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2015年2月 抱きしめる……抱かれる……そして抱く
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現在のお話しではなく、過去の衛と理のお話しです。
びらぶさんが不安定で不具合を繰り返しているため、別サイトに保険ではないですが作品を少しずつUPしています。「男前~」とシリーズものはエブリスタ。それ以外はフジョッシー。
エブリスタはこのサイトから1年遅れてスタートしているので、今はミネとハルの真っ只中。ミネがハルを放置している所ですw
そこでハルが理に「どっちがどっち」な質問をしたことで発覚したのが「両方試した」です。
びらぶで更新した際もツイッタでキャッキャな話題になったのですが、エブリスタでも同様。そんなに皆知りたいのか!!と私は少々驚いております。
エブリスタの読者さんからのリクエストは「朝チュンでもいいです。「しっくりくる」に行き着いた時の二人の心理や感じ方を読みたいです」というもの。
う~む……それで書いたのがこのエピソード。
エブリスタで先発すべきなのでしょうが、明日の更新は「ミネのケジメ」です。ここにモンキーバーナードを割り込ませるのはちょっとねww
年季の入ったびらぶ読者様に披露して感想をいただけたらなと。
そうは言っても……逃げたいときの三人称でぬる~とした仕上がりです。興味のある方は下へお進みくださ~い。
せい
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ゆっくり目が開いた。一番寒い季節特有の鈍い光が漂う部屋。見慣れた天井なのに、いつもと何かが違うと感じた武本はその理由がなんであるかボンヤリ考える。
朝が本格的になるにはまだ早い時間。布団から出ている鼻先が冷たく、抜け出すには意思の力を必要とする室温。それなのに……いつもより空気が柔らかい。
規則正しい吐息がすぐそばにある。一晩すごしたことなら何度かあった。具合が悪くなった武本を飯塚が抱きしめて眠った日。溜めこんだシャツと包丁を交換したあと泣き出した飯塚を武本が抱きしめて眠った日。
でも違う……武本の頭の中でぼんやりとしていた考えがトンと形になった。
隣に飯塚がいる。
同僚でもなく、友人でもない。会社の同期でもない――恋人としての「飯塚」
友人とたった一つしか文字が違わないというのに、その差はあまりに大きく、くすぐったい気持ちになる。手を伸ばせば握られ、触れたくなったら触れてもいい……キスも同じ。
今までの関係を飛び越えてお互いの気持ちが同じであることを確認した日から数えて5日目の金曜日、そして6日目の昨晩、二人はさらに飛び越え関係を深いものにした。言葉ではなく互いの体温と熱を交換しながら、向き合っていることを実感した。それは今まで経験した行為とは明らかに違う別次元のものだと武本は感じた。
「全然違う」
言葉にしてみるとそれは実体を持ったように、武本の心の中に落ちてくる。飯塚とだから築くことのできた関係と時間。別次元で別の物。セックスは「恥ずかしい」ことであり口にするのは憚れる。それが常識だということは武本も飯塚も知っている。でも……違った。何もかもが。
バレンタインデーを過ぎて週末まで待つと言い張ったのは飯塚だ。武本の負担を考えてのことだったが、ここで黙っている武本ではない。何事も最初が肝心、役割を決める前に両方試さないと意味がないし判断できないという武本の言い分。二人は互いに受け入れることにした――週末まで待つこと、そして役割を平等にすることを。
飯塚はどう感じたのだろうか……聞きたい気持ちもあったが飯塚の身体が心配だった。武本は休みだが飯塚は今日も仕事、おまけに立ち仕事。「どうにかなるさ」そう言って大丈夫な振りをするだろう――大丈夫ではなくても。
伸びてきた温かい腕によって引き寄せられた時、熱い時間のさ中よりも深い想いが身体の奥に溢れる。飯塚を必要としている、そして必要とされている実感は感動に似た衝動とともに心を揺すぶる。
引き寄せられるまま、飯塚の頬に手を伸ばすと優しい瞳が自分を見下ろしている。たったそれだけのことなのに、喉の奥が詰まった。
恋愛欠陥人間だと諦めてばかりいた自分はもういない。見詰められるだけで、涙がでそうになるなんて甘すぎる。でも飯塚相手ならどれだけ気持ちが甘くなってもいい、そう思えることは安堵につながった。手のひらから伝わってくる飯塚の体温が自分の中に染み込む。
