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september.30.2016 同音異義語
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おお~おお~真剣なことで。
お疲れビールをしたあと、ハルはドラマ鑑賞をしない宣言をしてパソコンとにらめっこしている。
いったい何を調べているのやら。
俺は適当にスマホをいじったり、思いついたことをミネ帳に書いたりして時間をつぶしていたのだが、一向にハルが「終わりました!」を言わない。
かまってちゃんじゃないけどさ、何をそんなに真剣に調べているわけ?という好奇心がムクムク沸いてくる。誰でもそうなるよね。ネットの世界は膨大だから、そこから何を探そうとしているのか気になりまくり。
「真剣に何に取り組んでいるわけ?」
「ああ、ごめんなさいミネさん。すっきりしたくって調べているのです。」
「何を?」
「姓名判断です。」
画数でこの子の未来はこうなります!みたいなアレ?なんで今更そんなのが必要なんだろう。ハルはこういうの好きなんだろうな。この前の奴隷ちゃん診断は墓穴だったけど。
「この間のニュースがどうにもひっかかって。理さんのを調べてみました。」
「びっくりなニュースだったけど、それがどうして姓名判断なのかさっぱりなんですけど、俺的には。」
ハルは俺の問いをスルーした。まあ、いいけど。
「画数とかそういうこと、よくわかりませんけど、こういうことらしいです。
天格(祖運)は13画で大吉。
『円満 名声 人気』
人格(主運)は16画で大吉。
『人望 逆転成功 大成』
大器で幸せをつかむ人多くを受容し、そこから多くを生み出す力のある人。能力を発揮して成功できます。面倒見が良く、実力もあるため、リーダーに推し上げられるでしょう。運勢も安定していきます。
地格(初運)は11画で吉。
『幸運 富 地位』
もの静かに成長していく人
明るいしっかり者の学級委員タイプ。人間関係も良好で、良い恋人も得られます。
家庭環境に恵まれ、健康的な幼少期~青年期に。向上心が旺盛なので、何でもやらせてあげましょう。
外格(助運)は19画で凶。
『苦労 挫折 障害』
成功の維持が困難なタイプ
敵を作りやすいタイプです。才能はあってもチャンスにはなかなか恵まれません。
何事も損得だけで考えるために、挫折したときに助けてくれる人がいません。
総格(総運)は24画で大吉。
『柔軟性 順調 家庭運』
すべてに恵まれた大吉数。晩年は安泰。使い切れないほどの知的・経済的財産を築き上げる事も可能です。自分のペースで成果を積み重ねていきます。人望があるので、成功してもねたまれません。
ということで大吉だらけで、さすが理さんって感じです。ただ凶がひとつありますが、ここに書かれていることは当たっていないような気がするので無視です。」
無視・・・ですか。名は体を表すっていうくらいだし、サトルは名前と中身が伴っているってことだよね。俺たちを引っ張っていってくれるし、かといって押しつけがましくないし、正論だらけだしね。
頼りになるよ、ほんと。
「それで、ニュースの人と比較してみました。」
「ああ、それで姓名判断なわけ。」
「そうなんです。漢字が違えばこんなに違うのか!という結果だったので安心しました。」
「どう違った?」
「理さんとちがって「凶」が2つもあります。虚しさにとらわれがち、気分にむらがある。事故に注意。もちろん良い運勢もあるのですが、理さんと違っています。少し安心しました。」
「んじゃ、ハル、自分のしてみた?」
「してませんよ!凶ばっかりだったら困ります。」
「そんな凶だらけにするか?北川さんと広美さんのことだから調べたと思うけどね。」
「ですかね。」
「じゃあ、俺が見てやろう。」
ハルからパソコンを横取りして、ハルの名前を打ち込む。北川正明、はいドーン。
ドーン・・・なんだこれ、こういうの全然信じていなかったけど、名前と運命は関わりがあるってことか?
「・・・ミネさん、なんですかその顔。凶ばっかりだったんだ!やっぱりそうだったんだ!」
「いや、俺は今少々驚いていてだね、ハル、読むから聞いていなさい。」
「えええ~~。」
「ほれ、聞きなさい。
天格(祖運)は8画で吉。よかったな、凶じゃないぞ。
『勤勉 努力 成功』
人格(主運)は8画で吉。
『勤勉 努力 成功』
信念と努力で道を究めるたぐいまれな才能に加え、意志の強さで成功を手にすることが出来るでしょう。確固たる信念の持ち主で、目的に向かって努力します。チャンスをつかむのも上手。
地格(初運)は13画で大吉!
