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september 16.2015 ハルの恋路は前途多難?
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飯塚宅ではじまった酒飲み大会。30分もしないうちに、飯塚・武本チームは6缶パックを2つ片付けてしまいました。挙句全然酔った様子がない。ザルですか!理さんはサルの称号にザルを加えることにします・・・。(僕は酔っております確実に!)
プシュ、プシュ
「にゃはははは~。」
ミネさんはさっきから僕にファブリーズをかけては笑うことを繰り返しています。どこの子供ですかっていうくらい楽しそうに・・・。嫌なのに嫌といえない下っ端の気持ちはわかるまい!
チーム「ザル」はワインを開けている・・・なんというピッチの速さ。
「理さん、お酒強いんですね。飲みにいってもそんな飲んでる感じなかったのに。」
「外より家のほうが楽チンだろ?安心して飲むせいかサクサク飲める。
トイレはすぐだし帰る心配しなくていいし。」
ああ・・・酔いに攪乱された脳みそは理さんを5割増しくらいに画像処理しています。キラキラしているぅ、うらやましいですよ、飯塚さん。そう思って飯塚さんを見れば正統派男前が微笑んで理さんに視線を落しております。こうやって二人で楽しく飲んでいるのですね・・・。
家具付きの味気ない部屋にいる自分が見えて、なにやらションボリしてきました。
SABUROにいるとあんなに楽しいのに、帰ってくるとすごく寂しい。
トアさんから「U18が負けた!悔しいです!」なんていう電話ですら嬉しく思っちゃうくらい。
出掛ければ話し相手くらい(お望みならそれ以上)見つかるけれど、なんだかそれも虚しいですよね。
理さんを見ていれば、しっかり結びついた誰かといる幸せっていうのを実感できるのです。
そして「いいなあ~。」って思って僕にもそういう相手ができるのかな~って考えて、でも考えたってみつかりっこなくて、また寂しくなる。
トアさんセレクトのDVDに何度も救われました。一人の夜は長いのです・・・。
「おら!村崎、お前寝ろ。」
飯塚さんが立ち上がって、ファブっているミネさんを引っ張り上げた。ミネさんはフニャったまま、テヘヘとかニャハハハとかやや寒い感じの言葉を垂れ流しています。
「武本のとこに寝せるぞ。」
「どうぞ、俺のベッドでミネと寝るってのはどお?」
「あああ?」
ケラケラ笑う理さんを見て、なんだ酔ってるじゃないかと一安心。
「武本の部屋で北川は村崎と寝ろ。」
プンプンした飯塚さんはミネさんを抱きかかえて移動していきました。
時間とともに酔いがまわり、それに眠たくなってきた。そうなると自分を律するものが弱くなります。
さっきの寂しんぼな気持ちがまたムクムクと湧き上がってきてションボリしてきました。
「理さん、いいな。」
「ん?どしたぁ?」
「好きな人と一緒に居て、自分にしかみせない顔をする相手がいて。僕には・・・いません。」
理さんは何事?な顔をして僕をみている。そうだよね、こんなこと言われたら困らせるだけだというのに、変なところに落ちちゃった僕はグジグジモードになっちゃって、自分で抜け出せそうにありません。
「正明にだって現れると思うよ。かわいいし。」
「かわいくなんかない!僕は見た目ほどかわいいわけじゃない!」
「どした?見た目かわいいって自分から言ってるし、そういうとこがかわいい。」
「ちがっ・・・。」
『可愛い顔してるくせに冷たいね。』『かわいいのは顔だけじゃないか。』
『かわいい顔だけにキツイよね、そういう事言うと。』
今まで言われた沢山のかわいい、それには別の意味をもつ場合が多かった。好きでこの顔に生まれたわけじゃない、不細工よりずっといいけれど僕の顔を見て人は勝手に内面を決めつける。そして自分の想像と違う裏切られた気持ちを言葉にして僕に投げつける。
いつからだろう・・・予想を上回る可愛さを最初にみせて、後に真逆の自分の本心を爆弾のように落すようになったのは。僕のこの攻撃にたいていの人は逃げ出した。
それでも僕を欲しがる人がいると甘い期待をするのに、期待は苦いものにかわるだけだ。
こんなふうに試すような事をして僕を好きになってくれる人がいるって思っていた。
馬鹿なのは僕だね。
ポト
零れた滴を見て、自分が泣いていることに気が付いて慌てて拭う。
なにやってんだろ・・・まるで子供だ。
「どした、ん?正明。お前は何も言わないで自分で解決するタイプだけど、人に言って楽になったり整理できたりすることだって沢山ある。現に俺は正明に救われたよ、何回もね。」
「そんな・・・こと・・ない。」
「あ~~る。特権階級って言ってくれたし、お前のクランキーチョコは毎年俺に勇気をくれる。」
本格的にボタボタ流れてきた涙が止まらない。トアさんの泣けるベスト3を見たときみたいな有様だ。
「泣いたらスッキリするからたまには見なくちゃいけないのです、こういうジャンル。」トアさんの言うとおり翌朝はスッキリしていた。でも今はどうなんだろう。アルコールのせいもあるし、自分の心に向き合ってスッキリするのだろうか。
