アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
september 6.2015 ひょんなことからカミングアウト
-
飯塚の顔が金曜からおかしいことになっている。
金曜の朝、出勤してすぐにわかるほどの変化。
もれなく土曜日も、おまけに本日日曜日も・・・いつまでデレデレしてるんだと言いたい。
とはいえ、散々毎日顔をみているからわかる変化なだけで、たまにしか見ない人間には普通の顔にしかみえないだろう。
単純に男前度が上がってピンク色なだけだ。
ハルは言った。
「飯塚さんってわかりやすいですね。それとアドバイスです。飯塚さんはピンク色の服は似合わないと思います。今はなんだか・・・裸の王様がピンクのガウン着せられたみたいなヘンテコリンです。」
そんなことを言われても飯塚は怒るどころか、ピンクは持っていないから大丈夫と、これまたヘンテコリンな返事をした。
それからSABUROの面々は飯塚をスルーして、さっさといつもの鉄仮面に戻りやがれ!な気分で仕事に精をだすはめになったというわけ。
土曜日「おはよう~。」とやってきたサトルはまったく普通で、いつものサトル。デレデレもなし、ピンクもなし。
おまけに携えてきたのは「ミニオーナー制」なる企画書だった。スタッフ全員をテーブルに座らせて説明をしてくれた。お~これがプレゼンってやつ?サラリーマンの端っこをちょっとだけカジった気分にさせてくれた。内容もバッチリ。店にとって広告にだすよりずっと安価で運営できる企画だ。チケットや会員カードなど必要なものは見積もりをとっているらしい。
すべてにそつがない。意見を求められたけど、ケチをつけるところなんかないし、どれくらい集まるか考えるとワクワクした。
こういう前向きの動きは気持ちがいいので、気持ちの悪いデレデレ飯塚はほっておくことに。
「サトル・・・あれ、いったいどうしちゃったわけ?」
それぞれが仕事に戻り各自の役割を始めた時、サトルを隅っこに引っ張り聞いてみた。
俺の指差す方向にいるのは厨房の飯塚で、これまた嬉しそうに包丁を研いでいる。何故かしらんが、鉄仮面はこの包丁を持つようになってから研ぎに精をだし、ピカピカ状態を保っている。
和食の板前さんもびっくりなお手入れだ。
「あ~あれは出雲の刃物で俺がプレゼントした包丁。出雲は縁結びの神様がいるところだろ?だからお客様との縁が切れませんようにって。」
おやおや・・・そういうことだったわけ。
なんだかさ~敵わないって思うよね、こういう時。そんなプレゼントされたら別にその気がなくたって、その気になっちゃうってもんだ。飯塚なんか、その気マンマンなわけだから、それはもうゾッコンラブ状態だろう。
心臓をドキュンと打ち抜かれたに違いない。
(言葉が古い?オヤジの知り合いの店を渡り歩いて修行したからね。一世代前に毒されてるの!)
いやいや、違う違う。包丁じゃなくて。
「包丁は・・・謎が解けた。これから悪さしますって妖怪が包丁研ぐみたいに、毎回嬉々として砥石に向かっている意味がわかった。
じゃなくて、飯塚が金曜の朝から気持ちが悪い。鉄仮面がお花の冠のせてピンクのローブ着ているくせに漲っている感満杯なわけ。サトル、飯塚に何か言ったわけ?」
「ああ・・・。」
ああ・・・って、何気にサトルまで照れくさそうってなに!いや、なんか可愛いけど。
「思い切って引っ越ししたんだ。9/3は同居記念日にすることにしたってだけだよ。」
同居記念日・・・。そんな記念日をつくちゃったわけ?サトルと飯塚が?
そりゃあピンクになっても仕方がない。
「同居って、同棲が正しいんじゃね?」
ボン!
サトルの顔面が盛大に真っ赤になった。うわ~~珍しいもの見ちゃった!
まっかっかのサトルさん!いやあ、タマゲタ、ビックリ、耳まで真っ赤で超かわいいんですけど!
悪戯が見つかって困っているチビッコみたいな可愛さっていうの?よしよし、許しちゃう~な気分。
抱きついてギュウギュウしたらサトルがもがく。
「ミネ!離せって!」
「や~~だね。サトル超かわいい~。すっげ~かわいい!」
「かわいくない!俺は男だっ!」
にゃははは。そうなのか・・・ハルみたいなかわい子ちゃん顔じゃなくても、男は可愛くなれるのか。
発見だな、これは。いや・・・でも鉄仮面飯塚が可愛いとかなさそうだな。でもハルはかわいいって言うよな、飯塚のこと。
〘 村崎!てめえ何してやがる!武本から離れろ!〙
凄まじい叫び声のような怒鳴り声にビクってなった。ついでに腕の中のサトルもビクっとした。
おそるおそる振り向くと、そこにはギラリと光る包丁片手の鬼瓦と化した飯塚。
こええ~~おっかねえ~~!!
