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may.22.2016 つづきを聞かせて
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「疲れたな~~さすがに!」
「ですね・・・でも何とかなりましたね。」
何故か今日はとても忙しくて、ランチもディナーもてんてこ舞いでした。明日はお休みです!ようやく僕達の日曜日がくるのです!(月曜日だけど。)
お風呂上りのプハーをするために、帰ってきてすぐにお風呂をすませるのは日曜の夜の決まりごと。
「お疲れ~~。」
「お疲れ様でした。」
ゴクゴク・・・プハー!!!おいし!
今週も1週間頑張りました。明日をお休みしたらまた1週間が始まります。村崎寮にきてからまもなく3ケ月。学生の時より時間がどんどん過ぎていくような気がするのです。「歳をとると1日が短い。」そんなふうに両親がボヤいていたことがありました。誰でも1日は一緒じゃないかって思っていたのに最近自信がありません。確実に僕も歳とってるってこと?・・・嫌ですね。
「アキにお礼いっておいてよ。お客さん連れて来てくれたし。」
ミネさんはソファにクタっともたれながらそう言いました。今日のランチに弟が友達と一緒にSABUROに来たのです。連絡もなしに突然だったのでビックリ。全部で6人の男女のグループは学生らしくワイワイしながら楽しそうにランチをしていました。僕は忙しくしていたので話はほとんどできなかったけれど、楽しそうな様子が見られてよかったです。
「お礼なんていいですよ。美味しいもの食べたんですから。」
「ハル気が付いてた?あの中の女子一人がアキに随分くっついていたぞ。」
「全然わかりませんでした。そんな観察する暇がなかったし・・・ってミネさん、あの忙しい最中にどこ見てたんですか!」
「いや~別にジロジロみてたわけじゃないぞ?店内の様子はけっこう気にしているし。
不味そうな顔して食べている客がいたら嫌だなとか、お~笑ってるね、とかさ。んでアキのテーブル見る度隣の女子がアキのどっかこっかを触っていたわけ。ボディータッチってやつ。」
「そうでしたか。友達でも彼女でも僕には関係ないからいいです。」
「おお!ドライな兄ちゃんだな。兄弟で恋バナとかしないの?」
「ミネさん・・・それって嫌味ですか?僕と弟は正反対なのに仲良くそんな会話するはずないじゃないですか。避けるべき話題のトップですよ。」
「そんなもんか?」
「そんなもんです!」
ミネさんは思考回路がユルユルなのかもしれません。ユルいというのは僕が男として男を好きになることを当たり前みたいに言葉にします。今もそうですけど、特別とか変わっているとかそんなニュアンスが全然ない。「今日可愛い子みちゃった。」「そうか、僕も格好いい人を見かけたよ。」なんていう兄弟の会話?ありえないですよね。もしミネさんに兄弟がいて一人がゲイでも普通に恋愛を話題にしそうな気がします。・・・だからといって男の人を好きになるかっていると全然なんですよね、ここが惜しいところです。あくまでも僕的に残念。
「よっしゃ、他にも聞いてみよう。」
ミネさんはスマホを手に取り何やらメール中です。いったい何を誰に聞くのやら。
「答えが楽しみだな。」
「誰に送ったのですか?」
「残りの3人にきまってるだろ。」
「トアさんは熱烈DVD中で起きているでしょうけど、理さんと飯塚さんは・・・。」
もう寝ているかもですよ。と言いそうになってごっくんと飲み込みました。いやなんか、いやなんというか、深い意味はないといいますか、大アリと言いますか。
「なんで変な顔してんの?うわ、ハルってばイヤラちいな!大丈夫だよ、あの二人なら絶賛底なしワイン祭りを開催しているに違いない。」
「いやらしくありません!」
「いいじゃんか~男なんだからソッチ方面に考えるのが正しい。俺なんかこないだ、サトルと飯塚のチューを想像しちゃったよ。」
「・・・なに想像してるんですか。僕はもうベッドにいっちゃってるかもって考えただけで、中身まで想像してませんから!」
なんだか居心地が悪くなってビールを取りに行くために立ち上がった。ミネさんは「お、気がきくね~。」なんて言いながらスマホをいじっている。ついでにチーズも持って来よう。
ミネさんでも・・・男同士のそういうの想像しちゃったりするのか。
ミネさんと僕のチュー・・・・だめです!だめです!ふーふーふー
若干ヨロヨロぎみでソファに戻った僕にミネさんは容赦がない。
「お、なんだ~赤い顔しちゃって!妄想中?うわ~イヤラちい!!」
「違いますってば!そんな想像してませんから!(違う想像です!言えません!)」
「やばい、疲れているせいか回ってる感がすごい!」
ミネさんは僕と違う意味で顔がすこし赤い。6Pチーズのアルミをペリペリむいて渡そうとしたら、僕の手からパクリと食べました!
