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december.5.2015 二人の決め事
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「こんどの月曜、髪切にいかないか?」
お疲れさま乾杯をしてマッタリ中に衛に切り出した。
一応答えを自分なりにだしたから、なんとなく足が遠のいていた実家に帰ることができそうだ。温泉行きを急に決めちゃって正明との約束もずっと延長中だ。
さすがに来週にかかると呑気に散髪は無理だろうから、行けるとしたら7日が最後のチャンスだ。
「そうだな。これを逃すと厳しいかもしれない。北川に予定変更したままだしな。」
「だよね。どうする?バスで帰る?」
「往復だと一人5000円を少し切るぐらいだよな。レンタカーの方が安くないかな、ちょっと調べてみる。」
衛はスマホでサクサク検索をはじめた。温泉の時もレンタカーだったけど、あの日は24時間で借りたから、それより短い単位の金額がわからない。
でもバスよりは絶対安そう。
「アクア。12時間で7000円台で借りられる。ガソリンだって僅かなものだし、こっちのほうがいいな。」
「正明の分を足して二人で割ってもバスで行くより断然安いな。」
「北川のことだ、僕自分の分は払います!って言い張るだろう。」
「その時はガソリン代だけ払ってもらえばいいよ。バスの片道以下だよ、きっと。」
「そうしよう。明日北川に言うとするか。予定入ってないといいけど。」
のびのびになっていた散髪か。姉ちゃんのお腹はデカクなってオタオタしているだろうか?笑わないように注意しないと、がっつり怒られそう・・・気をつけなくちゃ。
「話はかわるけど。理は欲しいものある?」
「なんだよ、唐突だな~。こないだ誕生日したばっかりだぞ?」
衛は空いたグラスにワインを注いでこっちを見る。
「クリスマスがあるだろうが。」
ああ・・・クリスマスね。そういえば、クリスマスを衛としたことはなかった。さすがにクリスマス一緒に飯食おうぜという流れにはならなかったし、お互いに避けてきた気がする。俺に彼女がいた時もあったし、思い出したくないことに翌年俺はポンコツだった。去年は初オードブルでそれどころじゃなかったし。
「そういえば、俺達クリスマスしたことなかったな。」
「だろ?」
だろ?って・・・ええ、そうですが、その顔はやめてください。もう少しさらっと見るとか、無表情とか、やり方を変えてくれないでしょうか。特にソファで隣にいるときには!
「でもさ、クリスマスの頃はヘロヘロだと思うけど。」
「・・・だな。」
「クリスマス23日~25日の3日間あるわけで。ランチやディナーでしょ?それに加えてオードブルがあるし、正明のBOXもある。3日間を乗り切ることを考えたらクリスマス~~なんて浮かれている余裕はないよな、残念だけど。」
衛はポスンと背中をソファに預けた。
クリスマス、あ~プレゼント、何か欲しい物あるか聞いてみるか。という思いつき程度だったけど、考えてみれば密度の高い3日間。それに思い当たったらしい、眉間に皺が寄っている。変な事を言いまくるミネよりはマシだけどね。
「帰ってきて寝て、朝早く行って働いて・・・の3日間になるな。」
「とくにチーム厨房はその確率が相当高い。」
「だな。」
「それに欲しい物ってないよ、思い浮かばない。誕生日したばっかりだし。最近不思議に思うんだよね。」
「何を?」
衛は何たることだ、背もたれからコテンと転がり俺の足に頭をのせた。
いやだから・・・そういう不意打ちは止めてくれませんか!
「なんだよ!なんの断りもなく!」
「膝枕お願いいたします、って事前に言えってか。断るだろう、だからお願いする気はない。」
むっき~~。この俺様め!
「それで?何が不思議?」
そうだった。ピンクや乙女は引っ込めてしまわないといけません。先月に大バーゲンしちゃって、なんか自分でも恥ずかしいわけだよ。ちゃんと男らしくしておかねばなるまい。
「会社勤めしてた頃ってネクタイ何本あっても足りない気がしたし、スーツやシャツだって欲しかった。それを言ったら時計やカバンも同じ。それに私服があるだろう?飲みにも行ったし、昼飯は外。
今の給料だったらあきらかに足りないよな。」
「それはそうだ。理は俺と違って家賃もあったし。」
「そうそう。だから貯金は微々たる金額しかできなかった。でも11月は通帳に預金ができたからビックリした。家賃の軽減は大きいよ?あと光熱費やモロモロ折半になっているからそれも大きい。来月はSABUROの初給料だけど、その額でも貯金できそうなんだよね。
で、一番大きいのは物欲がなくなったこと。」
衛は仰向けに姿勢を変えて、お腹の所で指を組んだ。ソファの肘かけに長い脚を乗っけている。
下から見上げられるのはあんまり好きじゃない。下からみると顎と首の境目が不細工だと思うんだよね、思いません?
