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december.30.2015 オードブル大作戦、2015
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29日のランチを終えて、年内の営業は終了。
あくまでも営業だけだ。
30日は朝から明日引き渡しになるオードブルにとりかかる。
全部で50台・・・。
5人盛りに入る唐揚げは10個、鶏肉のカットだけで500個必要になる。全7品のを全部合わせると、いったい何個になるのか・・・。
去年のオードブルの時はそんなこと考えなかったけれど、目の前の殺気立つ二人を見ると現実にアゴが落ちそうになる。
トアはオードブルの蓋にシールを貼る役目。お品書き、年始の営業開始日、新年会プランのチラシ。
それとオーナー制度のお知らせを入れることにした。
どれだけ増えてくれるかわからないけれど、たぶん何かしらの結果は残せる、そんな気がしている。
ハルはセンス(?)を買われて、ホール部隊から唯一厨房チームに抜擢された。
今は水をはったでかいボールの前でミニトマトの選別とヘタとりを真剣にやっている。こんな数のトマトみたことないよ・・・。
「ハル、それ終わったら、トマトはおかあげしといて。んでその次はリオナソーセージでポテサラ巻きね。見本いっこ作ったから、それと同じに250個プラス予備が10。」
「はい!おかあげ、リード敷いたほうがいいですか?網目がトマトについたらまずいですよね!」
「合格!」
おかあげ?
りおなそーせーじ?
俺はPCたたいて宣材つくることはできるが、こっちの部隊に編入するのはまず無理だ・・・。
それぞれがもくもくと働き時間は13:00を回った。
朝の8:00からずっと作業をしているし、そろそろ休憩と何かお腹にいれなくちゃ。
「サトル~悪いけど、弁当とかカップメンでもいいし、適当にみつくろって買ってきてくんない?
何か作ってる場合じゃないのよ。」
手をいっさい止めることなくミネが声を張り上げる。
まあ、そうだよね。これで何か食べるものがでてきたら驚きだよ。
「ミネさん!僕簡単な食べる物作ってきたんで、それつまみませんか?」
「ハル・・・?」
正明は冷蔵庫からビニール袋を取り出した。
ラップに包んであるものをテキパキと皿に並べはじめる。
「理さん、コーヒーお願いしていいですか?」
「お、おう。」
正明はホールの一番大きいテーブルに皿を並べて、タッパーに入っている何かを小ぶりの器に盛り込んだ。俺はコーヒーをそれぞれのマグに注ぐ・・・あれ、ミネのマグ変わってるし。
皿にのっているのはフランスパン。縦に2列切れ目がはいって、トマトやレタス、白いのはツナマヨかな?それがたっぷり挟みこんである。
一人分が短めのフランスパン半分くらいの長さ、これは食べごたえがありそう。
器に盛られたのはサラダ?コールスローかな、ケンタッキー以外で食べたことないし、衛が作ってくれたことのないメニューだ・・・。
「ミネさん、飯塚さん、食べましょう~。」
正明の一声で厨房チームがホールにでてきた。
ミネのびっくり顔、久しぶりにみたかもしれない。
「ハル?これ・・・。」
「朝、作りました。パクパク食べられるものがいいと思って。おにぎりより野菜が食べられます。かわいいサンドイッチ的なのは無理なので、豪快路線を目指しました。」
「イヤ・・予想外でさ。この間から俺を感動させまくりだね、ハル。」
感動?二人に何か変化でもあったのだろうか。
「それとこれ領収書です。パンとツナ缶、あとトマトとレタスにカット野菜の分です。」
「いつの間にこんなデキル子になったんだ!ハル!」
ミネは正明をギュウギュウしながら嬉しそうに笑っている。正明はそこから逃れようとモガイているのだが、ミネはまったく意に介せずだ。
ほっておこう・・・。
豪快路線のパンはすこぶる旨かった。
「そのマグ、買ったのか?」
ミネに聞いてみる。
ニヘラっと笑みを浮かべて、遠くを見るように視線を浮かせた。
「これさ、クリスマスプレゼント、ハルがくれた。」
「へええ。」
「俺のマグ、口のところチップしててさ。買わなくちゃって思ってたから嬉しかった。」
「そっか。」
「あと嬉しい言葉もくれた。なんか俺本当に嬉しくってさ。気持ちが軽くなった。」
「正明は人を持ち上げる天才なんだよ。」
「天才?」
「そ、俺さ、衛が好きだって気が付いて悩んでいた時にね、同性を好きになるって性別を超えて相手の人間性を見極めて好きになれる「特権階級」なんですよ!って言ってくれて、救われた。」
「特権階級・・・か。」
魔法の言葉だった。それを素直に信じられたからこそ今の俺がいる。
衛の隣にいることができるのも、正明のおかげかもしれない。
「衛が仕事辞めることが決まって、でも俺はまだ会社にいなくちゃいけないって、それが不安だったり割り切れなかったりした時、正明が俺達を呼び出して、誕生日プレゼントをくれた。」
「・・・へえ。」
「お揃いの万年筆。予想してなかったら、嬉しいを通り越しちゃって変な気分だったな。そこでも正明はナイスな言葉をくれた。戦場が違っても同志は同志ですって。さすが国文科だよ、同じ場所で働けないことを気に病んでいた俺はガツンと殴られたような気がしたね。
ほんと、正明はサイコーなんだ。」
「わかるよ・・・俺も最高のプレゼントに思えた。」
「大事にしてやろうな。」
「・・・・うん。」
いつもの軽妙さが鳴りを潜め、穏やかなミネがそこに居た。
「優しい気持ち」それがもし形になっているとしたら、今のミネがそうなのかもしれない。
とても魅力的で惹きこまれる、静かで綺麗な微笑み。
正明?お前はミネに何を言ったのかな・・・。
ミネのこんな顔を見て、お前は大丈夫なのかな・・・。
心の底に生まれる不安。
俺はそれを見ないふりをした。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
今回が年内最後の更新になります。
連載開始から今日まで、おつきあいくださりましてありがとうございます。
私もSABUROと同じ状況のためか「みなさん、よいお年を!」的な内容にならず申し訳ありません
オードブル139人分仕上げて引き渡すまで気が抜けない。
ミネと衛!「助」求む!(スケ言います。他のお店に入る事)
元旦にあげるエピソードはめでたくいきたいと思います。
皆様の一年がよりよいもになりますように!
私はもうひと踏ん張りいたしま~~す。
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