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February.29.2016 ハルの引っ越し記念日
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「なんだか妙に落ち着く家ですね。」
トアさんがボソリと呟いて、僕は激しく同意しました。そうなんです、実家よりも安心感があるというか、なんというか。この村崎宅はまさにアットホームな雰囲気なのです。ミネさんしか住んでいないというのに不思議です。
僕に用意されていた部屋にはお祝い畳ベッドが装備されていました。(俺も使うって・・・どう使うんだろう・・・。もうゴロンしたって言ってましたよね。)
建てつけのクローゼットがあるし、本を置く棚さえあれば何の問題もなく住めそうです。
その部屋にダンボールが続々と運ばれて、積み重なっていきます。
本当に引っ越ししたんだな~と実感。本日より村崎寮の住人です!
ミネさんのマンションは飯塚さんの所より少しだけ北で少しだけ東にあります。近くに東急ストアがあって
東屯田通りという昔ながらの商店街にもすぐの距離。買い物に不便はありません。休みの日に商店街の探検をしようと決めました。
荷さばきは明日以降です。理さんの指令でつめこんだボストンバックの中身さえあれば、とりあえず暮らせるのです。さすがです!僕なら全部つめこんでしまって、パンツを探すためにダンボールを次々開けることになり、この部屋が凄まじいことになっていたことでしょう。
「ハルさんテレビはないのですね。ということはDVDは無理?」
「いえいえ。PCあるから問題ないですよ。」
トアさんは顔をしかめた。ええと、ダメなんですかね?
「映画は大画面です!ついでに部屋は真っ暗にして大音量が必須!チマチマとPCの画面で見たら面白さは9割減です。是非リビングで見てください。おお~ということはミネさんと一緒に見るということですか?そうなると僕のセレクトにも力が入りますね。おおお~武者震い的な興奮です。」
おお~おお~言ってるし。
そんなことをしていたらドアにノック音。
「はいるよ~。」
「はい、どうぞ。」
ミネさんはエプロンをしていて(やはり腰から下のです)ほんわりいい匂いを一緒に連れてきた。
何をつくっているのですか?絶対美味しいはず!なんか店の賄とまた違う美味しさがありそうじゃないですか?いや~楽しみ。
「これ、入寮に際しての決まりごと。読んどいてね。」
A4サイズの白い紙が一枚。ヒラヒラさせながら渡してくれました。
そこにはミネさんの手書きで4項目が大きく書かれています。
「もうすぐメシだから二人ともリビングにおいで。」
ミネさんはそう言って部屋から出て行った。
「へえ、なんて書いてあります?」
興味しんしんのトアさんと仲良く並んで、項目を黙読。
1. 冷蔵庫の中身は二人のもの。プリンに名前書くとかナシ。自分が美味しいと思う物は2個買うべし
2. 置いてある物はあった場所に戻す。
3. 炊事担当は俺、それ以外は気が付いた人が率先してやりましょう。
4. 彼女彼氏の持ち込みは禁止。ラブホにいきなさい。
「ぶっ」
トアさんが噴きだす。まあ、わかります。特に4がね・・・ラブホじゃないと駄目なのですか?と突っ込みたくなりますが、じゃあどこでするんだよ?と聞かれれば藪蛇です・・・。
「いいですね~。毎日ミネさんの手料理ですか?毎食毎食プロの味?この先苦労しそうですね、ハルさん。」
「どうしてですか?」
「ミネさんが結婚したら同居は無理でしょう?そうなったら自分で作るか、ハルさんの恋人が作ることになりますよね。プロには敵わないですよ、それでミネ飯が恋しくなっちゃいそうです。」
「従業員でいれば賄でミネ飯食べられます!」
「まあ、そうですけどね。」
僕はトアさんの言ったことを頭から必死で追い払っていた。結婚したら・・・その言葉を。
お願いだから言葉にしないで!僕の心臓あたりがキリキリしますが、こんなことはわかりきっていた事です。次のクリスマス、プレゼントくれるって約束したし・・・それくらいまでは大丈夫だと思いたい。
スピード結婚とか・・・ないことを祈ります。
トアさんは僕の心を抉ったなんて思ってもみないからニコニコしながら、村崎寮規約をダンボールの上に置いた。
「リビングいきましょうか。いい匂いですね。」
「ですね。」
引っ越し記念を祝ってくれる理さん達に申し訳ないから、ちゃんと笑顔をつくれるようにこっそり深呼吸をした。
トアさんが部屋をでるために背を向けてから。
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