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january.29.2016 すずさんのデート
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正月休みボケはすっかり抜けた。とはいってもボケるほどの休みの長さじゃないからボケようもない。
年が変わって、また一年が始まるっていう感覚?それが薄れて、今年といえば「2016年」に完全に切り替わった感じかな。
年が変わっても仕事は変わらずに存在していて、やっつけなければ増えるばかり。
給料もらうのって大変よね~としみじみ言ったら章吾に笑われた。「いい歳して何言ってるんだか。」と切り返されて、世間ではいい歳なんだな私・・・そんなことに気がついたり。38歳くらいから私は歳をとっていない。あくまでも気持ちの上で。そりゃあ38歳の時より現在のスペックは劣化しているかもしれない。でも経験値や思考力は日々増えているからプラマイゼロ。
そんなふうに色々な事を切り替えないと悩みばかりが増えていくだけだ。
アンチエイジング?
いくらお金を掛けたら老化に勝てるのだろうか?私は何をしたって勝てないと思っているから必要以上のことはしない。気に入った化粧水と乳液があればいい。シミや皺ができるのはどうしようもないことだ。DNAに刻まれた法則から人間は逃れることができないのにジタバタしてもしょうがない。
清潔さと、ちょっと気を使ったお洒落と薄化粧。これが私の信条。余計なものはいらない。
そんなことを考えながら地下街を歩く。ツルツルの道路より、ずっと歩きやすいから冬の地下街は人が多い。私もその中の一人だったりするから、皆同じようなことを考えて歩いているのかも。
早く春にならないかな~なんて思い浮かべたりして。・・・あ、でもその前に「雪まつり」があった。
あの時期は人が多いから家と会社の往復しかしない。
冬を知らない観光客がたっぷりいるから地元民はひっそり。これヨサコイ祭りも同じよね。
ジャケットのポケットの中でスマホがブルブル震えた。まさか・・・また予定変更かな。
壁際によってメールをチェック。やっぱり章吾だ。
『予定通り大丈夫。店に行ってて。』
よかった~。また一人で行く羽目になるかとドキドキしちゃった。今日はなんだかすんなり物事がすすんで19:00には上がれそうだったからダメモトで食事に誘ったら章吾もOKだった。
年に何回かこういうタイミングの日がある。その時は迷わず街にでて、食事を楽しみ仕事を忘れて、また次の日からのエネルギーに変えることが二人の決まりごと。
もちろん行き先は『SABURO』
今年初めてだったりする。テイクアウトは週1くらいしているけれど、やっぱり店の雰囲気を楽しむ機会は捨てがたい。
4丁目のエスカレーターをあがって地上へ。
相変わらず狸小路は買い物にやる気満々の外国の方が一杯。当たり前に使っている日本製品に時々感謝しなくちゃね。
あともう少し歩けば、お気に入りの場所につく。
美味しい食事と息抜き。今夜はいい夜になりそうだわ。
◆◇◆
「ん~~おいしい!」
今年初めてのご褒美ということで奮発したのがボタンエビのアヒージョ。これがなんとも特大サイズ。一本から好きな数を選べるのが嬉しい。私達は他のものが食べられなくなるから控えめに2本ずつにしたけど、これ大正解。まさかの特大サイズに驚き。
とんでもなくいい香りをさせてこの料理を運んできたのはトア君だ。テーブルの間をすり抜ける間、お客さんが皿に注目していた。なんかちょっぴり優越感があったりして。
「刺身じゃなくても美味しいんだな。」
「ホントよね~。」
二人ともオイルで指をギラギラさせながら海老にかぶりつく。蟹とか海老って剥いて食べるのが美味しい。食べごたえのある海老はプリプリだ。あ~北海道に生まれてよかった。
「これ本物のボタン海老だな。」
「え?偽物があるの?」
章吾は舐める寸前で指をナプキンで拭った。いいのに舐めちゃっても。私の考えていることがわかったのか照れくさそうに苦笑い。
「さすがにな・・・家なら完全に舐めてた。」
「ふふふ。やっても誰も何も言わないと思うよ?」
「まあ、行儀がいいとはいえないし。あ~ボタン海老。西中洲の店で刺身の盛り合わせを頼んだら、知らない海老があって聞いたらボタン海老ですって言われてね。」
「西中洲?あ~福岡か。」
「そうそう。でもあきらかに頭が細いし、頭にあるこのトゲがないんだよ。あと白い縞が太くて濃かった。」
章吾は殻入れの皿に転がっているボタン海老の頭のトゲを突っついた。
「北海道ではこれボタン海老とは言わないですよって一応言ったけど、お店の人は変な顔してたな。もしかしたら福岡ではあれがボタン海老として認知されているのかもしれない。」
「え~なんだか嫌だな、それ。」
「このメニュー、レギュラー化してくれないかな。福岡の人間が出張できたら、ここに連れて来たい。これがボタン海老だぞ!って。」
「そうしたほうがいい。絶対いい!」
ちょうど傍に来たハル君を呼び止める。
「実巳くんに絶品!って言っておいて。あとオイルがもったいないのでフォカッチャを追加お願い。章吾も食べる?」
コクコク頷く顔。美味しい物食べると幸せ顔になるよね。特に章吾はそうだったりする。
「ハル君2つお願いします。」
「はい、少々お待ちください。」
厨房の方に向かったハル君。くるっと振り返ってトコトコ戻ってきた。
「すずさん、今年もよろしくお願いします。」
ペコリと頭を下げて行ってしまった。くううう~かわいい・・・今年もかわいい!
