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april.30.2016 隠密工作開始
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準備は極秘裏に進められております。2日前に4キロのターキーが届きました。配達の受け取りは飯塚さん。理さんがミネさんを呼び止めているあいだに冷蔵庫の奥に見えないようにしまわれた塊。
2日かかって解凍されたターキーは鳥肌がブツブツしていて・・・正直気持ちが悪い。
飯塚さんと僕、そしてハルさんは隠密工作中です。理さんがミネさんを外に連れ出しました。たまには外でラテが飲みたいとか、打ち合わせしたいことがあるんだよ、そんな誘い文句であっさり作戦成功。
「なんて顔してるんだ、トア。」
そう言われましても・・・。これが美味しく?
丸鶏のお化けみたいな姿が?
飯塚さんはそれをシンクのなかで洗い始めた。足をもってブラ~ンなんてされたら、もうこれは何だ!といいますか絶賛「生き物」感が満載。
お腹の中に・・・手をつっこむ飯塚さん・・・うぐっ
「中抜きしてあっても、肺や腎臓が残っていることがある。ここは食感が悪いから絶対取り除くこと。ターキーに限らず、丸鶏のものは全てこの工程を怠らないことが大事。
ターキーの場合腹の中にレバーと砂肝、首が入っているはず。ほら。」
長い首と赤い内臓。ぐはっ。
「それはいったい?」
「どうする?スタッフィングに入れるか?でもレバーはやめておこう。俺はあまりレバーが好きじゃない。せせりって聞いたことあるだろう?この首肉がそれ。」
実は内臓大好物。食べてみたい!鶏じゃない種類の内臓ですよ?食べたくなりますよね。僕の興味しんしんの顔を見たハルさんが飯塚さんに言いました。
「何事も経験です、僕食べてみたいです。」
「じゃあ作業が終わったらグリルしよう。洗ったあと水気を拭きとってバットに。ローズマリーと塩コショウ、オリーブオイルまぶしておいてくれるか?」
「はい!」
ハルさんのアシスタント姿は最近板についてきたように思えます。家でもスパルタなのでしょうか。ミネさん厳しそう~。
「けっこう大きいですね。」
「だって4キロだぞ。綾子が生まれた時とたいして変わらない大きさだ。」
・・・だから、そういう事、言わないでください!
飯塚さんは塩を表面に擦りこみはじめました。うわ~料理人の人は解剖的な面に免疫が必要ですね。肺と腎臓撤去とか・・・たぶん魚も無理です、はい。切り身を買って美味しく頂く派で充分満足です。
コショウをふり、ビニール袋にターキーを入れて、さらにオリーブオイルとコアントローをじゃばじゃばふりかけています。コアントローはオレンジのキュラソー。カクテル(サイドカーなどなど)にも使われますが、スイーツでもいい働きをします。ターキーにも効き目があるようですね。
生のローズマリーをお腹の中に入れて表面にも葉を枝からおとしてふりかけます。グニュグニュと揉みこんでビニールの空気を抜いて口をしっかりしばりました。
「この状態で寝かせる。」
「飯塚さん、これはSABUROのレシピですか?」
ハルさんは真剣です。
「いや、俺のレシピ・・・というか今思いついた。だいたいこんなもんだろう。クランベリーソースを作るから、あまり強い香辛料は使いたくない。」
「クランベリー!!あれがソースに?」
「北川は果物系のソースは大丈夫か?ちなみに俺はあまり好きじゃない。ドライフルーツも苦手。でもターキーとクランベリーは合うし、たぶん理が好きな味だと思う。」
「飯塚さん・・・これ、ミネさんにですよね。」
ハルさんにニヤリとする飯塚さん。男前すぎてビームがでているかのようです。
「村崎はダシだ。皆でターキーを食べる会だ。俺的には。」
何事も最優先項目は理さんなのですね、飯塚さんにとっては。愛されてますね、理さん。
もし本人にそれを言ったら「トア?何言ってんの?」と不機嫌になるか、うなじにチュー発言の時のように「当たり前だろう。」とあっさり認めるかもしれません。
でもあれです。わかりきったことは言わないでおくのが一番ですよね。
「飯塚さん、これ鶏肉でも同じですか?」
「ああ、いけるだろう。コアントローじゃなくて杏露酒や桂花陳酒を使うのもいいかもしれない。ネギと生姜をたっぷりいれた酢醤油につけて食べるの旨そうじゃないか?」
「それいいですね!お腹の中はゴハン・・・チマキの中身みたいのを入れたらどうでしょう。」
「鶏の旨みを全部吸ったもち米は美味しいだろうな。焼くよりも蒸したほうがいいかもしれない。」
「ぜったいフワフワですよ!」
飯塚さんとハルさんは、どういうシチュエーションを思い浮かべているのかしりませんが、ほんわり笑顔を浮かべながら何事か考えている様子。飯塚さんは理さんに食べさせる算段でしょうね。ハルさんはミネさん一緒に作ってみませんか?ですかね。
僕?
でも鶏の丸焼きをマスターしたら、翔に食べさせてあげたい。コンガリ焼けたローストチキン。目をキラキラさせて「とっちゃん、すごい!」と言ってくれるかな。
ああ・・・そういうことか。飯塚さんが理さんにせっせと料理を作る気持ちがわかりました。
「よし、これを毎日面倒みて5/2の朝オーブンに突っ込む。そのあと村崎と待ち合わせて器の展示会に行くから、北川は焼きの見極めをして運んでくれ。見極め方はわかるな?」
「はい、1キロ1時間が焼きの目安。4時間はかかるということですね。まな箸を刺して肉汁が透明であること、箸がしっかり熱いことを確認します。」
「箸をつける場所は?」
「手首と関節の間。内側の皮膚が柔らかい場所です。」
「合格。」
「タケさんが言ってました。シャンプーする時お湯の温度を確かめるのもその場所なんですって。」
「へえ、それは知らなかった。」
僕も知りませんでした。何気ない動きにもちゃんと理由があったのです。職人さんというか人を相手にする職業は、やはり相手を思いやることが全ての基本ということですね。
僕もそれを常に忘れないようにしなければ。
「よし、二人が帰ってくる前に焼いてしまおう。」
飯塚さんが焼いてくれた肉は美味しかったです。鶏とは全然違う味わいに期待度がうなぎ上り。あの大きい塊は絶対美味しいはず・・・。さっき気持ち悪いなんて考えちゃいましたが訂正します。
絶対美味しい、間違いない。
早くこいこい、5/2!
あ・・・違いました。ミネさんの誕生祝いの会、楽しみだな~~。が正解。
初めての七面鳥に我を忘れてしまった僕・・・なのでした。
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