『円満 名声 人気』
明朗で活力旺盛な人気者。
文武両道の人です。明るさとおおらかさで多くの人に慕われるでしょう。物事の理解が早く、子供の頃から才能を発揮します。得意分野を見つけてあげてください。
外格(助運)は13画で大吉!
『円満 名声 人気』
明朗で活力旺盛な人気者。
人間関係に恵まれています。困ったときには、周囲からの助けを得られるでしょう。
友人に恵まれますが、人間関係そのものはあっさり。思わぬ飛躍のチャンスをつかみます。
総格(総運)は21画で吉。
『独立 統率力 名誉』
わが道を貫く指導者タイプ
男の子向きの画数です。障害を乗り越えて成功していく気概のある人でしょう。
若い頃の苦労が糧になって、大きく発展します。名誉と地位を手にするでしょう。
うわ~ほら、ハルっぽいだろ?頑張り屋さんで一生懸命だしさ、目的に向かって努力してチャンスを掴むんだぞ?素晴らしい!」
ハルは半信半疑で更に照れ臭そうという、なんともかわいい顔をしてちょこんと座っていた。一生懸命で努力家でかわいいって、欲張りすぎじゃない?
さすが北川さんと広美さんだわ。
ハルはむんずとパソコンを俺から奪い膝の上に乗せた。
「じゃあ今度はミネさんのします!」
「してして!俺ちょっと興味でてきた。どんなのか知りたい。」
「余裕ですね・・・凶ばっかりかもしれないですよ?ああ~でもそれは僕も嫌です。」
・・・かわいい・・・かわいすぎる。
ハルはパチパチ俺の名前を打ち込んだ。さて、どんな結果になりますか。
画面をスクロールしていくハルの顔がワクワクから困惑、さらに眉間に皺、そしてしかめっ面。どうやらよろしくない画数ってところだろう。
どれどれ、どうダメダメなのか確かめようじゃないの。
「凶があったわけね。」
「はい・・・一つじゃないです、それも。」
「おおお~~それはそれは、どれ何て書いてある?」
ハルはフウと息を吐きだして読みだした。
「天格(祖運)は18画で吉。
『信頼正 忍耐 成功』
人格(主運)は19画で・・・凶。
『苦労 挫折 障害』
成功の維持が困難なタイプ。努力によっては成功をつかんでも、大きなアクシデントでそれを失うかもしれません。人生に浮き沈みが多いでしょう。うまく言っているように見えても内実は苦労ばかりです。
地格(初運)は11画で吉。
『幸運 富 地位』
もの静かに成長していく人
明るいしっかり者の学級委員タイプ。人間関係も良好で、良い恋人も得られます。家庭環境に恵まれ、健康的な幼少期~青年期に。向上心が旺盛なので、何でもやらせてあげましょう。
外格(助運)は10画で・・・また凶です。
『多難 大凶』
虚しさにさいなまれる人
周囲から災いがもたらされます。危険なことには近寄らないようにしましょう。付き合う相手を慎重に選ばないと、利用されることもあり。自分の言葉には責任を持つこと。
総格(総運)は29画で特殊格。スペシャルってことですよね、きっと。
『厳格 才能 完全主義』
人並み以上の才能と感性
努力を惜しまなければ、豊かな晩年が約束されます。才能におごらないこと。
他人をあまり批判しすぎると援助者を失います。寛容になれば運が開けるでしょう。
三才配置は『金⇒水⇒木』で大吉!
努力しなくても人生が順調。
目上から可愛がられ、すべてが順調に進みます。就職も簡単に決まりますが、仕事よりも趣味に没頭する面も。家庭運、晩年運も安泰。でもミネさんは趣味も仕事も料理なので、没頭なによりって事ですからSABUROは安泰です。
ところどころ当たってないです、僕はそう思うな~。」
なるほど、凶がふたつでさらに特殊格ときたもんだ!
でもね~いいことは素直に信じて、よろしくないことはその裏を見るっていうのが俺の主義だからね。しょんぼりハルを元気にしてやらないと。
「浮き沈みがあって、うまくいってそうに見えても苦労ばかり。でもこれってさ、当たり前のことなわけ。第一やってる仕事が水商売なんだから、浮き沈みが基本だろ?
