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July 27.2015 ハルの相談
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「ミネさん、少しいいですか?」
美味しく賄いをいただいたあとの休憩時間、僕はミネさんに声をかけた。今朝から僕は憂鬱だったわけです、原因は両親。
「ん~どした?」
ミネさんの向かい側に座った僕を見て、ミネさんがニヘっと笑ってくれる。
僕の浮かない顔を見て、ちょっとリラックスしなさいハル、そう言われたような気になる。
ホントに優しいよね・・・ミネさん。
「今朝、ここで働くことにしたって親に報告しました。それと村崎寮のことも・・・。」
「そんで?」
「僕の顔みればわかると思いますが、イマイチ納得していないというか。あと入寮に関しても、それは迷惑がかかるから自分でなんとかしなさいって。」
ミネさんはイスにもたれて、コーヒーを一口飲む。その顔は穏やかで、僕の言った事を受け止めているのに静かだった。
「まあ、それは予想していたよ。うちの店の名前が有名だったり星とったとか、テレビで紹介されていたりすれば少しは安心だろうけど、聞いたこともない店なわけだ。
そこに4年も大学いかせた息子が会社員にもならずに働くといえば当然の反応だよ。」
「それは僕もわかります。でもやりたいこともないまま会社だけ選んだって長続きしそうにないし、本当にやりたい事になったんですよ、ここで働くってことが。
自分でいうのもおこがましいです・・・けど・・・必要としてくれている場所に居たいって思うことはダメなのかな。」
ミネさんはポンポンと頭を優しく撫でてくれた。
「ダメじゃないよ。そんな思いをハルにさせているオーナーとしての俺の責任だ。ご両親に納得してもらえるように俺がちゃんと話すから一度都合のいいときに店に来てもらうといい。
ハルの働きっぷりをみれば安心も感心もするさ。
ハルにいてもらわないと困るのよ、俺もお客さんもね。だから必死に説得してみせよう。」
ミネさんはニヘラっと笑って、頷いてくれた。
憂鬱の種その1はとりあえず解決・・・その2があるのですよ、まだ。
「あと・・・。」
「入寮の件?」
「・・・です。」
これはきちんと話すべき理由なので、少し緊張します。僕にとってはもう終わった事だし、今更ね?なんですが結局ずっと付いて回る。普通じゃないって厄介ですよね、ほんと。
「高2の時に付き合っていた人がいて・・・違う学校の1コ上の先輩です。ある日、事に及ぼうとした時に踏み込まれちゃって。」
「誰に?」
「先輩の母親に・・・。」
「そりゃあ、結構な修羅場だね。それで引き離されたってことか。」
「僕がたぶらかしたって言われて・・・。たしかにあっちは彼女がいたこともあったし、先輩の親としては普通の息子を血迷わせたのは僕だって、すごい勢いだった。
先輩は卒業まで3ケ月だったし、大学は東京に決まっていたけど、ご両親は同じ町に僕が住むことに我慢できないとか、なんとかで・・・その時から札幌で一人暮らしなわけです。江別と札幌じゃ目と鼻の先じゃないかって思いましたけど、収めるにはそれしか方法がなくって。」
「はっきり言えばこういうことね?ご両親にすれば息子の性癖を踏まえると、一つ屋根の下で恋愛対象である男と住むのはど~なの?ってことだろ。」
「・・・。」
「確かにそれは俺も軽率だったかもだな。たとえばこれが女の子だったとしよう。うちの店で働いてくれるか?あまっている部屋に住まわせてやるし、となればセクハラエロオーナーだよな、普通に考えてさ。」
「でもそれって、なんだかミネさんに失礼ですよね。ミネさんがゲイでもなんでもないのに、余計な事を勘繰った親にちょっとイラっとしたといいますか・・・です。」
「結局のところ、どうであってもご両親は心配するってだけの事じゃないか、当たり前だよ。
例えば、ハルと俺が付き合っていたとして一緒に住みますっていっても、オイオイ!ってなるわけだしさあ、どう転んでも大事な息子を心配する親の姿だ。まかせなさい、俺がなんとかしますよ。
それとも、ご両親の言うように一人で暮らす方が気楽なら、いんだよ?ハル。」