「正明が泣いてると、俺まで悲しくなるよ。」
目元を隠すようにしていた手首をひっぱられて、僕はすっぽり理さん胸の中に納まってしまった。
びっくりするくらい温かくて体の力が抜けていく。
「正明はいいこだ。仕事に真剣に取り組んでサーバーも扱えるようになったし、お客さんに寄り添ったサービスをしようとしている。顔もかわいい、でも俺はお前の内面がかわいいと思う。真剣でまっすぐってこと、それを見ていると自然と湧き上がってくるんだ。それはかわいいなって事。
正明はかわいいって言葉にマイナスのイメージがあるのかもしれない。
ミネにもいわれただろう?そんなふうに思うなって。俺もそう思う。
かわいいって言葉にだってたくさんの意味と、人それぞれの想いがあるからね、全部同じだと思わない方がいい。正明の思うマイナスのかわいいは僅かの量だよ。
わかった?」
「うううぅぅぅ。」
「あんまり泣いたら目がはれちゃうぞ?」
「うううぅぅぅ。」
「あまえんぼ~。かわいいなあ~。」
背中をトントンされながら、理さんの温かさにしがみついていました。僕がいる場所じゃないけれど、今だけはいいことにして委ねる。髪を梳く指の感触や背中をさする手のひらの大きさを感じていると寂しかった心が減っていくような気がした。
おなかがいっぱいで、酔っぱらっていて、泣いて慰められて・・・眠い。
自分に向けられる優しさがこんなに安心するものだということを・・・
僕は初めて知りました。
「お~い、朝だぞぉ。」
スマホのアラームじゃない音が聞こえてきて、自分がどこにいるのかわからず一瞬パニくりました。
えっと、ジンギスカン食べて飯塚さんの・・・あっ、ぼろぼろ泣いて理さんを困らせた。
うわ!恥ずかしい!どうしよう!
バタバタしたいのに体が動きません。どういうことだ、それにあったかいし、目の前にはTシャツ・・・
「んぁ?やっ!」
「なんちゅう声だ、それは。おはよ~ハル。」
「ミ!ミネさん!」
「そ、ミネさんです。ハルおはよ~は?俺おはよう言ったぞ?」
「お・・・はようございます。」
「わりい、抱き枕がわりにしちまった。おかげでぐっすり眠れたよ、彼氏がいるなら黙っておけ。
お手頃サイズで最高だった。ハルの型とってオーダー抱き枕つくったらよくないか?
おお、朝から冴えてるね俺。」
「冴えてません!」
本気モードでバタバタしたら、あっさり腕が離れていく。なんだかそれも少し寂しいと思ってしまうから、人の温もりというものは凶器です!麻薬です!
「うりゃあ!」
変な掛け声とともに起き上がったミネさんは壁を背もたれにしてベッドに座った。僕はどうしたものかと転がったまま、今何時なんだろうかと考えた。
「ハル、泣いたのか?目が不細工だ。」
「泣いてません。」
「ふ~~ん、そういうことにしてやろう。顔洗えば復活するだろ。」
「今何時ですか?」
「5:30」
「はやっ!」
「俺の朝は5:30なのよ。」
意外と早起きなのですね、驚きました。ギリギリまでベッドでグズグズしているかとおもいきや、違ったのですねミネさん。
「シャワー浴びてくるわ。」
「そのあと僕も。あ、でも帰った方がいいかな、服着替えなくちゃだし。」
「それでもいいけど、たぶん服は洗濯されて乾いているよ。ここんち乾燥機あるからね。
飯塚が寝る前に洗濯してくれているはず、いっつもそうだし。
それと俺と飯塚の朝飯がこれから披露されるわけだが、ハルはそれをムザムザ逃すつもりかね?」
「えっ。」
「服は洗えるけどパンツまでは無理だろ?じゃないと俺達マッパで抱き合うことになる。それは色々マズイよね~、不味いよね~。」
「なっ!」
「かわいい反応だ。それはさておき、俺はとっても助かっている。」
「なにが・・・です。」
「ハルがいてくれて助かっている。飯塚も理もトアも皆大事なスタッフで仲間だ。
ハルは時々自分なんかモードにはいるし、ちょっぴり寂しい顔をしてたりするのが気になってさ。
傍にいてくれる相手がいればいいのかもしれない。でもさ、惚れた腫れたじゃない信頼関係ってのも大事なものだよ。だから寂しいって思ったら言えばいい。寂しいを少しだけ減らすくらいはできるから。」
まさかそれで僕をひっぱりだしたのですか?
ミネさん・・・。
「スペシャルな朝飯楽しみにして涎たらしておきなさい。俺はシャワーでジンギスカンを洗い流してオーナーに変身だ。」
ベッドからおりたミネさんは僕を見下ろしてニヘラっと笑った。
「俺の寂しんぼも少し減った。ハルの体温が隙間を埋めてくれた。」
頭をガシガシと撫でながらそんなことを言う・・・。
浴室に向かう背中を見てなんだか僕は切ないです。
大人は皆ずるいと思いませんか?
敵わないと思うほどに引き込まれるから、離れられなくなる。
この人達以上の人材を見つけないと僕は満足できそうにありません。
僕の恋愛ライフがまた遠のきました・・・。
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