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december.17.2015 受けて立つ魔道士
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「へえ、そんなことになっているとは初耳です。」
『小耳に挟んだ以上は高村さんに黙っているわけにはいきませんからね。』
「知らせてくれて助かりました。そういや、西山は月1ペースで帰ってきているらしいですね。」
『・・・なんでそんな事知っているんですか。』
「必ず店にくるから、わかりますよ。どうしたってね。」
『・・・・・。』
電話であってもバツの悪いといった表情の石田さんが目に浮かぶ。西山がどこまで気がついているの定かじゃないが、石田さんは優しさを大バーゲンするタイプの男ではない。
かわいがって仕事を教え、優しさ大作戦を繰り広げたというのに西山はあっという間に石田さんの所からいなくなったわけだ。
お互いいい年の大人だから、おせっかいを焼くつもりはない。とはいっても、西山はもう少し周りを見て、誰が自分を大事にしてくれているのか見極める必要がある。俺や北川さんは西山を玩具にして遊んでいるにすぎないし、そこまで面倒を見る気もない。
上司としてのスタンスをなかなか崩せずにいる石田さんがなんだか少し可哀想になった。
いやいや、そんな心配をしている場合ではない。武本とミーティングをしなくては。
さて・・・これをどうやって料理するか。黙っていてタナボタを期待するほど、俺は素直じゃないからな。
ふふん。
◆◆◆
「いつの間にそんな事に?」
「俺たちの知らぬ間に。」
「どこら沸いて出た話ですか?」
「局のディレクターやっている人間がスポンサーに無茶振りされたのが発端。スポンサーさんは地元のレンタルショップ。」
「地元の?『レンタe-zo』のことですか?」
「そそ。新作は回転するが、準新作になる頃にはダブつきはじめる。どんどん新譜がリリースされ在庫も回転していく。そして古きよき作品や名作はお払い箱になるか、ホコリをかぶって棚の隙間を埋めている。
そして社長さんは、この現状を憂いているというわけだ。
自称『レンタル界の名画座』だからな。品揃えは豊富だが、新作が10本以上棚に並ぶ大手とは回転率が違うだろうし、コアなファンがいても大きく売り上げを伸ばすとなると、思い切った手が必要だろう。」
「・・・昔の作品をレンタルされるような企画というか番組を作れっていう無茶振りですか?」
「さすが武本。そのとおり。」
武本はなるほどという顔をしつつ、頭を回転させているようだ。温泉に行ったらしいし多少色ボケしているかもしれないと心配したが、武本には関係のないことだったらしい。
これを好機とみて店の露出を増やす。俺の目的はそれだけだし、シンプルであるほうが目標や目的はゴールをみるわけだ。
「で、トアの存在が目に留まったということですね?」
「ディレクターの友人が、ここの常連らしい。それでミツを見初めたってことだな。だが俺が思うに、放映される枠は土曜や日曜の午前中ローカル枠の15分、長くても30分程度のものだろう。1コーナーとして毎週確保されるのか月一かはしらん。
よくあるスタジオのセットにミツが座って、ひたすら映画のことを話す。想像できるだろう?」
「・・・ええ、チャンネル変えられそうです。それにSABUROのメリットにならない。」
「そのとおり、やはりここは何としてもこの店を番組で露出させたい。」
武本は腕を組んで考え込み始めた。西山のブログには店の具体的な情報がないというのに、確実に客数に反映されている。口コミの力は偉大だ。受け入れるこちら側は足りなかったスタッフがちゃんと完備され、サービスの質もあがった。
SABUROには料理を食べて満腹になるという目的以外のものが存在しているように思える。
客が必要とする何かが補われる、そんな不思議な空間になりつつあるからこそ地元での認知を確実なものにしたい。
電波の力はデカイから、ここは気合を入れてこちら側が有利になるような提案をしなければならない。
それができるのは俺と武本であり、それが俺たちの役割でもある。
「正式なオファーは?」
「まだないが、そんなに待つことはないだろう。番変は3月末から4月の頭のタイミングだろうし、この時点で何も決まっていないということのほうが有り得ないことだろうな。
たぶんローカル枠の番組自体は決まっているだろうし内容や方向性は練られているはずだ。そこに組み入れる1コーナーになるだろうから、注目されないとなればあっさり見限られる。」
「それはそうでしょうね。でもトアのマシンガントークとマニアックさが片手間に見ている視聴者に響くとは思えないのです。そこ、どうしたもんでしょうね。」
「そ、そこがキモ。」
「今すぐにどうしたらいいかという案は浮かびません。少し考えてみます。」
「もちろん、俺だってそのつもりだ。まだ何も決まっていないし、先方からのオファーもない。はっきりするまでこの話は黙っていよう。」
「そうしてください。テレビのことを以前ミネに言ったことがありますが、しばらくおかしかったですからね。
トアにバレたら、業務にさしつかえると思うので、黙っているほうがいいと思います。」
さてと・・・どうしたものか。
ミツの口から「僕の職場「SABURO」をよろしく!」なんて言わせたら、番宣にきた芸能人みたいになる。
彼らはタレントや俳優だからその資格はあるが、ミツは一般人だし映画評論家でもない。
店の制服で登場したとする・・・「なぜ、この格好?」視聴者はキョトンだろう。
疑問は消極性を生む引き金になりかねない。
ミツ
SABURO
番組
どこをどうやってリンクさせるか・・・。
頭を悩ませることに違いはないが、こういうのは正直ワクワクする。
それに血が騒ぐ。
武本の提案を待って最善の策を練る事にしよう。
これだから企みってやつはやめられない!
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