アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
july.29.2016 ハルの決意
-
目が覚めました。
でもなんだか、まだ慣れない一人じゃない朝です。僕の目の前にはミネさんの後頭部から首、そして肩に続くなだらかなラインが見えている。
見るだけじゃなくて、触ってもいいってスゴイと思う。僕から触っても許されるっていうことが幸せだったりします。
オーベルジュで目覚めた朝。あの時は布団にくるまって背中と背中を合わせるだけで精一杯だったのに。今は目の前にミネさんがいて、同じお布団にくるまって眠っている。それを実感するとジワリと目頭が熱くなっちゃいます。簡単に涙がでそうになって・・・最近の僕はぐすぐす君です。
嬉しいな、幸せだなって思うのにね、不思議です。
人差し指でミネさんの肩に触れてみる。指の先なんて僅かの面積なのに、ちゃんと体温が伝わってくる。その温かさが僕のものだっていうのが素敵だ。皮膚の下にある骨の硬さや滑らかな肌をもっと知りたくなって、僕は少しずつ位置をずらして確かめる。
目の前にミネさんがいる。
やっぱり涙が滲みそうになったので、パチパチ瞬きしてやり過ごす。余裕で二十歳を超えているというのに情けない。赤い目をしていたら、ミネさんに朝から心配かけちゃうし、もっとしっかりしなくちゃね。
そのときミネさんの左手が肩の向こうからやってきて、僕の右手をむんずと掴んだ。
「なにつつましくつついてるの?ちゃんと触ればいいのに。」
ミネさんの笑いを含んだ声からすると、僕がおそるおそるツンツンしている間目を覚ましていたってことですよね。急に顔が赤くなってしまう・・・ううう恥ずかしい。
くるんと僕のほうに向きを変えたミネさんが笑っている、目の前で。
「おはよう、ハル。」
「・・・おはよう・・・ございます。」
「あああ!!もおお!!」
ミネさんがすごい勢いでワシャワシャしてくるから、思わずのけ反ってしまった。やんわり肩を掴まれたと思ったらすっぽりミネさんの胸の中に引き寄せられた。
「朝から、なんなのその顔は。」
「どんな顔・・・ですか。」
僕の唇はミネさんの肌にくっついているからモゴモゴした声しかでない。
「どんな顔?困った顔。そしてかわいい顔かな。」
そりゃそうだ。びっくりして恥ずかしくて、困ったからそんな顔になってもしょうがない。それに僕には余裕がないのです。おまけにさっきまで泣きそうになったり感情がユラユラしていましたから。
「ミネさん、苦しいです。」
「ん~そうかあ、仕方がないな。」
ミネさんが僕を開放してくれた。横向きになったまま二人の間に距離ができる。自分で苦しいとか言ったくせに、その隙間が嫌だったりするから自分が何をしたいのかわからなくなって困った。
「にゃは、また困った顔してる。」
ほっぺたをフニフニ突きながらミネさんは少しズルいような意地悪そうな顔です。困っている僕を見るのが好きってこと?
さすが支配者さん、意地悪です。
「色々・・・慣れないのです。」
「いいよ、慣れなくて。そしたら俺ずっとハルの困った顔が見られるし。」
「うううう・・・意地悪です。」
「俺、根本的に意地悪はしないんだけどね、ハルにはしたくなっちゃう!」
なにが、したくなっちゃう!ですか、もおお。
「話は変わるけど、俺って先見の明があったと思わない?」
「なんのですか?」
「この畳ベッドに決まってるじゃないか。」
・・・話の方向が変なことになっていませんか?なっていますよね?
