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december.7.2016 お悩みのハル
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「真剣だな、正明。」
スマホと睨めっこしていた僕は理さんの声で顔をあげた。
「切羽詰まってきました。」
「いったい何事?」
何事・・・それはクリスマスです。去年のクリスマスを一緒に過ごして、来年もクリスマスしようなって言ってくれたミネさん。マグカップのお返しをくれるって約束してくれたあの日。
あれから1年がたって、まもなくクリスマスがやってくる。僕のアイディアが形になったクリスマスBOXは今年もラインナップに入っています。「去年より予約が入るといいな~。」って言ったらミネさんがニヤっと笑った。
「他人事だね~ハル。今年は厨房チームに編入するんだから覚悟しておきなさい。」
「・・・でしたね。」
予約は増えるのは嬉しいけれど、厨房チームとともに殺気立つことになるのは・・・不安です。でもやるしかないですよね。だからプレゼントは早く決めちゃって手配したいのです。街中で手に入るものなら中休みに買って隠しておくことができます。でも通販の場合、届く場所が家だと「お、プレゼントかな?」ってミネさんに見られてしまいます。大きさとか重さの情報が漏れてしまうわけです。僕はひそかに飯塚宅かトアさんの所を送付先にしてしまおうかと考え中。
デリバリーの心配よりもプレゼントが決まらないと全て台無しですよね。あ~困ったよう!
「クリスマスプレゼントです。」
「あ~ミネの?」
「ですよ、他にいません!理さんはもう決めたんですか?」
理さんはコクリとラテを飲んでからゆっくり首を振った。え?まだ決めてないの?僕と一緒ですね。
「俺達クリスマスしないの。同じこと充さんにも聞かれたな、そういえば。」
「え~誕生日、クリスマス、バレンタインが三大イベントですよね?」
「世間的にはそうなのかもね。でも俺達は違う。」
理さんは左の手のひらを上に向けて右手の人差し指で指を折り始めた。まずは親指。
「イベントその1。バレンタイン。チョコは正明がくれるから甘いものはそれで充分。お客さんに貰ったのは翔君にあげるしね。2/14は俺達の「お付き合い記念日」だから結構大事。」
お付き合い記念!!
僕たちはいつになるのかな?「なにそれ~」連発のあの日?それとも・・・放置された後の「泊りにいっていいですか?」がそうなるのかな?うわ~どっちかな。
理さんにおでこをコテンと突かれた。
「何考えてたのか大体わかるけどね、デレデレしちゃって。」
・・・おはずかしい。
「イベントその2。俺の引越し記念日。ええ~とこれは委細は省く。こっぱずかしい事を言う羽目になるからね。」
こっぱずかしい・・・記念日ですか。どんな恥ずかしい日なのか聞きたいけど無理強いしたら怒り出しそうなのでやめておきます。理さんいつ引越ししたんだっけ?忘れちゃった。
「イベントその3。誕生月の11月。ほら、これでちゃんと3つあるだろ?」
親指、人差し指、中指が折られています。3つありますね。でもなんでクリスマスがないのかな。
「3つですけど、クリスマスを抜かなくてもいいかなって気がします。」
「なんかもうね、疲労度MAXじゃん。クリスマスだって浮かれたそのすぐあとには大晦日が待ち構えているし、ミネじゃないけど気持ちがドーンとなるだろ?クリスマスしなくたってすぐ2月はやってくるし。
雪まつり終わってホッとした後の14日のほうが断然いい。」
「人それぞれなんですね。」
「まあね。プレゼントもだいたい俺達が二人で使うものが多いかな。」
「使うものですか。」
「そ、引越し記念日はカトラリーと水切り象さん。」
「え?・・・あの押し入れにいれて除湿しますっていうアレですか?」
またもやオデコをコテンされました。ですよね・・・そんなプレゼントあるわけないです。しかし水切り象さんってなんだろう。理さんが買ったということは調理道具ではなさそうなのにキーワードが水切り。
う~む、謎だ。今日のお疲れビールの時にミネさんと調べてみようっと。
