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december.24.2015 メリークリスマス
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「さすがに堪えるな~。」
どうにも甘いものが飲みたくて、チューハイの缶を買ってしまった。冬季限定林檎味。
シュワっとした炭酸と甘味が身体に沁みこむ。
「こうなったらビールよりこっちのほうがいいよね。」
衛はここ最近無口な男に変身している。それはそうだろう。いつもより早く出勤し、通常の仕込みと合わせてオードブルの仕込み。そして正明発案のBOXが加わった。なんでもこのBOXが意外と手間がかかるらしい。値段をもっと上げたほうが良かったと後悔したけど後の祭り。
何事も初めては上手くいかない事の方が多いけれど、それをちゃんと覚えておいて次回改善する作業が大事だ。
去年の苦し紛れのオードブルが好評だったせいで、昨年以上のオーダー数になってしまったから二人の作業は猛烈に増えたわけだ。
こちら側でサポートできることはするけれど、包丁握れるわけじゃない。
じゃあホールが暇かと聞かれれば力強く「NO」と言いたい。はい、忙しいです。
客が切れることが無いし、予約のコースやパーティープランはある意味楽なほうで、単品を頼む客が増えると、厨房もホールもてんてこ舞いだ。
普段あまりでないスパークリングワインのオーダーが増えたりする。正明は一度コルクを壁に吹っ飛ばしてから、スパークリング恐怖症になってしまった。
トアがさりげなくフォローしているけど、そういうちょっとしたロスが積み重なると後々に響くというものだ。
「バックヤードに籠って練習させようかな。」
「サトルに任せる。今は余裕がない。あとコルク抜きってもボトルあけるんだろ?それは自腹でよろしく。」
ミネは俺のほうを見ようともしないで、あっさり返事をして作業に戻る。
12月にはいってからずっとこんな感じ。クリスマスだけじゃなくて気の早いお客さんは11月の末から忘年会を入れてくる。
コース、パーティープラン、普通のメニュー、本日のおすすめ、オードブル、BOX、クリスマスランチ、クリスマスディナー・・・・。
厨房チームが無口になるのはしょうがないというものだ。
「去年はどうしてたの?」
目をつむってソファに埋まるようにもたれている衛に聞いてみた。
さっきからいっこうに返事が返ってこないからだ!
「こんなに人がこなかったよ。」
はあ・・そうですか。
「昨日ミネ、サウナにいったんだってさ。なんかスッキリしたみたいだよ。明日終わったら行ってみる?」
「理とサウナ?サウナは裸だぞ?」
「当たり前じゃない。」
「赤い顔して汗だくの姿を見たら、変な時に変なことになったら困る。疲れ何とか状態だし。
村崎と行けても、理とは無理だ・・・悪い。」
あまりにも具体的ですね・・・。
でもそう言われると、なんとなく・・・俺も・・な気分だ。「疲れ何とか状態」である実感もあるし、サウナの中でお互いドキドキするなんて宜しくない。全然リラックスタイムでもなんでもない!
「サウナはやめておく。」
「ん・・・だな。」
「風呂入る?」
「なんかもう・・・寝る。明日眠気覚ましにシャワー浴びればいい。」
「林檎チューハイ飲む?」
「んん~~~、やめておく。なんか変な所に入りそう。酒はいいや。」
「水もってこようか。」
「ありがと。」
ヨッコラショと立ち上がり冷蔵庫の前まで歩きながら、こんな衛は初めて見ることに気が付いた。同じ会社の時だって、いつも颯爽として病気や疲れに無縁だった。12月の飲み会連発の時期だって俺よりシャッキリしていたし。
相当お疲れなんだな。
水を取り出して、いつも衛がしてくれるようにキャップをひねってから渡す。
3口ばかり飲んだあとペットボトルは俺のお腹あたりに押し付けられた。
「もういい、ありがと。」
俺は思い切り衛の両腕を引っ張った。
「おい、なに。」
「もう寝よう。さっさと寝よう。明日に備えよう。」
もう一度引っ張ると、ノロノロと立ち上がる衛を抱えるようにしてベッドに運ぶ。ちょっと胸を押せば簡単に仰向けに転がった。
「はい、ばんざーい。」
「なんで?」
「指動かすのもキツそうだから脱がしてやる。言っておくが変な意味じゃない。」
衛は何も言わずに素直に万歳ポーズをした。俺はさくさく服を脱がし、ボトムを引っこ抜き、靴下を脱がせた。ちょっと迷ったがパンツもおろす。
「ちょっ!なに。」
「他意はない。」
俺もぱっぱと脱いでマッパになると上掛けをずらして衛を転がす。
そしていつもとは逆のポジションをとった。
俺が衛を背中から抱きしめる。
「背中があったかいと力が抜けるだろ?」
「ん・・・。」
「お前疲れているし、今日はクリスマスだから、このくらいの甘やかしはいいと思うんだ。」
「理・・・。」
「なに?」
「ありがとう・・・メリークリスマス。」
俺達は互いの呼吸に耳をすませながら眠りが来るのを待った。
互いの体温が二人の疲れを癒す。
もうちょっとだから頑張ろう。頑張れるさ、俺達なら。
メリークリスマス、衛
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