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February.6.2016 バカップルな朝
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「おはよ。」
腕に力をこめてギュウと抱きしめる。とっくに目覚めているのもいつものこと。何事か考えたり、俺の腕を触ったりするのを眺めて楽しむ一日の始まり。
「疲れた・・・ちょっとまだ疲れてる。」
そう、俺達は疲れている。たぶんSABUROのスタッフ全員が疲れているはずだ。のほほんとしている高村さん以外全員。でもあの人のことだ、イベント事だから何か企んで悪い遊びをしているかもしれない。
毎年やってくるこの季節、「雪まつり」
世界各国から日本全国から人が札幌の街にあふれかえる祭りだ。200万人以上の来場者が訪れる。札幌の人口と同じだけの観光客。ホテルはハイシーズン価格になり、普段なら5000円台のホテルが1万円以上の価格に早変わりだ。
地下街も地上も防寒対策万全の観光客であふれかえる。機能的で着ぶくれしていないのが地元の人間。ハイテンションな観光者に近づかないように速足で歩き、早く終わってくれないかとぼやく。
自慢じゃないが雪まつりに行った事は一度もない。そんな地元人間は俺以外にも結構いる。
「しょうがない。なにせ人だらけだ。ビルの中にある飲食店はともかく、うちみたいな路面店、しかも1階となればどんどん流れ込んでくる。」
「ほんとだよ、ドンドン、どんどん。あ、そうだ、ウェイティングテーブル用のパン。もっと用意しないと駄目だな。オーダー立て込んでいるのにパンとチーズに手間がかかっていたら本末転倒だ。」
「そうするよ。村崎が発注のFAXだしていたし。」
「パンの?」
「そう、パンの。」
理は寝起きが悪いほうじゃない。でも今朝はグズグズと布団の中に潜ったり、顔を出したりして起きだす気配がない。疲れているのは本当らしい。
「ミネが憂鬱になる12月の気持ちがわかるよ。俺は雪まつりが嫌いになりそうだ。」
「暇よりずっといいじゃないか。それに年末ほど気持ち的には追い込まれていないぞ?チーム厨房はわりに明るい。」
「そうだよな~。ハイスピードかつハイテンション。ホール部隊はヘロヘロだっていうのにさ。でもあれだね、THE北海道料理的な店だったら、外国人の対応がでてくるだろうからSABUROでよかった。」
「いざという時のために英語の勉強しておいたほうがいいかもしれないな。」
「いやだ。俺は何語で話しかけられても日本語で押し通す。」
理はまたグズグズと布団の中に潜りこむ。引っ張りだそうとしたら布団の中で俺の手が弾かれた。
どこの子供だ・・・まったく。
「そろそろ起きないと。朝風呂でもするか?身体が温まって疲れがとれるかもしれない。」
「はんた~~い。朝に風呂入ったら怠くなるし。」
「あっそ。」
じゃあ、先にシャワー浴びてしまおうか。起き上がろうとしたときに抱きつかれた。
何がしたいんだ・・・まったく。
「具合悪いのか?おかしいぞ?」
「超絶起きたくない病を発症中。」
よくわからない甘え方だ。この間の時みたいにガッついてみせたり、今みたいに低年齢化したり、とことん飽きさせない男だ。理といると退屈からは無縁だから楽しい。
「俺は起きるよ、仕込みがたっぷりあるからな。」
「ホールだってドリンク関係をちゃんとしないと、大変なんだからな。」
「なんだからなって何だよ。お互い仕事が待っているわけだ。しゃっきり起きて今日を乗り切うぜ。残念ながら祭りは始まったばかりだ。一週間は腹を括って働くしかない。わかった?」
「わかるけど、わかりたくない。衛のバ~カ。」
・・・・・・・・・・・まったく。
理が諦めるまで付き合っていたら二人揃って遅刻する。
電車が遅れていつもより少しだけ遅かった日、村崎は言った。
「おはよう~~さん。あらま、遅刻じゃないけどいつもよりちょい遅めだな。もしや・・・朝から励んでた?ニャハハハ~。」
電車が遅れた事を言えば「わかってるって、冗談にきまってんじゃん。」と返された。冗談でもだ、そういうヒヤカシにあうのは気恥ずかしい。なんというか色々恥ずかしい気分になる。
だから絶対に遅れるわけにはかない、特に俺は。
もうこうなったら強硬手段しかない。
布団を一気に跳ね上げて丸まっている理に馬乗りになる。
「さむ!衛!なにすんだよ!」
「脱がす。」
パジャマのボタンを勢いよくはずす俺に理は焦りだす。
「なに!無理、無理!朝からそんなことしてたら仕事にならんし!疲れが倍増するだけだ!」
「起きたくないといったのは誰だ?俺はバカなんだろ?バカなことをしてしまうんだよ。」
「わかった!わかったって!起きる!起きる!」
理の身体から降りると理はむっくり起き上がった。最初からそうしろってことだ。
さっさとシャワーを浴びてくれ。その間に朝食を作って出掛ける支度をしよう。
理は浴室へ向かった。
いつものようにベットメイクをして、思い切り伸びをする。今日も一日頑張ろう!
「衛。」
バスタオルを握った理が戻ってきた。
「どうした?」
俺の前にくると、そのまま背をむけてうなじを指差す。
「忘れ物、今朝もらってない。」
頭にブワっと血が昇った。ついでに違う所にも血流が・・・。
平常心、平常心。
うなじに唇を押し当てる。ついでに少しだけ舐めてみた。
理はスルっと振り向くとニッコリ笑って俺の股間を握る。ちょっと!ダメだって!
「雪まつり期間、過剰なスキンシップはなしとする。これは自分でどうにかすること!」
ニヤリとしながら色っぽい視線をひと投げして理は浴室に行った。
コノヤロウ・・・仕返しかよ。・・・まったく。
どうするんだ、触られて完全形になってしまったじゃないか。
朝食の用意の前に・・・トイレに・・・行く・・・か。
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