「あとはワインのデキャンタとか、ワイン6本、10本のセットとか。次は何がいいかな。そのうち家電とか日用品がプレゼントになったりして。
そういや衛は日記帳をプレゼントにしようとしたみたいでさ。」
「日記帳?日記帳ですか?」
「そ、ミネが日報がわりに書いているじゃない。3年分書き込みできるアレ。去年と今年と来年が同時に存在しているのが素敵に思えたとか何とか。結局衛が自分用にそれを買ってコツコツつけてるよ。
でも去年の今日はどんな日だったかって読むと面白かったりする。あ~こんな事あったねとか、ああ、こういうお客さん来たねとか。書いているのは衛だけど、結局は俺達の為になっているから、プレゼントでも悪くなかったかも。ただ俺が毎日つけたかどうかは・・・自信がないけど。」
日記帳・・・か。ミネさんはお店の日報として書いている。じゃあ僕は飯塚さんみたいに自分の時間を書き記すのも悪くないって思っちゃいました。毎日書いて時間が重なっていくことを実感できるアイテムって実は少ない。写真や動画?それも立派な記録だけど、その日のハイライトを必ず撮れるわけじゃない。でも文字は違う。今日僕が思ったこと、得たことを残すことができる。
うわ、ものすごく欲しくなっちゃった。
「バレンタインまで時間があるから、ぼちぼち何にしようか考えればいいけど、クリスマスはもうすぐだ。いいアイテムが見つかるといいな。」
「そうなんですよ。何がいいのか本当に悩みます。」
「だな~服とか?貰ったら嬉しいけど、正直着ていく場所がほとんどない。SABUROに来るまでと家に帰るまでだ。あとは休みの日?出かけなくなったな~飲みにいくことも激減したし。
収入が減ったせいもあるけど物欲なくなったよ、俺。」
「そうですか。」
「うん。好きなブランドのスーツカッコいいな!このネクタイ欲しいななんて毎日思っていたし、ボーナスでたらスーツかったり服買ったりさ。高い時計に憧れたり。全然ないの今。着ていく場所がないのもあるけど、見苦しくない程度にちゃんとしていて、着ていて気持ちがよくて、流行に左右されない服。それが少しあればいいなって。」
「それは思います。引越ししたときに処分した物や服がけっこうあったじゃないですか。そのせいか本当に欲しいもので長く使えるとか着られそうなものを選ぼうって思うようになりましたね。」
「そうだよな。物を増やさないようにしても少しずつ増えるからね。1年たって一度も着なかったとか使わなかった物は捨てる。そのせいもあって買うとき考えるかな。その点ワインは罪がない、もれなく胃袋に消えていくから。」
いえ・・・それは論点が違いますよ、理さん。
「包丁もいいなって考えましたけど、飯塚さんの専売特許の真似みたいですよね。」
「というか俺だよ、買ったの。」
「ええ・・・でも包丁といえば飯塚さんですよ。」
「まあ、大事にしてくれているよな。」
なんですか、そのまんざらでもないよって顔。
「ミネさんが使えるものがいいのかな。」
「二人で使えるものにすればいいかもよ。服でペアルックは恥ずかしすぎて罰ゲームみたいだけど、お揃いの物があってもいいじゃない。衛の選んだカトラリーはナイスだったよ。」
お揃いの物・・・か。
「衛を見ていると思うけど、食べる事に関係している物を選ぶ傾向にあるかな。100均のフォークと何が違うの?確かに格好いいけど、っていうのが俺の最初の感想。でも使うと手に馴染むし感触がいいんだよね。やっぱりいいものは違うんだなって。
たぶんミネもずっと料理が生活の中心だから、そっち方面は喜びそうじゃない?」
「ですね!理さん、ありがとうございます。」
「いえいえ、どういたしまして。いいもの見つかるといいな。」
「はい!」
二人で使う
できれば毎日
そして・・・お揃い
一つ浮かんだものがあります。たぶん検索したら何万件もヒットするはず。
でも絶対見つけます。僕たちにぴったりで、ミネさんが喜んでくれるものを。
勿論僕も嬉しいって思えるものを。
スマホの画面じゃちいさすぎる。今日は少し夜更かしをしよう。パソコン画面で細かいところまで確かめなくっちゃ。
あ・・・その間に「水切り象さん」の検索かな?
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