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april.16.2016 自分と乾杯
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『そういっていただけると僕も嬉しいです。最近は混んでいるので予約をいただくほうが確実です。ご来店お待ちしております。』
今日最後のコメントを打ち込む。
最近は仕事を終えて家に帰るとパソコンを立ち上げてブログのコメントのチェックです。スマホは便利ですが、打ち込みが遅いので文章にするまえに言葉が逃げてしまう感じになります。両手でスマホをピコピコしている人はすごいですよね。あんなことできませんよ、僕には。
おかげ様でSABUROの来客数は好調のままです。疲れますけど・・・。でも達成感といいますか、やった~やりきった~というのも悪くない。
ちょっとハイになったミネさんは不気味ですが。
ハルさん的にはシリアルキラーらしいです。言い得て妙、座布団一枚。
シリアルキラーもの・・・サスペンスはあまり見ていないですね、そういえば。ぽんと浮かぶのは「ユージャルサツペクツ」くらいで、あとはでてこない。ホラーも見ないかな。言っておきますが、怖がりとかそういうことじゃないですよ。若い時はワクワクできますが、大人年齢になるとちょっとシラケちゃう感じがあります。だから見ません。ハルさんのトラウマになっている「ドライクリーニング」のほうがよっぽどホラーです、怖い、怖すぎる。僕はああいう怖さの方が好み。
メールがきています。
お、西山さんだ。
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トアさんお疲れ様です。
とりあえず撮影お疲れ様でした。来週中に編集作業が終わるそうなので楽しみですね。今回の男性目線も作り甲斐がありました。男性の視点は私にも思いつかなかったパターンです。局のスタッフさんのアイディアですが、なかなかじゃないですか?
今回の仕事は局もスポンサーもやる気があって、結構楽しみながらできています。勿論トアさんのキャラもありますが。
今度はどんなテーマになるのかな。トアさんチョイスの映画を見るのが最近の趣味になりつつあります。見逃したり、タイトルすら知らなかったり、レンタルにも置いてないような作品にスポットを当てるというのが局の思惑とスポンサーとがっちり合っていて、気持ちがいい。
トアさんの映画楽しみにしています。
ブログのコメントもなかなかの数ですね。
SABUROのお仕事もあるから大変でしょう、でも頑張ってください。頑張ってもらわないと全国のトアさんファンががっかりしますので。
編集があがったら高村さんが届けてくれるはずです。
それでは、作品のピックアップが終わったらメールください。
西山
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僕がチョイスした映画を西山さんが見て、それを基に脚本を練るという作業。僕には絶対できないと思います。はい、できない自信満々です。
なんといいますか、やはり女性のほうが「日常」に対して視野が広いような気がするのです。
服装や香り、色や音、人、家具、食べ物。五感をフルに使って、日々当たりまえにある物に価値を見出す。僕は好きなものに突っ走っているだけですから、主人公のあのシーンで着ていたシャツが素敵でした、と言われても咄嗟に思い出せません。
『kissingジェシカ』でも、クラッチバッグが素敵でした。どこのブランドなのかな?なんてコメントがくると、えええ~~となります。クラッチバッグを検索して、なるほどこういう物なのかと理解したうえでシーンを確認。「おおお~~これか。」と一際大きい独り言です。
それが女性の持ち物に限らず男性が身に着けるものにも意識がいっていますよね。あと食器や料理も同じく興味の対象です。
そして今回ご主人が言うセリフに「仕事と家庭の両立を求められるのが女性だけだっておかしい」的なのがでてくるじゃないですか。いや~あれ僕は考えたことなかったから聞いて納得です。女性ばかりが求められるのは変だなと。でもそうなると主夫の人は肩身が狭いとか、単なる「無職」だと卑下される世間の見方もありますよね。時代が変わって様々な夫婦や家庭のスタイルがあっていいのではないか?そんなことを考えました。
考えるといえばSABUROに居る時の自分の立ち振る舞いに目を向けてみたのです。制服なのでセンス云々は問題になりませんが、ギクシャク動くとかスムーズじゃない場合違和感を生む。それが積み重なると楽しい食事から遠ざかってしまうのではないか・・・そこに気がついてしまった。
理さんとハルさんにそんな話を今日したのです。理さんはしばし考えた後、ウンとひとつ頷いて言いました。
「そう思うよ、たしかにそうだね。お客さんの大部分は女性だ。空気や雰囲気は大事にしなくちゃね。スマートな動きって結局のところ迷いがないってことだと思う。」
「迷いですか?」
「そ、ドアから新規客が入ってきた、あっちのテーブルはスタッフを呼んでいる。さてどっちを選択するかっていう、その連続だろ?」
「ですね、僕は割とドアを選んでお出迎えが多いかな。」
そういえばハルさん、テーブルにご案内シーンが多いです。座っていただくテーブルのチョイスが上手です。厨房チームファンだったら厨房に近いテーブル。柱の陰は大人のカップルとか。
「そうだね、正明はいつもドアを気にしているから俺は任せている所が多い。ドアの開く音がしたら正明の位置を確認してホールに留まるかドアまでいくかを考えているからね。そしてトアはオーダーしたそうにしているテーブルやファーストオーダーを引きだすのが上手い。俺は二人を見ながら、開いた皿をせっせと下げて回転させる。トアが追加をもぎとる。正明が新規を呼び込む。
なんだかんだでいいチームじゃないかな。」
さすがモンキー理さん。そういうふうに言葉になると三人の動きが理にかなっている。自然にできていたのなら、僕たちのチームワークは万全です。迷いを少なくすればサービスの向上につながりますから、ホールの親密度が増した気がしました。
それを言ったら厨房チームは、どういう役割分担になっているのかさっぱりわかりません。料理のカテゴリで仕分けをしている風でもないのですよ。ミネさんも飯塚さんもパスタつくりますしね。謎だ。
忙しい毎日だからこそ確認することが大事だったりします。気が付いたことや感じたことを言葉にだしてみる。そこに返ってきた考えを自分の中で咀嚼する。
お客さんの年齢や立場、来店動機、その違いによって変わるサービス。お客さん全員に対して一つのサービスではなく、貴方の為にっていう気持ちですよね。それ大事ですよね。
そうか・・・。
「こんな人に見てもらいたい。」という目線で映画を選ぶと西山さんも構成しやすいのでは?
僕が選らんだ理由が明確になれば、もっといい物が作れるかもしれない。
次々と僕の世界が広がっている。その実感はワクワクを生み出します。
自分のコミニケーション能力の低さを呪ってきましたが、それってたぶん自分のせいじゃないか?
相手を想い言葉を選ぶ、僕にはその気持ちが足りていなかった!
憑き物が背中から離れて軽くなったような気分です。
そうか・・・そうだったのか。
冷蔵庫からビールを取り出しプシュっと栓を抜く。
スイッチの入っていない黒いテレビ画面に映る自分にニッコリしてみる。
「乾杯!」
僕は自分と笑顔を交換しながら、辿りついた答えに満足して乾杯した。
自分は変われるという実感はとてもいいもので、いつもよりビールが美味しい。画面に映る自分との飲み会はとても楽しい時間になった。
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