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March.20.2016 オーヴェルジュ その2
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「衛、おにぎりもう一個。」
理さんの手が飯塚さんのほうにひょいとのびて、その手のひらにおにぎりが乗っかりました。ラップは半分だけはずされています。御飯が手にくっつくのは嫌ですからね。なんといいますか、至れり尽くせりですよね~羨ましい。
僕とハルさんとミネさんは後部座席に収まっています。勿論ハルさんが真ん中。ミネさんが「一番小さい人間が真ん中っていうのが常識。」と主張したからです。確かに僕が真ん中だと窮屈度が増しますよね。
理さんは快調に高速道路を高速です。110kmを切ることがない・・・。走る棺桶北海道ですから、制限速度100キロの高速を100キロで走る人は少ない。タンクローリーとか軽トラみたいなのはノロノロですが、普通車はバンバンとばします。
「高速って景色つまんないのな。」
ミネさんが窓の外を見ながらそんなことを言いました。
見えるのは反対車線とフェンスだったり、山の中。今は緑もないので、もの悲しい景色しかありません。
「高速降りたら海が見えるよ。」
「え?そうなの?太平洋ってやつか。」
「でもなあ~あんまり綺麗じゃないんだよ。」
「綺麗じゃない?汚れた海ってこと?」
「そうじゃないよ、色が綺麗じゃない。あんまり青くないし、時には茶色だったりする。」
茶色の海って・・・なんですか、それ。
そんなの見たことないですよ・・・。
「サトル、なんで茶色?雨水が大量に流れ込んだってこと?」
「あ~そういう時もあるけど、時期がくると昆布の色になるんだよね。」
「昆布か!そうか~~。あ、じゃあもしかして海産物の店にいったら買える?」
「買い放題だよ。手ごろな500gの梱包がいいんじゃないかな。2000円を切っていたと思うよ。札幌で買うより断然安いはず。」
「帰り店に寄る!」
「武本家御用達の海産物店にご案内します。」
昆布。店で昆布使ってましたっけ?
いや・・・見たことがないですね。実はブロードにいれているとか?SABUROの隠し味?
「ミネさん、実は昆布が隠れアイテムだったのですか?」
「あ?違うよ。自家用。」
「自家用?」
「だって出汁ひくだろう?味噌汁だって煮物だって昆布だしは必須じゃないか。」
「トアさん、ミネさんのお味噌汁美味しいですよ!かつおと昆布だしも勿論ですが、煮干しと昆布だしも捨てがたいのです。」
なんと、味噌汁の具だけではなく出汁にもバリエーションがあるということですか?羨ましすぎです!
そしてそれが毎日ですか?
ミネさん一日のうち何時間料理しているのでしょうか・・・。
「毎日のことだから。昆布はいっぱい欲しいのよ。」
「そして出汁をとったあとの昆布とかつおはふりかけに変身するんですよ!これが美味しい!!」
ふりかけ?丸味屋的なアレですか?
ハルさん、美味しいばっかり言ってますね、羨ましい。
「昆布を細かく切って、カツオにもザクザク包丁を入れる。それをフライパンで炒って酒・醤油・砂糖で味付け、ダメおしにいりゴマをたっぷり入れる。御飯だけじゃなくて麺類でもいけるし、おひたしや冷奴はもちろん納豆に入れても美味しいわけ。出汁取った後でも旨みは充分残っているし、昆布は柔らかくなっているから手を加えやすい。佃煮にしても問題なし。
サトルのところの名産昆布君は、礼文や利尻と違って火が通るのが早くて手軽。食べるにはこっちのほうが断然美味しい。少し出汁が黄色い色になるんだよね。だから高級料亭では使わない。高級さんは利尻や礼文の昆布を使うってわけ。でも家庭なら色より味だよね~。」
「ミネさん・・・和食もいけるのですか。」
「おうよ!大部分は母ちゃん直伝。和食の店はちょろっとしか行かなかったし。」
意外性という飛び道具の塊みたいな人じゃないですか?
ミネさんの底の深さというか厚みというかストック?備蓄?なんでもいいですが・・・理さんのミネ派に大きく同意です。
僕はいささかハルさんが心配です。村崎寮を出る日が来て、ミネ飯(くそう、そのお味噌汁とふりかけが食べたい!)とお別れになったら、どうなってしまうのでしょうか!
ミネ飯依存症から脱却するまで、どれだけの日数を要するのか・・・。
賄をいただくぐらいが丁度いいのかも・・・しれませんね。
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