「ここにくると直美はずっと笑っているな。」
「章吾こそ、しあわせ~~って顔しているよ?」
「さんざん仕事でしかめっ面しているんだ。やっぱり幸せな顔に戻る時間が必要だろう?」
「そういうこと。今日はタイミングが合ってよかった。」
追加のフォカッチャを食べながら、今日はパスタまで行きつけるだろうか?なんて考えてしまう。サラダとトロトロスペアリブのワイン煮込みを食べた。そのあとにボタン海老・・・パスタまで食べたらやりすぎかな。
「こんばんは。」
テーブルの横に立つのは実巳君。ポンとテーブルにハーフサイズのワインを置く。
「こんばんは~。今日も最高に美味しいわ!」
「そう言ってくれると一番嬉しかったりする。今日は、じゃなくて「今日も」だもんね、最高です。
これね、試飲してくれって酒屋さんがくれたんです。だからお裾分け。」
「えええ~いいの?」
「いいの、いいの。すずさんのおかげでテイクアウトのお客さん増えてね、お礼の品としては全然たりないくらい。お世話になってま~す。」
私がオフィスでアツアツのパニーニを食べる時に漂ういい香り。ビヨ~ンと伸びるトロトロチーズ。ハフハフ言わせて食べている私を見詰める目。予想どおり「どこで買えるの?」という質問責めに合う事になった。教えたくないけど仕方がない。伝染病のようにパニーニ熱がうつりまくって、同じフロアの他社さんにまで波及している。ま、それだけ美味しいってこと。
向かいの顔がしかめっ面だ。何を悩んでいるのやら。
「どうしたの章吾。」
「あ・・・ペペロンチーノが食べたいけど、食べきる自信がない。」
「同じく私も~でも食べたい気持ちはあるのよ。」
実巳君はワインを私達のグラスに注ぎながらあっさり言った。
「んじゃ、いつもの8割くらいの量でつくりましょうか。さすがにハーフサイズだと一人25g分にしかならないし、それじゃ足りないでしょ?」
あ~神様、実巳君。
「ペペロンチーノ作ってきま~す。」
実巳君は手を振りながら厨房に戻って行った。
「彼はいいよね。雰囲気もそうだけど、いつもドンピシャな配慮。気持ちがいい。」
「だからまた来ようって思っちゃう。」
頂いたワインで乾杯しなおす。チリーンとなるワイングラスの響きがいい。
章吾はとっても優しい顔をして私の名前を呼んだ。
「直美。」
「なに?」
「今年も俺達のペースで暮らせるといいな。」
「・・・そう・・ね。」
ちょっと不意打ちじゃない?ドキドキしちゃう。
「出張先や接待で食べる豪勢な料理より、やっぱり直美とここでとる食事が俺は一番好きだ。
また来ような。」
「もう・・・なによ。急に。」
「ペペロンチーノがくるまでの暇つぶしかな?」
ニヤリと笑う顔にドキリ。まったくもお。
「仕事を頑張って、仲良く暮らす、時々こうやってデートをする。そういう当たり前の毎日が一番幸せだってこと。めったに言わないから、ちゃんと覚えておくこと。」
畳み掛けないで!
「お邪魔だったかな?すずさん、かわいい~顔まっか!」
ニヘラっと笑った実巳君にばっちり照れ顔をみられてしまい、さらに赤面が増したように思う。
「ほい、8割ペペロン。ではごゆっくり~。」
ちょっとからかい顔の実巳君はあっさり振り向いて行ってしまった。なんだか今日は嬉しいやら恥ずかしいで大変。
「よし、食べよう。うまそうだ。」
「うん!」
そうだね、章吾。当たり前の毎日、仕事を頑張る。そして私たちのペースで毎日を暮らす。
きっとそれが幸せなんだね。
章吾を選んでよかった。
私のペースで、そうだな・・・少しだけ去年より優しくてあげようかな?ふふふ・・・。
ここにくると素直になれるのよね。
そして欲しい甘い言葉も言ってもらえる。
やっぱり、ここは外せない。
章吾と同じくらいに、私の大事な場所。
大事な人と大事な場所に来る。これって最高に気持ちがよくて嬉しいことなのよね。
嬉しい言葉を貰った。
私なりに・・・か。
そうだね、私達のペースに思いやりを重ねようかな。
ちょっと豊かな年になるかもね。
毎年。少しずつ・・・ね。
うん。
少しずつ。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
毎日頑張っている皆さんに!
お母さんや奥さん、仕事に恋、趣味に、そしてBL(笑)
頑張る毎日のアチコチに転がっている幸せに時折目をを向けてほしいと願って、すずさんに登場してもらいました。BL度ゼロですが・・・すずさんの回はいつもそうだったりしますねw
今年が始まったと思いきや、もう一か月が終わってしまいます。年々早くなる時間の経過。
でもすずさんのようにジタバタしないで歳を重ねるほうが時間を楽しめる、そんな気持ちを込めました。
一週間お疲れ様です。お休みでエネルギー充填してください。
私は仕事ですが・・・w
お仕事の皆さんも、次の休みまで、もうひと踏ん張り!
私も更新頑張りま~す。
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