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March.20.2016 オーヴェルジュ その1
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今日は朝からスタッフ全員が浮き足立っている。まあ、仕方がないだろう。なにせ一番浮かれているのが村崎。皆で出かけることを誰よりも楽しみにしていたようだ。
ずっと店と家の往復の生活を続けていた村崎にとって、どこかに出かけるという特別感は俺達の比ではないのだろう。
自営で特に飲食関係、所謂「水商売」というものは本当に水もので、人の動きを読もうとしても一定の法則があるわけではない。去年の今頃と今年が同じ数字になるか?そうならないのが現実だ。
1年のだいたいの動きはゆるやかに一致するものの、その年で全然違うことのほうが多い。
だから飲食店の場合、1日休めば売上が立たない。利益が目減りすることを意味するから、少々無理をしてでも開けてしまう。人が来るとわかっているのに閉めるという選択肢はない。だから雪まつりの時のようにぶっ通しで勤務するはめになるわけだ。
日曜日のランチは穏やかに進んだ。暇すぎず、忙しすぎず。それに今日はお楽しみが待っているから笑顔が自然にでてくるようだ。ホールの3人の振りまく笑顔はお客達の表情を柔らかくしている。
チーム厨房はにやけている暇がないのでひたすら鍋を振り、皿の上に料理を整えることを続けた。
「今日の賄はどうする?」
村崎になんとなく聞いてみた。遅くても16:00には札幌をでたいところだ。いつものように呑気に賄を食べていたら到着が遅れてしまうだろう。
「ん~車の中で食べられるものにしようかなって。白飯は絶対余るだろ?おにぎりにしちゃって、あとつまめる簡単なものかな。」
今日は村崎の車で移動することになっている。誰か一人は運転手をしなくてはいけないから、やはり簡単にパクつけるものがいいだろう。
「そうそう、サトルに相談しようと思ってたんだけど。俺あっち方面行ったことなくて道全然わからんのよね。」
「一本道で間違いようがない。それに高速を走るから迷うわけがない。」
「ええ~それでもさ、不安じゃん。サトルに運転してもらおうかと。それで飯塚は助手席に座ればいい。」
「なんでだよ。」
「そりゃあ、運転しているサトルにア~ンとかできるの、お前しかいないじゃん。俺がやってもいいけど。」
「・・・。」
「どうする?」
「俺か理が運転する!」
村崎はしてやったりの顔をしながらガッツポーズをしやがった。
完全に作戦負けをくらった俺は正直に理にこの件を話し「お前のその独占欲?どうなってるの。」と言われる羽目になった。
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