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november.21.2015 ほうほう
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「ミネ、年賀状ってお客さんにだしてた?」
「住所しってるというか、名刺ある人には出していたけど50枚くらいしかなくて、あとは仕入先とか。
でも今年はミニオーナー制度がコツコツ集まっているから合わせたら200枚くらいになるかもしんない。」
印刷頼むほどでもないか・・・。パソコンで地味にピコピコプリントアウトして手分けして書くしかないかな。
宛名がタックシールとか、筆字です!的な印刷はどうも好かん。
「来年の干支ってなに?」
「サル。」
「サルか~。サルで素敵なデザインとかあるの?」
「う~ん、探してみるよ・・・。サルじゃなくていいだろ?」
「うん、じゃないほうがいい・・・かな。」
年賀状か・・・すっかり忘れていたよ。ということで日報がわりの日記帳にちゃんと書いた。
『来年の俺!もう年賀状手配したか?』うむ、これで来年も再来年も忘れることは無い。本当に便利な日記帳だ。
理はもうパソコンとにらめっこ。たぶん素敵なデザインをみつけるか作ってくれるに違いない。
「こんにちは~。」
お、すずさん!お久しぶりです!
「実巳君、今月と来月お弁当お願いしたいの。」
「ほいほ~い。会議ですか?」
「そうなのよ!来春に大きなイベントがあってね、その準備というか媒体系の人がくるわけ。
札幌でするわけじゃないからこっちが行くっていったのに、札幌に行きたいからとか言うわけよ。
余計な仕事増やすなって感じだわ。宿泊先やら夜はどこかで食べさせなくちゃいけないし、つきあわないといけないでしょ?
それなら私が行って、さくっと打ち合わせして日帰りするほうが、ずっと生産的!」
「まあ、仕事にかこつけて北海道でカニ食べよっかな~ってこと?」
「そういうこと。」
「じゃあ弁当に蟹の足でもいれる?」
「いいえ。ラーメン、カニに海鮮、ジンギスカンとかね食べるだけ食べて帰るらしいから普通でいいの。
北海道料理は他の店にまかせる。なにより私が仕事中にそんなもの食べるかってことなのよ。
元気がでるのはここのお料理なんだから。」
「ラグー、鍋で持っていく?」
「ほんとよね~。」
「そういえば、すずさんの会社は年賀状だすの?」
「だすよ~。各担当が取引先に自筆でね。名刺ホルダーの中にある相手に書くの。できれば同じ会社ならご一同様にしたいことろだけど、そうもいかなくてね。その課のトップと実動君とか、同じ会社に何枚も書くことになって、面倒だわ。」
「デザインとか印刷は?」
「出入りしているプロダクションのデザイナーさんにお願いするの。印刷されて出来上がってからこつこつ書かなくちゃいけないのよね。お店で年賀状用意するの?」
「ええ、先ほど着手したところです。でもデザイナーさんに頼む規模じゃないし、手作業です。」
「それもいいと思うよ。このお店のアットホームな感じだと、キレキレのデザインものは何だか違うし、『あけましておめでとうございます、謹賀新年』っていうのもなんだよね。」
「うちの担当者がきっと素敵にしてくれるはず~。」
すずさんはフフフと笑ってサトルを横目で盗み見た。
『真剣ね、彼。』
『はい、うちの大事なデザイナーさんです。』
「そうだ、実巳君。『delicious』にあがってた所在地不明の店、あれここでしょ?」
「ええ~すずさんも、あの読者ですか?」
「いや違う。イケメンは見るに嬉しい素材だけど、東京まで見にいくほど暇じゃないし。
うちに帰れば一匹それ相当なのがいるし。」
「うわ、堂々と!」
「たまにはいいの!会社の若い子たちが騒いでいたから見てみたの。確かにここだったよ・・・。
なんか嗅ぎつけられた感じがして少しガッカリ。わりと好意的だったし、書いた人が教えたくない気マンマンだったでしょ?それにトア君が素敵に写ってたから、しょうがないかって思う事にしたけど。
やっぱりいい場所は皆好きなのね。」
いい場所か。そっか~。そう言ってもらえると嬉しい。
オヤジの代から変わらないっていうことは俺にとって大事だ。
「極端に客数が増えているわけじゃないですよ。上昇傾向にありますけど。あとトアが歩く映画雑誌みたいになってます。」
「ああ~。おすすめのフランス映画がなんだかこんだかって、あったわね。へえ、そんなことになっているのね。トア君頑張りどころじゃない。」
「おすすめを聞かれて答えるってだけなんですけど。聞いたお客さんちゃんと見てるのかなって、トアの心配はそこだったりする。今のところ「見ました!」っていう反応はなしです。」
「あららら。」
「でもハルがちゃんと、トアにつきあってDVD見まくってますからね。そのうちトアの代理ができそうですよ。
ハルのミニトア化!」
「トア君ってそんなに映画に詳しいの?」
「ですよ~。」
「ジャンル問わず?」
「ん~微妙ですね。新しいのより古いのが得意みたいです。ついでに恋愛ものは苦手っぽい。俺がこないだ借りたの「エターナルサンシャイン」って恋愛映画で。」
「どうだったの?」
「う~ん、ヘンテコリン。何か俺わかんなくなっちゃって二回みたら、最初と全然違って見えた。物語のループというか、映画が終わっているけど終わってなくて、なんだか二人の関係みたいでね。消えちゃってるのに消えてない、でも消えていく。もう一度みたらまたループにのみこまれるっていうか・・・。
トアらしいなって思っちゃいましたよ。こういうのだったら恋愛映画もありかなって。」
「へええ・・・ほう。」
「ほう?」
「ふふん、内緒。それじゃ数が決まったら電話するね、お弁当。」
「すずさん、「ほう」の次は?」
「ほうの次?「ほうほう・・・ほおお~~。」かな?」
いつものようにとびきりの笑顔を残してスッと振り返ってヒールの音がコツコツ響く。
理はようやく顔をあげてすずさんに会釈した。
すずさんはいつものように手をふって出ていく。
ほおお?何がほおお?
皆さんわかる?俺わかんない。
まさか!すずさんも魔道士なのか!そうなのか!
「ミネ~、ちょっとこれ見て。」
サトルに呼ばれて俺は「ほほう」の追求を中断した。すずさん・・・無駄に「ほほう」なんて言うもんか。
あれは「企み」の音だ!
間違いない!
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