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may.15.2016 一年に一度 2
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「いらっしゃいませ。あ、マスターお久しぶりです。」
キイちゃんは可愛い笑顔を俺に向けてくれた。店内にはすでに結構な数の客がいて、その様子を見ればあのTV番組はプラスに働いているのだろう。情報を伏せる作戦なのか?と儀が頭をひねっていた日曜の番組。
「そうだ!この間の放送みたよ。1回目は後ろ姿だったけど今回はちゃんと顔がでてたね。」
「うわ~見てくれたのですか。そうです、僕も電波デビューを飾りました。マスターお一人ですか?それとも待ち合わせ?」
「あのね、今日俺の誕生日なんだ。テイクアウトできないかなって。店が休みだから一人誕生会しようかと思ってね。」
「おめでとうございま~す。ギイさんは昨日酔いつぶれなかったんですね。」
ええ・・・なんで儀?
「前一緒に来たとき酔いつぶれたって。そしたらギイさんにお祝いしてもらえたのに。」
「あああ・・・そういうこと。ギイはこなかったよ昨日。というか最近見ていないし。」
「うわ!本当だったんだ。マスター聞いてもいいですか?ヒロさんって人、心当たりあります?」
「は?」
まさしくそれは俺だ!でも儀ですら「マスター」と呼んでいたぐらいだし、俺の名前を知っている客なんかほんの一握り。キイちゃんが知らなくて当然。
とりあえずトボケておこう。
「聞いたことないけど?ギイが何か言ってた?」
「本命でつきあっている人なんですって!なんか照れるギイさん可愛かったですよ。雰囲気も変わりましたしね。マスターも知らない人なんだ。あ、テイクアウト何ができるか聞いてきます。」
キイちゃんは厨房に足早に行ってしまう。たぶん俺の顔は今赤いに違いない。儀、お前何をキイちゃんに話たんだ?というかキイちゃんに逢ったなんて聞いていないし。もしかして一人でこの店で飯くってるとか?ランチだったら俺だって付き合えるじゃないか・・・って、頭に血がのぼって馬鹿か俺。
ゲイだということは会社に一切言っていない儀があきらかにリーマン風情じゃない俺と飯食う姿はいかがなものか。
俺は儀ほどうまく立ち回れないから、知り合いにでも逢って何か聞かれてソツなく対応できる気がしない。スーツの相手とスーツの儀に挟まれて居心地の悪い思いをするだけだろう。
会社で働く儀の姿を俺は知らないし、この先ずっと知らないままだ。それを同僚だという理由だけで知っている相手にすら嫉妬をしてしまうかもしれない。重病だな・・・・まったく。
キイちゃんはメニュー片手に戻ってきた。
「お誕生日ならゴージャスに牛テールのシチューはいかがですか?」
「お、旨そうだ、それにするよ。」
「え~と何人前にしますか?」
「2人前。」
「へえ~マスター結構食べる人なんですね。」
いや二人で食べるし、そう言いそうになってぐっと飲み込む。隠し事とか嘘ってこうやって辻褄が合わなくなるんだな・・・向いていないことはしないほうがいいらしい。
「少々おまちください。」
一度帰ってから儀と買い物にいくか。酒を切らしているし、今日はたっぷり飲みたい。
ケーキはなくてもいい、俺が代わりにベタベタ甘えてやる。
だめだな、俺。恋人と過ごす誕生日に相当舞い上がっている。
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