今のSABUROの数字は右肩上がりで推移しているけど、その裏には努力と苦労があるわけだし。
んなことで凶とか言われてもな。」
ハルがパチパチ瞬きしたあと、ほっぺが少し赤くなった。
「なに?俺変なこと言った?」
「・・・いえ、前向きなミネさんが格好良くみえちゃって。」
くぅぅぅ~~~!!!
ガシャガシャにしてやりたい!でも今それをしたらハルの抱えているパソコンごとガシャガシャになってしまうので踏みとどまった。
「あとはどれだっけ凶。」
「虚しさにさいなまれる人って書いてありますね。」
「でも俺それは当たってるよ。だってずっと虚しい感じだったもんね恋愛に関してはさ。災いとまでいかなくてもハルをしょんぼりさせちゃった事もあったし。でも家族に恵まれて、素敵な恋人ができますよって書いてあったし。
自分はそういう傾向になるのかな、凶っていう少し弱い部分を持ち合わせているけど、それを強化すればいいだけの事だ。運命っていうのは自分で切り拓いて変えていくものだし。
去年の俺はダースベーダー一色の暗黒星雲の民状態だったけど、今年は違う。
よくわからない関係の相手がいなくなって、ちゃんとした恋人がいる。
努力家で一生懸命な恋人さんがね。だからきっと俺が迷ったり助けがほしいときには力をくれるだろうから、安心。」
「むうう・・・そんな事スラスラ言えてズルいです!」
「スラスラも何も思ったことだからスラスラなので~す。」
「もおお。」
「ハル、北川正明で検索してみなよ。」
「僕の名前ですか?」
「そうだよ。」
ハルは自分の名前を検索するためにキーを叩いた。
「へえ、けっこういるんですね、同姓同名の人。」
「なにやってる人?」
「タイの繊維事情?論文書いている人みたいですね。マックフォトグラフィア・・・工作クラブの人、お医者さんもいますね、論文書いています。」
「同じ名前だってみんな違う人生を送っている。今回はサトルの件で不安になったのは俺も同じ。でもハルと話していて俺も安心できたよ。
サトルはサトルだ。ほかの「さとる」と人生は重ならない。今日はいつもの飯塚だったけど、正直昨日は暗かった。たぶんあいつらも二人で言葉を交わして気持ちを切り替えたってところだろうな。
俺達は姓名判断を切っ掛けにして前向きに生きていればいいことあるさってところに落ち着いた。
普通に毎日目が覚めておやすみ言うまで過ごせるって幸せなんだよって、時々思い出さないといけないよね。」
「ですね。」
「あとさ、おじさんと親父の気持ちが少しわかった気がするんだ。いなくなっちゃうってどんだけ怖いのかってこと。
俊己おじさんの命日は定休日なんだけど、誰もいない店に一人でおじさんを座らせておくのは忍びない。青いグラスとカラーの花に向かって一人で酒のませちゃいけないと思う。」
「・・・そうですね。僕も行きます。」
「休みがつぶれちゃうけど。」
「たぶん理さんも飯塚さんも勿論トアさんも来ると思います。」
そうだな、皆来てくれるだろうな。おじさん以外実際にはあったことのない存在だけど、SABUROにとってとても大事な人だし、一年に一回くらい楽しんでほしい。ついでに俺に逢いにきてくれないかなっていう淡い期待もある。なんでサトルに顔見せて俺には見せないのかがわからない。
なんとなく予想外のことをしでかす人のイメージがあるから、今年はどんな登場になるのだろう。
そんなことを考えて少し楽しくなってしまった。
「頑張ろうにも無理で、苦しいことを乗り越えることもできないまま逝ってしまった人は沢山いる。だから俺達は頑張ったり悩んだりをいっぱいして少しずつ前に進めばいいと思う。
そしてハルが俺の凶を小吉くらいにまで引っ張り上げてくれれば嬉しいな。」
「控えめですね、僕は大吉狙いです。絶対大吉にしてみます!」
「お!さすが努力家、目標に向かってGOだな!」
笑い合って、気持ちをくれる相手と過ごせる夜。
当たり前のこの時間がとても愛おしい。
それは愛おしいと思える存在がくれる特別な時間。
魔法みたいな素敵な時間。
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