確かに一人暮らしは気楽だ。ここで働けば、食事の心配をする必要もない。付き合う相手ができたとしたら、一人でいれば何かと便利ではある。ある・・・けれど。
金銭的な魅力はもちろんだけど、ミネさんと一緒にいれば文句なしに楽しそうだって思うわけです。意味もなくワクワクするというか・・・ね。
「僕はお世話になりたいと思っています。」
「ほんじゃ、相思相愛ってことでOKだな。誠実オーナーとしてご両親にお逢いいたします。」
「よろしくお願いします。」
ミネさんは立ち上がって厨房にいくと、コーヒーポットを片手に戻ってきた。それぞれのマグに注いでイスに座る。本当はこれ、僕がやらなくちゃいけないことなのに、気が利かないと反省。
「それにしても麗しき青春時代から随分ヘビーな経験してるんだな、ハルは。」
「家族にカミングアウトするにあたって悩む間もなくバレたので結果オーライかなとか。
遠距離なんて無理だろうとお互いわかっていました。どうやって別れようか悩んでいたから解決にもなったし。そう考えたら悪いことばっかりじゃないって・・・。」
「物は考え様か・・・。確かにね。」
「理さんにフラれたのだって、今となっては正解って気がするし。」
「んあ?ハルってばサトルが好きだったわけ?」
うげ・・・つい言わなくてもいい事まで言ってしまった。だってミネさん聞き上手というか何でも受け止めてくれそうなんで、誰かに言いたいけど我慢していることを言ってしまう・・うう。
「コンビニによく飯塚さんと来ていて。優しそうな人だなってずっと見ていただけです。なんか元気がなくなって、びっくりさせたら少しは元気になってくれるかなってバレンタインデーにチョコを渡しました。」
「コンビニで?」
「はい、クランキーチョコ5枚。」
「うわ、ハル。お前かわいいことするね~。」
「次の日わざわざ返事しにきてくれて、ホント思ったとおりの人だなって感動しちゃいました。それでお友達になってもらいました。」
ミネさん両手を首の後ろで組んでイスの背もたれに身体を預けた。面白そうに少しだけ笑みを浮かべて遠くをみる姿は、なんて言ったらいいのかな・・・幸せそうで、なんか子供みたいで、ワクワクが伝染してくるような不思議な感じ。
「そのクランキーがなかったら、ハルはここに居なかったってことだろ?その先輩とうまくいっていたら、一人暮らしをしていなかったわけだ。飯塚のマンション近くのコンビニでバイトだってしていないし。俺思うけどさ、恋愛に正解も不正解もないんじゃないかって。」
理さんに振られて正解!←これはどうですか?ミネさん的に。
「ようは選択の結果だよな。その時自分が選んだことが結果につながる。間違いだった、正解だったってのは結果をみて判断することで、最初に選択したのは自分なわけだからさ。」
「それはそうかもしれませんね。ミネさんの選択は今までどうでしたか?」
「俺?」
ヨッコラショと足を組んで自分の膝あたりに視線を落とした。静かでちょっと寂しそう。
ミネさんの表情はクルクル変わる。
「俺の選択の最優先項目はSABUROなわけ。食材はほっておけば傷むし、お客さんを逃したらもう来てくれないかもしれない。ここに来ることを楽しみしているお客さんを思えば、自分の都合で休むわけにもいかない。だから彼女はつねに後回しになる。だから結果はさんざ~~んです。」
ニャハっと笑っておどけてみせるミネさんの目の奥が少し悲しそうで、なんだかとっても可哀想になった。そして腹が立つ。
ミネさんだけじゃない。理さんも飯塚さんも頑張っている。やらなくちゃいけないことは沢山ある中、目標にむかって進んでいるのに・・・散々ってなんだって思いませんか?恋人ならシャンとしろと言いたい!
「後回しと蔑ろは違うと思います。最優先が必須だというなら、それをくれる男にくっついていればいい。」
ミネさんはビックリした顔をして僕を見た。
あ・・・言ってしまった・・・本音を。あちゃ~。
「わっはははは。すっげ~~ハルってば男前!いやあ、かわいいくせに格好いいとは恐れ入った!いやあ~スッキリした!あははは。」
ミネさんは文字通り腹をかかえて笑っております。
ええっと・・・この爆笑で説得の事ふっとんでいませんよね?
大丈夫ですよね・・・ミネさん!
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