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december.25.2016 トアの25日 深めの夜
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「こんな遅くにすいません。」
僕の心臓はバックバクです。
「いいえ、だってもうこの時間から何処かに出かけるのも億劫だし、トアさんは疲労困憊でしょう?
店長がスタッフ全員にスパークリングワインを1本ずつクリスマスプレゼントにくれたんです。一人で一本は無理だからどうしようかなって困っていたところだったので。」
少し前、気が変わらないうちにと握ったスマホ。
僕の電話に坂口さんはハキハキといつもの明るさで答えてくれた。
『じゃあ、私の家に持ってきてくれませんか?』
その言葉に僕は口から心臓がでそうになりました。いえ!断じてやましいことを考えたわけではなく、単純に驚いたのです!あまりの予想外の展開・・・ですよね。お断りするなんて失礼なことはできないし、するつもりもない。それでお言葉に甘えて初めて坂口さんのお宅訪問となりました。
「そんなキョロキョロしないでくださいよ。たいした部屋じゃないのに。」
「いえいえ、そんなことありません。白が基調のインテリアですね。」
「インテリアなんて大げさですよ。お値段以上~の家具です。部屋があまり広くないので、トーンを揃えて圧迫感を減らしたいなと思って。天井があまり高くないので、低めの家具を選んで胡麻化しています。」
生成りのカーテンが坂口さんらしいな、とか。
あのデジタルの時計、格好いいけど可愛いな、とか。
ちょっとキョロキョロしすぎました。
「じゃあ、乾杯しましょう。」
「そうですね。」
「ワイングラス持ってなくって。」
坂口さんはそんなことを言いながらワインを注いでくれた。
「ワイングラスじゃないグラスでワインをがぶ飲みする二人を知っていますので問題ありません。」
「へえ~。お店のスタッフさん?」
「ええ、です。理さんと飯塚さんですね。」
「格好良くてお酒も強いんだ。」
僕は・・・格好良くもなく、アルコール耐性は普通です・・・はい。
坂口さんはクスクス笑う。
「トアさんって嘘が下手そう。大丈夫、十分格好いいですから。」
ドッキーン
いやはや照れます・・・でも嬉しくもあり、なんだかふわふわしてきました。
「じゃあ、乾杯しましょう、お疲れ様です!」
「お疲れ様です。」
メリークリスマスって言えばよかった・・・。
落ち込んでいる場合じゃない。ミネさんのミッションを忘れては大変です。
「これを食べてもらうために来たのに。すいません。」
持ってきたBOXをテーブルに置いて蓋をあける。
「うわ~きれい、美味しそう!これでお幾らですか?」
「一人前¥1080。出血大サービスです。」
「これと同じものを作るのに材料買ったら、それ以上になっちゃう、絶対なります。」
「そうですよね。僕も確実にオーバーですね。」
ミネさんと飯塚さん、そしてハルさんががんばったBOXはとても美味しかった。僕のお気に入りはテリーヌ。よくこの時期スーパーの食料品売り場に真空のテリーヌが並びますが、美味しくないイメージでした。でもこれはおいしいのです。ミネさん得意のお豆腐を駆使したらしい滑らかなテリーヌ。一人1切れといわず5切れくらい食べたい。
向かいに座る坂口さんの笑顔、真剣に味わう表情、注いでくれるワイン。
坂口さんとの食事はいつも楽しいですが、今晩はそれにドキドキが加わっています。でもそれと同じくらいホっとするような何か。
そしてスパークリングワインがこれほど美味しい飲み物だったとは!理さんと飯塚さんがゾッコンなのはこの美味しさなのですね。
ゾッコンはお互いで・・・あれ?ハルさんとミネさんもゾッコン。いやまて違うぞ、ゾッコンはワイン?あれ?
「トアさん、顔が赤いですよ。」
「え?ですか?楽しいからですよ、きっと。」
「酔っ払っちゃったとか?」
「大丈夫です。このワイン美味しいですね。」
「食べるものが美味しいとワインも美味しくなるのかも。」
かもかも~~かもかも~~
なんか僕、大事なこと忘れているような気がするのですが
あれ?なんだろ。ミネさんに感想聞いて来いと同じくらい大事なこと言われたような・・・
ような・・・
ああ・・・もうなんか・・・ああああ・・・吸い込まれる
ZZZZZ
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