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july.18.2016 ミネとハル その4 ミネ
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なにそれ・・・。
びっくりです、うれしいです、泣きそうです。
でもなにそれ・・・。
なんで俺先に言われてるの!
緊張と心臓バクバクで張りつめていた身体からいっきに力がぬけてしまった。ソファの背にグブグブと体が滑り落ちて、ポスンと座面に転がる俺。
ハルが俺を好きって言った。
もうずっと前からって言った。
好きになってくださいって言った!!
どうしよう・・・今までされた告白の中で一番嬉しい。嬉し過ぎて泣きそう。
「うぐぐぐ・・・。」
俺のなんだかよくわからない声がソファの座面に吸い込まれてボソボソと響く。すっげ~だらしない顔している自覚がある。キリリとはっきり言いきったハルの顔と違いすぎる。
恥ずかしくて顔があげられん!!
「ミネさん?」
「はい・・・。」
「怒りますよ?」
例の地の底を這うようなハルのお怒りモードの声がする。もう十分怒ってんじゃん。ガタンとマグカップがテーブルに置かれた音がしてハルが立ち上がった気配がした。むんずと肩をつかまれてひっくり返された俺は、無様な顔をハルに晒す羽目になった。
「ミネ・・・さん。なんでそんな顔してるんですか。」
「恥ずかしいから・・・です。」
「どうして?恥ずかしいのは僕なんですけど。」
「嬉しくて泣きそうなのよ、俺。」
「え・・・?」
「嬉しくて泣きそうなの、わかる?」
ただでさえ大きい目をハルは見開いて俺を見下ろしている。キラキラ光っていていつも以上に綺麗な目。
「ハル座んなよ。」
俺が身体をずらしてできた場所にハルは素直に座った。
俺はハルの太ももの上に頭をのせてハルを見上げる。
「ミネさん!いきなり!」
行き場がなくなって所在なさそうに脇に置かれたハルの左手をそっと握った。ビクっと指が動いたからしっかり握りなおす。
「さっきのなにそれは・・・先を越されたなにそれ。こんな嬉しいことあっていいのかの、なにそれ。
だからつまり俺はハルが好きなの。男なのに男のハルに惚れたってことは本物だと思うわけ。」
「ミ・・・ミネさん?」
「ホントに本当なの、嘘はないよ。俺の本心。
ちゃんと自覚するのに時間がかかちゃってさ。なにせ初めての経験だったし。あんまり持ち出したくないけど我慢して聞いてくれる?」
「・・・はい。」
「朝起きて奈美に「おはよう」って言われてね、俺なんか違うって思ったよ。朝一番のおはようは・・・やっぱりハルじゃないきゃ駄目なんだなってわかったのよ。あんまり当たり前におはようがあったから、無くならないとわからなかった。俺は結構鈍いらしい。
今朝自分でコーヒーいれてさ、マグカップをギュウってしたけど、全然あったかくなくてね。やっぱりハルが入れてくれたコーヒーが一番だなって思ったわけ。
昨日一人だったから、いきなり買い物いってさ。ハルとするはずの常備菜づくりを一人でやってみたの。そしたらさ~キンピラも満足に作れなかった。あんなボケボケな味のキンピラなんて作ったことないよっていうくらい。証拠品があるからあとで食べてみるといい。」
ハルの顔がクシャっと歪む。おれはさらにギュウとハルの手を握った。
「ハルと一緒じゃないと海外ドラマを見る気にもならない。おいしいものを作れる気がしない。
ハルが一緒に悩んでくれたり、料理に取り組んでいる時間がどれだけ俺にとって大事なことかわかる?
俺の仕事を理解してくれる人がいるって、どれだけ心強いか知ってる?」
俺の頬にポタリと滴が落ちてきた。右手を伸ばして目じりにたまった涙を払ってやる。
「色んなことがね・・・ハルじゃないと駄目なんだ。他の誰かでもない、女でも男でもなくてね、俺には北川正明っていう存在が必要なの。ものすごく愛おししい、かわいい、どうしようもないくらいに好き。」
「ふ・・ぐ。」
ゆっくり起き上がって左手を離す。引き留めるように一瞬力がこもった指がほどけた。
ハルは泣く事を我慢するみたいにきつく唇をかみしめていた。両こぶしをギュっと握っている。その姿に胸がつぶれそうになる。愛おしいという気持ちがどんどん溢れて止まらない。
ハルに手を差し伸べる。
恐る恐るといった感じでハルの左手が伸びてきた。
「おいで。」
「ミネさん!」
ぶつかるように抱き着いてきたハルをしっかり抱きしめる。
「ハル、俺の彼氏・・・違うな。」
もぞっと動いたハルが俺を見ている、不安そうに。
そんな顔するなって、かわいいくて苛めたくなるじゃないか。
「恋人になってください。」
ハルの目からまた涙があふれだす。重ねるだけのキスをして、抱きしめた。
ハルが泣き止むまで、俺たちは何も言わず、ずっと抱き合っていた。
流れる時間。
その一瞬一瞬に俺とハルの時間を刻んでいこう。
それが積み重なって、どんどん積み重なって・・・二人の心が形になるんだ。
な、ハル。
二人だったらきっと色んな時間を過ごせるよな。
俺はそれがとっても楽しみなんだ。
それに・・・好きって言葉にしたら、どんどん好きが増えていくって知ってた?
好きが沢山なんだ。
俺はハルが大好き。
今日よりも明日、今年より来年。
「好き」がね・・・積み重なると思うんだ。
俺はそれがとっても楽しみだよ、ハル。
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