パっと離れましたよ、もちろん。刺されたくないし、ナイフみたいに飛んできたら恐ろしい。
出雲の神様が宿った刃物に身を切られるなんて、愛に無縁な一生になること間違いなし。
「ちょっと、じゃれただけじゃんか~。サトルは飯塚だけのものじゃないし。」
「いや!俺だけのものだ!」
「俺はモノじゃない!とにかく包丁おろせ!俺のプレゼントを凶器にするな!」
「いい加減にしてください!!!!!!!!!」
しーん
「今日のランチは10名様のご予約をいただいてるし、僕とトアさんだけじゃ店開けられません!
いつまでもサボっているなら、僕とトアさん帰りますよ!本気ですからね!」
いや、それは大いに困る。それは絶対だめ。
「飯塚さんも色ボケオーラをひっこめてください。いつにも増して幸せオーラを垂れ流しているせいで、女性のお客さんから色々聞かれて正直迷惑です。彼女はいるのか、結婚しているのか、あの素敵な人は誰ですか、名前教えてください。毎日働いているのですか?休みはいつですか?歳はいくつですか?僕は飯塚豆知識人間じゃないわけですよ。僕のサービスもですが、何より料理が二の次みたいになるのが本当に嫌です!
バビっといつもの飯塚さんに戻ってください。理さんもあんまり飯塚さんをメロメロにしないでくださいよ、余波がでかすぎなんです。お二人は!」
はあはあ言いながら一気にまくしたてたハル。いやほんと・・・ごめんよ。
「悪かったよ、ハル。」
「まったくですよ、ミネさん。」
「あの・・・・。」
トアがそろそろと手を挙げた。答えに自信のない眼鏡秀才君みたい。
「どうして飯塚さんがサトルさんにメロメロって事に?色ボケとか・・・どういうことなんでしょうか。」
「トアさん、何を今更です。飯塚さんと武本さんは恋人同士です。」
「えっ・・・。」
ハル・・・トアは知らないのよ。言ってないのよ。言うべきかどうしようかサトルはお悩み中だったのよ。
ショックというか、これぞまさに驚天動地・・・といったトアの顔。うむ、俺がなんとかするしかあるまい。
「トア、これはSABUROの秘密その1だ。」
「は?」
「SABUROの秘密は全部で20ある。今聞いたその1は最初の項目でしかない。これで驚いていたら20なんか聞いたらショック死してしまうかもしれないぞ。ちなみにSABUROの秘密を知ることができるのは、仲間と認められた者だけだ。トアはめでたくその資格を得たということだ。おめでとう!」
しーん。
「SABUROの秘密その2。北川正明はゲイである。」
ハル・・・適応力高すぎだって・・・。
トア・・・驚天動地その2・・・。
トアは「あなたも?」な感じで俺を指差した。だから顔の前で「いやいや違います。」と手を横にして振る。隣のサトルと厨房の中の飯塚も同じリアクションだった・・・まぎらわしい。
「いや、驚いたのは嘘ではありません。でもよく考えてみたら、SABUROの方たちに「好きだ。」とか言われちゃったら考えますもんね・・・アリかなって。
ということはですよ!女性だけではなく男性も視野にいれたら50%+50%で恋の確立100%ってことになりますよね!僕にも確実に春がくるってことですよね!やった~~!!」
トアは見た目充分なのに、女子が離れて行ってしまうのは・・・どうにもならないこのズレっぷりと、延々終わらないエンタメ情報のみの会話が原因だと思う。
50%+50%=100%ではないのだよ。1+1=2ってだけで、恋の確立は2倍になりましたって事。
・・・ちょっとまてよ。そう考えるとバリバリなリーマンが相手だったりするとお互いの仕事を尊重したうえで愛を囁いちゃったりできるってこと?それはなかなかに魅力的じゃないの。
・・・いやでも、男相手に勃つのかっていう大問題がある。
愛があれば可能なわけ?
愛があればフェラもできる?・・・・・・・・・・・うううぅぅぅぅ 出来る気しねえ・・・。
「ミネさん。」
「・・・はい。」
「ろくでもない妄想してるのなら今日のランチを教えてください。本気で職場放棄しますよ。」
「・・・ごめんなさい。」
仕事で叱ることもあるだろう、今までどおり可愛がってやるのは変わらない。
でも・・・ハルだけは絶対に怒らせないことに決めた。
怖いんだもん!
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
84 / 474