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February.22.2016 赤ちゃん探訪
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「かわいかった。その存在が。でも美人になるのかはさっぱりわからなかった。」
「紗江さんに似ているような気がしたけどな。なんとなく理にも。」
「そっかな?俺と姉ちゃんはそんなに似てないと思うけど。」
当人たちはそう言う事が多い。しかし他人からみたらどうしたって姉弟だろ?なんて思うくらい類似点はある。俺の場合は母親違いになるから、あまり似ていると言われたことがない。両親がうまいことミックスされて出来上がったのが俺。片方違えばその差は歴然だ。
理が女装して、少しキリっとさせたのが紗江さん。理がキリっとしていないわけではない。キリっとしているが・・・なんだろう強さ?レベル?あのキリリ度がなければ兄さんを御しきれないと思う。
「兄さんデレデレしてたな。」
「予想のはるか上をいくデレ度だった。驚いた。本気で舐めそう、いや確実に舐めまわしている。」
会社に行かないお父さんだから長い時間を一緒に過ごせると嬉しそうだった。確かに仕事といっても同じ敷地内。
「専属美容師が兄さんか・・・羨ましいな。」
「そうだけど、反抗期になって「他の美容室に行きたい!」なんて言われて滅茶苦茶へこみそう。」
「言えてる。」
『温泉問題』以降、なんとなくギクシャクしていた俺達だった。目くじらたてるほどの事ではないと言われたところで、俺の目くじらは立ちまくる。村崎の言う「北川の白い腹」とはわけが違うじゃないか。俺は理以外の男の裸を見たいなんて思わない。別に男が好きなわけではなく「武本理」が好きなだけだ。武本が女でも好きになっていただろう。
その相手が村崎の・・・よりによってあの人タラシの・・・・くそう。思い出すだけでモヤモヤする。
同じ部屋に5人で泊まっている時に、村崎がバスタオル巻いただけで出て来るとか、そんなことになったりしないか?なんていう予測にビクっとなったり。とにかく俺は温泉=ナーバスの渦から抜け出せない状態だった。(北川情報の風呂上りはちゃんと身支度する派だという村崎に少し安心した。)
理はいつも通りに過ごしていて、俺がモヤモヤしていることに気が付いていないらしい。もしくは気が付いているけど放置されている気もする。
そんなタイミングだったので、兄さんと紗江さん、そして子供に逢うのはとても息抜きというか気分転換になった。
赤ん坊の名前は「綾子」
理は「今時の名前じゃないよ、なんか古くない?」と大変失礼なことを言っていた。
「私は子供の子がつく名前にずっと憧れてたのよ。今は逆に子がつく名前が少ないと思うしね。」
成程・・・紗江さんに子がつけば紗江子・・・まあ、これも素敵な気がする。ご両親は「子」がないほうが画数的によかったとか、そんなことを言っていた。
「結婚して苗字が変われば「子」があってもなくてもよかったんだが、結婚しても苗字が変わらない現状をみれば正解。」と笑うお父さんは理に少し似ている。お父さん、お母さん、おじさん、おばさん、どれもしっくりこなくて、いっそうのこと名前で呼んだほうがいいのかいつも困る。それに緊張するから、できることなら兄さんの仕事場だけに存在したいというのが正直なところだ。
でも今回は赤ん坊に逢うのが目的だからそういうわけにもいかず、お邪魔することになった。
抱いてみろと言われて落してしまう自分の姿が浮かんで遠慮した。首のすわっていない、あんな小さな生命体を抱いてヨシヨシなんて言えそうにない。指先で触れた肌の柔らかさに驚いて人体の不思議さに感慨深いものがあった。
紗江さんはとても元気だった。両親と旦那が傍にいるから人手が沢山で安心らしい。都会の核家族、旦那が仕事から戻るまでずっと子供と向き合う生活は想像できないが、凄まじく大変で不安じゃないのだろうか。
「子供を一人育てるって・・・大変なんですね。」
なんだかしみじみそう思ったので紗江さんに言ってみると、少し考えたあとニッコリ笑った。
「そうね、大変、でも楽しみ、不安もある、喜びも。全部が詰まっている感じかな。衛君の男前教育はしっかり私のプランに入っているから、最低でも月イチで顔をみせてね。由樹のバカ父っぷりに時々嫌気がさすのよ。」
「溺愛状態ですね。」
「昨日なんかオシメを取り替えている時ね、両足持って何言いだすのかと思いきや。」
「なんです?」
「『おい、綾子のソコ。ちゃんと聞いておきなさい。ここに粗末なものを受け入れるな!』ってね、呪文みたいに繰り返してた。ちょっと怖かったわよ。粗末ってどの程度?バカ父というより、狂っちゃってるかも。」
・・・兄さんらしいエピソードではある・・・あるが、今からそんな心配をしていたら大きくなるまでに心臓が破けてしまうのではないか?