触れる。それは性的な欲望を満たすために一番手軽な方法だと思ってきた。触れて高めてゴールに向かう。欲望を消化するための第一歩――触れる。
でもこれも違った。触れることは相手の存在を自分の中に取り込むことだ。そして同じように自分の存在を相手に染み込ませる。互いの皮膚と体温が同化し心の中を見つめ合う。生きていると実感できる特別なこと。それは特別な存在同士であるからこそ共有できる。
武本は自分の中に生まれた実感を大事にしようと決めた。それは飯塚が特別であり、自分の中にずっとしまっておきたい大事な相手という証。そして、自分を与えて慈しむ愛しい存在。
「おはよう」
寝起きの少し擦れた飯塚の声が耳に心地いい。武本は「おはよう」の代わりに飯塚を抱きしめる。全身からあふれ出しそうになっている愛おしい気持ちが飯塚に伝わるように、染みこんでいくように。
「仕事行けるか?」
「もちろん行ける、大丈夫だ」
ほら、やっぱり。予想通りの答えを聞いて武本は回した腕に力を込める。
飯塚の鼻先が首筋におりてきた。肩に顎を置き、首筋に頬を寄せる。その甘えるような仕草に、また心が揺れる――愛おしい。
背中にあった手のひらを飯塚の頭に寄せて引き寄せる。「もっと甘えていいよ」という言葉は今いらない。飯塚が望むなら、どんな自分の姿でも与えてやりたい。言葉よりもずっと確実な体温を飯塚に……あげたい。
「俺は小さい頃から、欲しがることが下手だった」
「その分、周りがくれたんじゃないのか?」
「くれたのかな……押しつけだと感じることが多かったな。だから必要だと思えるものだけ揃えた。そこに自分の欲はあまりなかった。だから人と接するのも同じで自分の意思はあまり関係ないと決めつけていた」
「そうなんだ」
飯塚の手のひらが前髪を押し上げ、露になった額に唇が触れる。武本は瞼を閉じ、額に感じる飯塚を取り込む。飯塚の気持ちを……そして優しさを。
「武本は違う。全部が全部、特別で代わりはいない。こんなに欲しいと思えるのが不思議なくらいだ……でもそれが嬉しい」
「じゃあ二人揃って恋愛欠陥人間を卒業だな」
軽く流されると思っていた言葉に反応した飯塚に強く抱きしめられて武本は驚いた。
「武本……俺は実感したい、感じたいんだ、そして確かめたい」
「な……にを?」
「自分が武本と繋がっているということ、俺の傍にいてくれているということ。俺が……武本と繋がっているという実感がほしい。馬鹿みたいに欲しがっても「しょうがないな」と笑ってくれる武本を見て安心したい。
たくさん強請って、深い所に居る武本を……感じたい」
二人の気持ちは一緒、そして互いを想い合っている。それに疑問はなかったが、武本は二人の在り方の違いを初めて理解した。欲しいと願い強く感じるのは同じであっても、相手の深淵に潜り、さらなる深みを目指したいという飯塚の欲求と自分の想いが違うことを。
「飯塚、俺はね。お前を温かくしてやりたい。欲しがるならいくらでも欲しがればいい。俺は何度も与え続ける。そして体から溢れそうになっている「愛おしさ」を飯塚に全部やるよ。俺の中にある飯塚への想いを潜って探せばいい。俺は逃げも隠れもしないし、いつだって胸の中に抱きしめる。何度も何度も。いつでも、そしてこれからもずっと」
飯塚の瞳から零れ落ちた涙は冬の日差しを受けて少しだけ輝いた。それはとても綺麗でクリアな光で、瞳からというよりは飯塚の心から流れたように武本には思えた。
求める幸せと温かさ、そして求められる喜びと優しさ。愛情という名の安堵。二人は身体と気持ちを互いに補いパーツはピタリと重なった。体温と鼓動、眼差しと微笑みとともに。
「何度でも欲しがればいい、何度でも強請ればいい。そうやって俺を抱けばいい」
「ずっとつきることなく武本を求めてしまいそうだ。しつこかったら言ってくれ」
涙が彩るまつ毛の奥にある瞳。どんな色に変化しても飯塚の傍に居続けよう。ともに悩み、悲しみ、喜びを分かち合って、眠りにつく。
「世間がどう言おうと俺達は俺達だ。俺は俺のやり方で飯塚を抱く」
「抱かれる……俺が感じたのはそれだよ。ずっと武本に抱かれている。それは武本のもつ気持ちがふわっと形になって、そのなかにスッポリ包まれたような……そんなだった」
「飯塚、覚悟しておけ。抱きつぶしてやるからな」
重なる唇は確認の口づけか……更なる熱が始まる合図なのか。
いずれにしても、俺達はよほどのことが無い限り離れることはない。その確信はふわりと胸に宿った。
心は微笑みに移り、武本は重なる唇の端で微笑んだ。
END
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