塚さんも理さんもずっと女性とお付き合いしていたから……あの、その、ええと」
「付き合ってたから?」
「どっちがどっちってどうやって決めたんですか?って聞きました」
おおお!それは考えたことがなかった。どっちがどっちでもいいし、どっちがどっちをしないカップルもいるらしいし。かなりプライベートな領域だから聞く気にもならなかった。
「ハル、そんなこと聞いたのか」
「ええ、荒んでいましたからね。ミネさんのせいで」
「あてこするね~」
ハルの腰に手を回してぐっと抱き寄せる。ベッドの中では身長差は関係ない。こうするとお互いの大事なところが密着しちゃうよね。スッポンポンだしね(そりゃあ定休日の前の晩はスッポンポンが決まりです。俺達仲良しだし)
「ちょ…ミネさん」
「あてこすってるの」
「エロオヤジ!」
「おいおいおい!30前の青年をエロオヤジ呼ばわりかよ~」
「横道、脱輪、今は崖下に転落くらい道を誤っています…って、あ……」
脳みそにダイレクトにくるよね~~この「あっ」っていうの、ムフフフ。ハルの耳をハムっ。
「それで?サトルの答えは?」
「……ミネ…さん」
「質問に答えないと、もっとあてこすっちゃうよ」
ハルは俺にキュってしがみつくから、苛めモードに拍車がかかりそうです。
「言います、言いますって。両方試してしっくりくるほうに決めたそうです」
「うわ~なんかサトルらしいな。俺はハルの導きで自然と……」
バチンと腕を叩かれた。照れちゃってるね、ハル。俺達の形は当たり前にそうなっているけど、逆バージョンも成立するってことだ。ハルはそれを望んだりしているのかな。
「ハル、一つ確認。もしかして逆もしたいって思ってんの?」
バチン二発目。違いますのバチンかな。やっぱりちゃんと言っておこう。
「ハル、俺はね女の人の代わりだなんて考えたことも思ったこともない。俺が向き合っているのはハルって人間に対してだ。ハルの代わりは女の人でも無理ってことだよ。男が突っ込まれるなんてプライドが許さないなんて聞いたことあるけど、それには賛成できません。俺のプライドは……そうだな、ハルは俺と一緒にいるから幸せなんだって自信を持って言える、そういうプライドを持ちたいね。ハルと幸せになるのに必要なら、どっちがどっちでもいいのよ、俺は。言いたいことわかる?」
「……わかります」
「女と男は考えも感情も違う。それは言い訳や逃げ道であり、相手を許したり妥協できるポイントだったりする。でもハルと俺は男同士だ。だからね細かいことも大事なことも言葉にして確認しないといけないって思う。俺の当たり前はハルの当たり前と違うことだって沢山あるだろ?二人仲良く毎日を過ごすために、言葉は大事なツールだ。だから俺は疑問があったら聞くし、ハルも聞けばいい。二人で正解を見つけていけばいいよ。それが俺達の答えだ。世間様と違ったっていいんだよ。俺達の答え、これが一番大事」
いきなり身体が仰向けに回転した。馬乗りになったハルが俺を見おろしていた。そこにある目は今までのテレテレモードとはまったく別物……ゾクゾクする。
「僕の中で気持ちよくなるミネさんを見るのが好き。僕が気持ちよくさせている、これが僕のプライドです!そして僕たちの答えです!」
可愛いくせに男前……熱くなってきた。
「ハル……おいで」
二人の答えこそが正解。
目の前に大事な存在がある。それを確かめないなんて男じゃない。
ハルの重さを抱きしめて確認する……答えの重さ、心地のいい……重み。
自信満々で言えるよ、俺はハルに夢中です!
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