不自然だけど顎をグイとあげてみた。いくらかマシだろう。
「物欲は確かになくなった。一日の大部分は白衣を着ている。」
「俺も制服だよ。」
「店と家の往復の時に着る服なんて最低限見苦しくなければいいって思うようになったな。そう言われると皆似通ったコーディネイトじゃないか?」
「そうそう、パンツが綿やデニムになったりするけど基本シンプルなパンツだ。トップだってシャツかセーター、カットソーだよね。あとはコートや防寒マフラー。」
「村崎はキャップや帽子がそこに加わる。」
「正明はパーカーが多い、んでよく似合う。」
「トアがさりげなくお洒落だったりする。」
「こないだ聞いたら、全部バナリパだってさ。アウトレットモールで70%オフの時に買いにいくんだって。会員になるとセールのメールが来るらしい。「同じブランドで揃えているとコーディネイトが楽だし、まとまりがいいのです。」って言ってた。」
衛は下から俺の顎をグインと突いたから。頭が仰け反る。
「ちょ!なに!」
「で?なんの話しだっけ?理は物欲が無くなって不思議だってことを言いたいのか?」
あああ・・・そうでした。脱線しましたね、すいません。
「なんか仕事が楽しいだろ?それに食べたり飲んだりは衛が世話を焼いてくれるから心配しなくていいだろ?二人で仲良く喧嘩もしない。そうするとストレスがなくて、いつも満腹で幸せだ。
だからストレス解消的な物欲が消えちゃったのかなって思って。
欲しい物って聞かれても、困るくらいなんだよね。」
「・・・・なるほど。よくわかる。」
おお!ひらめいた!
「クリスマスはどっちみち疲弊していてそれどころではない。年末年始も同じだ。オードブルは作らなくちゃいけないし。俺は実家に帰るから二人で新年を迎えることはない。」
「なんだよ、帰るのかよ・・・。」
「そりゃあ、帰るだろ。衛も一緒に来るか?」
「え・・・。」
「あ~そっか、一年に一回、両親家庭それぞれにご挨拶があるからそれはできないか。」
いや、そうじゃなくて。そうそうひらめいたってことを言うんだった。
なんでこんな顔してるんだか・・・衛はヘラっと締まらない顔をしていた。変なの。
「クリスマスも正月も駄目となると次はバレンタインだ。バレンタインといえば俺達にとって大事な記念日だ、そうだろ?」
衛は嫌そうな顔をした。そりゃあ・・・あのヘタレっぷりを思い出したのだろう。なんせ言い掛けたくせに丸投げして帰ろうとしたんだからな。でも「これから行っていいか?」そう言ってくれなければ、今の俺達になるのに、もっと時間がかかったかもしれない。
「俺達の誕生月と2月のバレンタインデー、この2回をイベントにしてお祝いをすればいい。そしてプレゼントは二人で考えよう。欲しい物、必要な物、あったらいいよね。そういうものを言いあって買うものを決めたらいいんじゃないかな。ネットで取り寄せないといけないかもしれないし、街に買い物にいかなくちゃかもしれないけど。なんかそうやって二人でお祝いすることを決めておけば、コソコソ準備しなくていいじゃないか。」
「じゃあ、俺からも提案。」
「はい、なんでしょうか、衛君。」
「いつ行けるかわからないけど、京都資金の積み立てをしよう。そうだな一人月4000円くらいで。」
「積立・・・。」
衛はむっくり起き上がった。ソファの上に胡坐をかいて座りなおす。
「プチ連休の日程にタイミングが合うかわからないけど、やっぱり京都は行きたい。この間の温泉はとってもいい時間だったから、泊りがけで1年に1回くらいどこかに理と行きたいんだ、俺。」
うわ、こういうこと言われるとさ、フワフワしちゃうじゃない。まったくも~~おお!
「・・・だな、4000円ずつな。」
照れくさい顔を見られたくないから背を向けてワインを注ごうとデキャンタに手を伸ばしたら、すごい力で後ろに引っ張られた。
当然そこには衛がいるわけで、後ろからすっぽりです・・・むううう。
耳元に唇が寄ってくる。近づいてきている気配にゾワゾワしちゃって、もうやめてくれ!な気分だ。
「俺達とっても仲良しだな。」
ボン!
顔から火がでた。
ジタバタもがく俺を後ろから羽交い絞めにしている衛。その姿が点けていないテレビの画面に映り込んでいることに気がついた俺は頭が沸騰しそうになった。恥ずかしい!!
今度から帰ってきたらまずテレビをつける!
俺は固く固く決心した。
あ~恥ずかしい!
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