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March.21.2016 オーヴェルジュ その4
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鳥の声?
明るい光で自然に目が覚めた僕は辺りを見回して、いつもの部屋じゃないことを思い出しました。
大きな窓にみえるのは自然だけ。建物が一切ない景色って・・・いつ見ただろう。忘れてしまうくらいだからずっと前だと思う。
誰がどこで寝るかで、ジャンケンしたり討論をした結果、2階のベッドに理さんと飯塚さんが寝ることになった。
「いやいや、それはどうなの?」というミネさんの意見はもっともです。カップルが旅先で一緒の所で寝るって・・・ね。どうなのかしらんですよね?
しかしここで驚きの発言があったのです。
「別にどこでもいいんだよ、俺は。でもあれだぞ?俺は毎朝ここに衛のキスをもらうわけ。明日ももらうつもりだから。俺達のそんな姿を見たいと言うなら、ここに布団敷いて寝るし。」
そう言いながら自分のウナジを指差す理さん。
僕達3人は固まりました。なんですか、その潔さ!飯塚さんの指輪にチューと同じ状況です。トアさんとミネさんに視線を合わせながら無言の僕達。
「俺達3人はここに布団でいい。サトルと鉄仮面は上のベッドで寝ろ!鉄仮面のチューとかもうやめて~~だよ。指輪でもウナジでも好きなところに噛みつけばいい。」
ミネさんはフロントに布団を所望したあと缶ビールを呷った。
わかりますよ、ミネさん。当人より僕たちの方が恥ずかしくて居たたまれないって不公平ですよね。
結局お二人は2階に移動、僕らはお布団で寝ました。
トアさんは布団にくるまって頭が見えないくらい潜りこんでいます。こういうスタイルで寝るのですね、トアさん。ミネさんは横向きでした。ちょっとだけいいかな・・・。覗き込んだらスヤスヤ眠っていました。
しばしそれを眺めて・・・眺めて。
なんでニヤけちゃうのかな、寝顔って。はぁ~~~。溜息もでちゃいます。
そして僕は確かめたくなったのです、猛烈に。
階段をそろそろと登り、目指すのはベッドのある2階。
メゾネットですけど、完全に密室じゃないですからね。上から下を見下ろせますし、下から上を見たっていいじゃないかな気分。
なんていうのかな・・・二人の幸せそうな姿をみると安心できそうな気がしたのです。同性同士だって幸せになれるっていうのが欲しかった。男女の幸せな姿はテレビや映画、小説の中に沢山溢れているけど、同性のはかなり少ない。そして現実に目にすることはもっと稀です。
だから、いつか僕にも訪れるって信じられるように、理さんたちを見たかった。
そろそろと覗き込むとベッドは1つしか使われていなくて・・・
飯塚さんが背中から理さんをしっかり抱き込んでいました。ああ・・・それでウナジなんですね。どちらともなく目が覚めて、飯塚さんの一日の始まりは理さんのウナジにキスをすることで始まる。
・・・そうなんだ・・・二人はちゃんと一緒。
音をたてないように階段を静かに降りて・・・なんだかジワっと涙が溢れてきました。幸せの形は人それぞれだけど、ちゃんと存在することに安堵したせいかもしれません。
悲しいわけじゃない、嬉しいわけでもない。悔しいとか嫉妬でもない。
ホッとして流れる涙は、なんの証なんだろう。僕にはわかりません。
時計は5:00過ぎ。起きるにはまだ早い。
ミネさんちょっとだけいいですか?もう少しだけホっとしていいですか?
僕は上掛けにくるまった。隣のミネさんの布団と僕の布団は30cmくらいしか離れていない。
上掛けごとコロコロとミネさんのところに転がる。
横向きのミネさんの背中と合わさる僕の背中。上掛け2枚分が僕とミネさんの距離・・・です。
僅かなはずなのに遠い距離。
何分経ったらミネさんの体温を感じることができるかな。
何分経ったら僕の体温を感じてくれるかな。
どちらも安堵をもたらす温かさであってほしい。
僕はそう願って目を閉じた。
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