「普通に寝心地がいいです。という・・・ベッドですが、それが?」
「おお、なに?警戒してるの?あははは、んじゃ言いますよ。畳の上に布団敷いているのと一緒だろ?これ。」
「ですね。適度に硬いから体にはいいような気がします。」
「そうなんだよ、スプリングがないだろ?無駄にプヨンプヨンしないじゃない。」
「ですね、バネないし。」
ミネさんがニヤリ、悔しいけどこの顔も好き。ニヘラっていうのも捨てがたいけど、このニヤリも格好いいのです。ちょっとドキっとしちゃう感じ。
「より深くっていうかさ、受け止めてもらっている感がいいわけよ。プヨンプヨンしないから。」
「は?」
「わかんない?ハルが安定してるから具合がいいってこと。プヨンプヨンしないから。俺の体重分散しないのよ、わかる?」
ボボボボボ!!!!!←僕の顔面炎上。
だめです、だめです!ふうう、ふうう、ふうう!
たまらず僕は体を反転。視界からミネさんを追いやった。
一体全体なんなんですか!そりゃあスプリングがないですからね。背中でもおなかでも安定しますよ!
プヨンプヨンしないからミネさんを全部受け止められるけど・・・けど・・けど・・・恥ずかしすぎる!
「ハル、なにそっぽむいてんのよ。」
意地悪声だ・・・でもニヤリとセットだと効果絶大なのです!ああ~やっぱり僕は奴隷ちゃんなんでしょうか。そうなんでしょうか!
「もおお。ハルってば。」
ミネさんにグルンと簡単に転がされた僕。ふたたびミネさんのニヤリ顔に遭遇です。
だめです、だめです!
ふうう、ふうう、ふうう
ミネさんの表情がいきなりとっても優しいものに変わった。そのままチュっと唇にキスをして僕を見つめてくれる、胸がホワンとするような本当に優しい顔。
「あのね、俺は今まで女の人ってかわいいなって思ってきたのよ。すずさんもかわいいだろ?」
わかっているけれど、こういうのはちょっと嫌です。僕は絶対女の人になれないし、勝てないことばっかりだ。柔らかくもないし、子供を産めない。人混みの中で手を繋ぐことすらできない。
さっきまでと違い僕の心に一筋冷たい光が射し込んだ。
「ハ~ル。最後までちゃんと聞きなさい。
俺がいいたいのはね、女のひとを可愛いって思うのは男として当然というか本能的にインプットされているものだと思うのよ。
でもハルは男じゃない?俺と一緒の男子だ。」
「そんなの、わかりきっています。」
「拗ねてる顔もいいのよね~。あ、じゃなくてさ。だからね、俺が心底ハルを可愛いって思うってことはさ、本当に可愛い!って感じているんだってこと、ハルわかってる?」
「・・・え?」
「好きな子に意地悪とかスカートめくりみたいな幼稚なことしちゃうくらい、ハルが可愛いっていっつも思ってるの。わかってる?」
「・・・ミネさん。」
「だからさ、色んな顔を俺に見せてよ。今も相当なレベルだけど、際限なくハルを好きになっちゃう事間違いなし!」
「ミネさんのバカア!」
「はい、おバカさんで~~~す。」
ミネさんはニヘラっと笑って僕を抱きしめてくれました。
もっと素直にといいますか、直球で「好きだよ。」っていうのも嬉しいです。嬉しいけど、今みたいに意地悪されてニヤリってしてもらって甘い事を言ってくれるほうが・・・嬉しいかもしれない・・・です。
やっぱり僕は奴隷ちゃんなのでしょうね。
でもいいや
ミネさんが僕の傍にいてくれるなら、なんでもいいです。
僕から触れたりキスをしてもいい、その場所があるならいい。
僕ものにならない場所だと諦めていたのに、もう違う。
僕のものになりました。
「ミネさん、大好き。」
嬉しくなって首筋にキスをしたらミネさんが怖い顔です。
「それ以上は駄目です。仕事にいきたくない病を発症します!オーナーとしてそれに罹るわけにはいきません。ハルも協力するように。」
ぷっと二人で噴き出したあと仲良くベッドから這い出す。
給料日明けの週末ですからね!
気合いをいれて乗り切りましょう。理さんと飯塚さんのように、僕もミネさんと同じ目的をもって前に進んでいく。
今まで見ることのなかった未来に目を向けて、僕はミネさんと頑張る。
そう決意した朝です。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
290 / 474