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january.26.2016 ドキドキが止らない!
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「2月の半ばから末くらいに引っ越ししたいと思うのですが・・・。」
ミネさんはマグをニギニギしながら湯気をたてているコーヒーを覗きこんでいた。何か考え中みたいだったけど、向かいに座って言ってみた。
こういうのって言葉にしないと、ズルズル先延ばしにしちゃいそうだったので、思い切りました。
たぶんトアさんのお家に行って楽しいお休みになったからですね。
トアさんは大歓迎してくれて、二人で一緒にスーパーにでかけて買い物をしました。僕は野菜コーナーから店内を回るのに、トアさんは真逆で何だかおかしかったです。売り場めぐりにも違いがあるんですね。トマトクリームのショートパスタにはまっているとかで、それをご馳走してくれました。でもショートパスタを選んだ基準が、「フォークで刺せるので、字幕を見落とすことがありません!」というのがトアさんらしい。ちょっとエッヘンな顔をしていました。どこまでもエンタメ精神。僕はやっぱりまだまだです。
「ほう、決めたの。」
「ええ・・まあ。はっきりさせないとミネさんにもご迷惑がかかると思うので。」
「まあ、迷惑ってことはないけどね。この間の休みでハルの部屋の準備は万端だったりする。俺からの引っ越し祝いも今月中に届くし問題なし。」
「引っ越し祝い・・・ですか。」
「でも・・・ちょっと俺のためでもあったりするから、気にすんな。」
ミネさんはニヘラと笑った。格安家賃と食費だけでも恐縮なのに、そこに引っ越し祝いなんて、僕はどうしたらいいのでしょうか。
「クリスマスまで、まだ結構あるし。このお返しと思ってくれればいいよ。」
ミネさんはマグカップをちょっとだけ持ち上げた。ボタンをはずして緩んだ喉元とパイピングされた白衣になんだか少しドキっとしちゃって、僕はあわててコーヒーを飲んだ。
「どうした?」
「あ~~いや。その・・・ミネさん、そのマグの色のシャツとか似合いそうです。」
よくわからない返事をしながら心の中で深呼吸。フーフーフー。
「そっかな。綺麗な色だよな。この店の色で昔から馴染みもあるし。オヤジから変わる時に白衣じゃなくてこういう色にしようかなってちょっと考えた。」
オリーブグリーンに黒いエプロン・・・ですか。なんだかエプロンのエロ度が増すような気がするのは僕だけかな。いけません!いけません!こういう思考から抜け出さなくちゃ!フーフーフー。
「でもオヤジが言うにはさ、疲れたりあんま調子よくない時にこういう色を着ていると顔映りが悪いって。お客さんに心配されたら本末転倒じゃないか。白は光を反射するからその点でも助かるぞってね。そう言われたそんな気がするし、3星レストランのシェフなわけじゃないから、やっぱりオーソドックスが一番かなって。」
「あ~それでパイピングだけこの色なんですね。」
「そういうこと~。」
僕のあげたマグがピタリとはまっているみたいで嬉しくなる。ミネさん、家ではどんなマグ使っているのかな。僕のマグ・・・そろそろ買い換えたほうがいいかもしれない。あと食器といっても僅かなもんだし、ほぼ100均の商品だ。あれを持っていくの?それどうなのかな。新しいの買う?僕のだけ?
・・・まさかお揃い?いやいやいやいいやいや!!!!違いますよ!皿とかそういうのは5枚とかでセットじゃないですか!家族は皆同じ皿ですよね?それお揃いとは違いますよね?違います!フーフーフー。
ただコーヒー飲んでいるだけなのに、なんでこうなるんですか!陰謀だ!
でも・・・シャワーから出てきてタオル巻いただけなミネさん、冷蔵庫の前でペットボトルをラッパ飲み姿を披露。なんてことになったら、僕の口から心臓が飛び出るんじゃないだろうか。
ソファで転がって寝てるミネさんにタオルケットとかかけちゃう?寝顔をじっとみつめちゃったりする?
うわ~~だめです。だめです!これ以上はだめです。フーフーフー。
「なに百面相ハルちゃんしてんだよ。面白いのな、青くなったり赤くなったり。」
ムギュウと鼻のてっぺんを摘ままれる。お願いです・・・今は触らないでください!デコピンですら嬉しいとか思ってしまいそうな、ダメだめモードなんですから。
「風呂上りには服着てくださいね・・・。」
「はあ?」
うが!なんてことを・・・心の声がそのままに!
「まあな。それは大丈夫だ。うちは母ちゃんしか女子がいないだろ?だからマッパでウロウロとかはなかったわけよ。というか絶対ダメって言われてきたからね。そういやハルのとこも広美さんだけだね、女子。」
「まあ、そうですね。」
「やっぱそうだったの?」
「う~ん。弟はかなり無頓着でしたよ。でもまあ僕がちょっと人と違うというか・・・を自覚してからはちゃんと身支度するようになって、なんとなく弟もそれにつられてな事になったのかな。」
「じゃあ問題ないってことだ。」
こういう変なエリアから脱出しなければ!
「そういやミネさんはスーパーどっちまわりですか?」
「どっちまわり?なにそれ。」
「僕は野菜のほうから行きます。でもトアさん逆だったんですよ。最期に野菜。」
「まじか!」
「まじです。」
フーフーフー。少し落ち着いたかも。
「俺も野菜~。だって献立の基本は野菜からだろ。いきなり惣菜とか、パンはないな。」
「ですよね~。」
「きっとハルの料理の腕も上がっちゃうな。テーブルにデンと座って、オラオラ~めしまだか!なんか許さん。お手伝いちゃんとすること。」
「当たり前です!頑張ります!」
「お~頼もしいな。」
ミネさんは残りのコーヒーを飲み干した。僕のコーヒーももう少しだ。夜の営業に備えて、動き出すまであと少し。
ミネさんは頬杖をしながら僕を見ている。その顔・・・絶対なにか企んでいる・・・今度はナンデスカ?
「言わないでおこうとおもったんだけど、言っちゃおうかな。」
「な・・・にをですか。」
ミネさんの左手がヌっとのびてきて僕のほっぺたをムギュムギュする。
駄目ですって!もお!!やめてぇ~。
「引っ越し祝いね、ベッドなんだ。」
「は?ベッド・・・ですか?」
「そ、畳ベッド。俺の一目ぼれ、もう畳ベッドに夢中。」
「はあ・・・。」
見惚れるような悪戯笑顔を浮かべたミネさん。格好いいのに可愛いい、狡そうなのに優しそう。
うううう・・・心臓のあたりがキュウとなった。
「俺も使うから、そのベッド。」
ニヘラっと笑ってミネさんは僕の頭をポンポンして厨房にいってしまった。
僕は・・・もうどうしていいやらで、ハーハーハーってマラソン走った人みたいな呼吸状態です。
俺も使うって・・・どういう意味ですか?
ベッドって寝るもので、使うって何?
どうやって使うの?誰と使うの?えええ???ええええ???うわああああああ!!!
僕のフーフーフーはそれからしばらく続き、お客さんを迎えるころにはすでに疲れてしまいました。
こんなんで大丈夫なんだろうか・・・。
僕、ミネさんとルームシェアとか村崎寮でもなんでもいいのですか、一緒に暮らせる?
どうしよう、事の重大さを実感してしまいました。
皆さん、僕・・・大丈夫ですか・・・ね?大丈夫だって言ってくれませんか?
お願いします!
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