少し心配だったりする。
「ちょっと~なに一人で考えてるんだよ。」
ソファにすわりながら、武本家のことを考えていたのはそれなりの時間だったらしい。心なしか脹れた顔の理が目の前に立っていた。
「あ、悪い。今なにか作るから。腹減っただろ。」
冷蔵庫の中身を思い出しながら立ち上がろうとしたらトンと胸を押され、バランスを崩した俺はソファに転がった。じゃれてる場合じゃない、キッチンに行かせてくれ。
起き上がろうとした俺に馬乗りになり、理は俺をじっと見つめた。
「またくだらないこと考えてたんだろ?」
武本家のことはくだらなくない。それにホンワカ柔らかい雰囲気はささくれた心を癒してくれた。少しくらい噛みしめたっていいだろう。
「あのなあ、そんな深い意味はなかったんだよ。そもそも衛のここがこうなっているから。」
理は俺のセーターをめくり上げ、シャツを引っ張りだして同じようにまくりあげた。なぜか俺だけ腹を出しているという滑稽な状況。
「俺、衛のここ好きなのしってるだろ?このうっすら割れてる腹筋。単純に厨房チームはこうなるのかなって思っただけなのに、グジグジ考えこみやがって。」
「いや・・・それを考えていたわけじゃない。」
「じゃなくても、そうでも、ずっと浮上しないまま俺を放置していたじゃないか。そんなひどく衛がダメージを受けるなんて考えてなくて、それは謝るけどさ。でもなんだよ、そんなに俺の気持ちを疑っているのか?そこんとこはっきりさせようぜ。」
放置していたのは理だろう・・・そう言おうとしてやめた。今はそれを言っちゃいけないタイミングだ。
「疑うというより、唖然としたというか・・・だ。俺は別に男の裸に興味はないし、見たいとも思わない。あくまでも理限定だ。だから温泉の風呂でどんな男を見ようが反応することは絶対にない。でも理の裸を他人が見るのは嫌だから、やっぱり風呂は駄目なわけで。あ・・いや違うなんだっけ?」
「俺だって同じだよ。衛のここと比較してみたいなって思っただけだし。」
理はいきなりかがみこむと、俺の腹をネットリ舐めあげた。
「うわ、ちょっと!」
睨みつけるような視線と肌の上を滑らかに動く赤い舌先は充分に扇情的だ。ズクンとした衝動が背筋を這い上がる。熱い舌先があちこちに触れ、唾液が塗りこまれたあちこちがヒヤリとする。
「さ・・とる。」
理の両手が俺のこめかみのあたりにドンと置かれた。今度は真上から見下ろされる。
「俺が他に気持ちをやることはない。衛もそうであってほしいと思っている。嫉妬してくれるのは嬉しくもあるけど、寂しい気持ちにもなるんだぞ。俺の心変わりを心配しているってことだ。俺がお前を捨ててミネを好きになるかもしれないって考えているってことだ。それは俺が信用されていないってことか?」
「いや・・・違う。でも心配は心配だ。ずっと一緒がいいと願っている。そうであればいいと真剣に思う。でも永遠はないことも知っているから心配になる。
だから話をして一緒にいなくちゃいけない。
確かに、少し俺はこだわりすぎていたかもしれない。でも俺の心臓を潰すような事や理を失うかもしれないと恐ろしくなるようなことは言わないでくれないか。理の一言で、俺は簡単にポンコツになる。」
「・・・俺だってポンコツになる。衛が一番知ってるくせに。」
ああ、そうだな。
「恋の段階を飛び越えて、俺達は愛を語るレベルにいると錯覚していたのかもしれないな。まだまだ恋が足りないのか、いまだに理を見てハラハラすることもある。大人になっての初恋はそういうものなのかな。」
「大人の初恋?」
「そう。俺はちゃんと恋をしないまま大人になって理に出逢った。俺の初恋はお前だから、制御不可能なんだよ。生活の中心に理を置いて、姿を確認して安心する。俺に恋心を教えたのはお前だ。
だからずっと傍に居る限り、こうやって理を怒らせることになるだろう。
悪いな・・・でも理を好きなことはやめられない。どうにもできないから。」
ふわりと理がおりてきて、俺の身体に重なる。しっかりとした重み。柔らかさのない男の身体。愛おしくて仕方がなく、俺を熱くさせる男。
「惚れ直した・・・晩飯いらない。ベッドにGO。」
柔らかいキスを受け取って、抱きしめることで返す。
「明日仕事だぞ。」
「いい、喧嘩してないけど仲直りのセックスをする。お互いヤキモキしたから埋め合わせが必要だ。
一番シンプルだけど俺達の本質だろ?愛のあるセックス。」
いくら一緒に暮らしていても言わなければ伝わらないことがある。
言われて初めて気が付くこともある。
そうやって言葉を重ねて、互いの重みで愛情を実感しながら少しずつ前に進む。
横にいる存在に優しい眼差しをおとし続けよう。
一緒にいられるように・・・
ずっと一緒にいられるように・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
喧嘩させてみようかと思ったのですが、喧嘩までヒートアップできなかったです。
ちょっとした波風程度。そして理の男前が起動するパターンに収まってしまった。
大人の初恋、恋心。
衛は恥かしくなくよく言えるといつも感心します。
私ですか?好きもろくに言わず、愛しているなんぞ言ったこともありませんからね。
「あなたに恋しています。」
うぐっっ
その場で心臓発作を起こして俊己さんの所にいってしまうと思います(笑)
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