「気がきくね~~。」
だめです、だめです、ふーふーふー
ふーふーふー
スマホがテーブルの上でガタガタ揺れてメールの着信を知らせてくれた。僕はすかさずそこを逃げ場にしようとミネさんの肩をポンポン叩いた。
「返事きましたよ!メールみましょう。」
ミネさんは口をもぐもぐしながらスマホを手に取りタップを繰り返した。
「返信はトアから。え~となになに?『僕は望んでいないのですが、兄に聞かれてしまいます。そしていつも残念な報告をするはめになるので放置してほしいのですが・・・。思春期を迎えた翔に同じ質問をされる日がくるのではとビクビクしています。それまでにはどうにかしたいです。』だってさ。仲良く恋バナするの?っていう俺の質問と微妙にズレてるあたりがトアらしい。」
「トアさんからしないと会話にならないわけですよね。じゃあ僕と同じというカウントになりませんか?」
「ん~どうだろ。お!きたぞワイン馬鹿達から返事。」
よかったです、ちゃんとリビングにいたのですね。
「飯塚・・・は『親しくない兄弟なのでそんな話題は一生しないと思う。』・・・まあ、そうだろうな。飯塚に聞いてもしゃーないことだった。続きましてサトル『姉ちゃんとはする。よし兄には色々隙をつかれて白状するはめになる。』だとさ。」
「わかります。タケさん鋭いですからね、のほほんとしているようで油断できない人ですから。」
お花見の後のカットタイム。鏡の向こうからニヤリとしたタケさんは言ったのです。
『ミネだっけ?あれいい男だな。ちょっと親近感わいちゃったし。』
そしてそれ以上何も言わないから落ち着かない、落ち着かない。バレちゃってますよね完全に・・・。
「なんでこんなこと聞きたかったんだろ、俺。よくわからなくなってきた。」
脳にもアルコールが到達した模様です。ミネさんはクタっとした姿勢がグタっとにレベルアップしています。そろそろ眠たくなるはず。
「なんだろうな~。飯塚とサトル、んでハル。飯塚達はハルとはまた違う気がするけど。」
「ミネさん?もう寝たほうがいいですよ?色々と支離滅裂度が上がっています。」
「いやいや、寝ない。まだ寝な~い。俺が言いたいのは~女しか好きになれない男と、男しか好きになれない男ってそんなに差があるのかなってこと。」
「は?」
「だって好きになるって気持ちを持っている人間ってことだろ?あんまり変わらない気がするんだよな。
あ~どっちも好きになれる男を忘れていた。
だから俺が言いたいのは~ハルもあんまり気にしないでアキと恋バナができるようになれるといいのになって事。」
う~んと。ミネさんの頭の中では全部繋がっているのかな?でも前後が行ったり来たりですよ。
「ミネさんに片思いしているんだよね。」そんな話を俊明とできる日がくるのかな。それはわからないけれど、ミネさんが言ってくれていることは僕を気遣ってくれている。それがやっぱり嬉しい。
「そんな日がくればいいですね。ありがとうございます、ミネさん。」
「12月だったかな~鈴木とサウナ行ったのよ。」
鈴木?お友達ですかね。
「奥さん妊娠中で家から追い出されたって、そういや産まれたのかな。いやそれはよくって、いやよくないけど。」
「ミネさん、寝たほうがいいですって。なんだか話が飛びまくっています。」
「いや、繋がってるの~~。ええとその鈴木がさ男でもいけそうな人間が一人いるって言いだしてさ。」
ああ、そういうのは僕も何度も耳にしたことがあります。学校で「OOなら男だけどイケる気がする。」っていうの。ホントですか?試してみる?って言ってやりたくなりますけど。
「それが体操選手の加藤らしくてさ。加藤君とか呼んでたな~知り合いかって。」
ケラケラ笑っているミネさんの目は半分くらいしか開いていない。もう少し付き合ったら撃沈すること間違いなしですね。
「でも俺はそういうこと考えたことなくてさ~。へ~~俺的にはないなと思ったわけ。」
胸がチクリ。
「加藤にしろ誰にしろ、全然現実味がないというか理解不能というか。男が男でもイケるっていうのがね。
でも俺わかっちゃった、結局はアレなんだよ。相手が大事だってこと。」
「もうミネさん、寝たほうがいいですって。」
ミネさんのほとんど閉じられていた目がゆっくり開いていく。瞼の奥からはいつもの優しい目。眠気とアルコールでとろんとしていてドキっとする。
すっと腕が伸びてきてフワっと僕の頭に手のひらがのる。
「俺は加藤の頭を撫ぜたり、ワシャワシャしたいとか思わないのよ。」
手のひらは頭をおりて背中に移動した・・・と思ったらグイっと押されてミネさんの胸に倒れ込む。
「たまに可愛いな~って。ギュウってしたくなる。だからさ~男でもイケそうな気がするって違う気がするんだよ。「その人にしたいかどうか」ってことだよね、俺はそうおも・・・う・・わ・・・」
ミネさんの頭がカクンと僕の肩に落ちてきた。
寝ちゃったの?ミネさん、寝ちゃったの?
ねえ・・・何が言いたかったの?
僕をギュウってしたくなるって?
ねえ・・それってどうしてそう思うの?
宙ぶらりんだ。
男が男を好きになる、その好きに近いの?
兄が弟に思う好き、そういう優しさなの?
ミネさんの体温が急に怖くなって僕はゆっくり腕の中から抜け出した。ソファに横になってもミネさんは目を覚ます気配がない。
タオルケットを持ってきてミネさんに掛けた後、僕は一人床に座って残りのビールをちびちび飲んだ。
眠っているミネさんをずっと見つめながら。
目を覚まして・・・つづきを聞かせて。
そう願いながらどれだけ時間が流れただろうか。
結局僕の願いは届かなかった・・・。
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