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april.2.2016 衛の告白
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「電波とネットか・・・現代は早いね情報が。」
理はパソコンのディスプレイを見ながらブツブツ言っている。休み明けから忙しい毎日が継続中で、全員帰る頃には疲労困憊だ。客がこない暇疲れよりよっぽどマシとはいえ、これが続くのかと思うと正直気が重い。せめて皿洗いのバイト君でもいてくれたら違うのに。そう思って村崎にバイトを考えたほうがいいかもしれないと提案した。しかし返ってきたのは「まだ様子をみる。」というつれない言葉。
「人の噂も75日って言うじゃないか。とりあえず一回行ってみよう!って来てくれた何人がリピートになる?何人が常連さんになってくれる?これはずっと続かないと俺は思うわけ。雇うのは簡単だけど、ヒマになって辞めてくださいって言うのは難しい。もうちょっと我慢する。」
村崎は冷静だった・・・。何事も早く手を打つのはセオリーだが、時には待つことも必要だと言われているようで黙るしかなかった俺。それを理に話すとパソコンを持ち出しチェックを始めたというわけだ。
「『delicious』のコメントは落ち着いたみたいだね。日曜の昼から夜にかけてはすごい盛り上がりだったみたい。充さんの指示だろうけど、これみて西山さんはどう思ったのかな。」
「どおって?」
「ネタ書いているのは私で~すって言いたくならないのかなってさ。」
「どうだろうな。でもよくわからないけど業界?そこの人達に「実は地元ローカル番組で少しこんなことをしておりまして・・・。」なんて言えば広がるんじゃないか?別に一般人に言わなくてもいいような気がする。西山さんにすれば「すごいですね~~。」なんて顔も知らない文字だけの人間に褒められるよりも仕事に繋がったほうがいいだろうし。」
「なるほど。」
理はキーを叩いて別のサイトに飛んだらしい。行を追っているのか視線が上下している。
「twitterでも結構な数ひっかかる。SNSにもページできてるし・・・。ブログにもでているね。別にSABUROが秘密でも何でもないのに、知ってる?あれどこ?なんていう事に人は答えを出してやりたくなるのかな。
おお!びっくり、鳥栖にSABUROって店があるみたいだ。食べログが引っ掛かった。」
「へえ、そこのオーナーは三郎さんなのかもしれないな。」
「ミネのオヤジさんはSABUROUだったけどね。それよりもトアのところはどうなっているかな?」
トアのブログは高村さんの最初の構想とは違う形で実現したが、これはこれでよかったと思う。トアが今週のおすすめです、なんていうありがちなブログを書いても楽しい読みものになったか疑問だ。
お題が映画とくれば、超得意分野。ウンチクがどかんと詰まっているほうが面白い内容だと感じてもらえる。
「おお~、コメントついてるよ。律儀にレスをしているねトア。『お店に逢いに行っていいですか?』
うわ!モテモテじゃん。やっぱりこの写真がいいのかな。」
「そりゃ、プロが撮ったんだから、3割増しにはなるだろう。」
「う~ん、でも雰囲気とかあるだろ?オーラみたいなの。トアに逢って「写真のほうが素敵ですね。」とはならないと思うけどな~。背も高いし。
一般人なのにテレビにでちゃってアー写まであるなんて、大大変化だな~トア。」
「アーシャ?」
「アーティストの写真、宣材写真ってとこかな。トアは…アーティストとは違う気もするけど。」
「トアに逢いたい客、撮影に使われた店、deliciousがとりあげた店という話題のSABUROに一度行ってみようか・・・の客が大挙しているってことか。」
「そういうこと。でもこれは延々続くものじゃないだろう?一度来店して気が済んじゃう人のほうが多いだろうしね。このチャンスをどう掴み取るかだよ。」
「それは簡単だ、いつも通りに料理を食べるお客さんをちゃんと想って料理する。皿を綺麗に整える。」
理はう~~んと伸びをしたあと同じように言った。
「いつも通りに、的確で心地よいサービスを心掛ける。どんなにテーブルが埋まっていても慌てず騒がず余裕をもって。」
「村崎と俺は基本考えが一緒だ。理は北川とトアに言った方がいいかもしれない。二人だってわかっているだろうけど、3人の意志や考えが共通しているってことを確認するだけでも意味があると思うし。」
「そうだね、明日そうするよ。」
理はキーを叩いて別のサイトに飛んだらしい。パソコンに釘づけの理に放置されているような気がして、理の後ろにドカリと座る。
「なんだよ、おい。」
「なに見てるんだよ。」
「・・・なにって、ニュースだよ。早出と帰りが遅いせいで世間から取り残されてると思うぞ、俺達。」
「まあ、そうなんだろうけど・・・前より気にならなくなったな。物欲と同じでニュースやゴシップに興味がないかもしれない。」
「まあ、それはわからんでもない。」
俺は理を抱え込んだ状態で画面を追った。理はあちこちクリックしてニュースやスポーツ記事を読んだあと指を止めた。
「もういい加減どけよ。」
「いいじゃないか、別に。」
「よくないよ。俺はもう寝る、先シャワー入ってこいよ。グラスとかは俺が片付けるから。」
「エロ動画を見る気だろ、俺を追い出して。」
我ながら馬鹿な事を言ったと思ったが、疲れているせいかもう少し理とくっついていたかった。明日は土曜日だ、仕込みは平日の比ではない。エネルギーチャージをしたっていいだろう。
「・・・バカ衛。俺は見ないよ、そんなもん。それ見ていたのは衛だろ?勉強と称して何見てたんだか。俺は全然反応しなかったけど、実は・・・お前それネタにしてたとか?」
身を捻って睨みつけながらそんな事を言う。俺は可笑しくなって正直に打ち明けることにした。
耳元に唇を寄せて告白をする。
「俺のネタは随分前から理だけだ。」
「!!!!!!」
顔を真っ赤にして俺から逃げ出そうとする理に圧し掛かる。
「ちょっと何!お前どんだけ恥ずかしい男なんだよ!ってか俺が猛烈に恥ずかしい!!そんな打ち明け話するなバカ!もおお!なんなんだよ!!!」
「他の男でも女でもヌケないんだから仕方がないだろう。」
「!!!!!!」
変なスイッチが入ってしまった・・・。
「理のイク時の顔が見たい。」
「ふざけんな!!」
ゆでだこのように真っ赤になった理が可愛く見えて残念ながら止まりそうにない。
「挿れないから。」
返事を待たずに唇を塞ぐ。
しばらく機嫌が悪くなるだろう・・・でも仕方がない。常に触れていたい相手が目の前にいて何もしないのは男の恥だ。そう結論づけてキスを深く落とす。
明日の朝、機嫌が直っていなかったら謝ればいい。
うなじにキスを落せば・・・きっと許してくれるはず。
開き直った俺は、さらに力を込めて理を抱き締めた。
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