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jan.25.2017 旅のしめくくり
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「楽しかった?」
「はい!」
正明は「嬉しい」が炸裂した顔をしていた。二人で時間を過ごす、これは当たり前にしてきていることだけど、やっぱり旅に出るって全然違うよね。俺もそう思ったし。
帰りは同じ便だから当然一緒に行動。あっという間の休暇。でも限られた時間だからこそ楽しめた。そう考えるほうが悔やむよりいい。
飛行機は遅れることなく無事に飛んだ。帰り道が順調って・・・やはり少し寂しい俺。
「サトル、飯塚と俺店に行くわ。」
「え?今から?」
「明日早出で仕込みするより、アドレナリンがでているうちにやっつけようって話になった。
2~3時間で終わるし、明日の朝が楽なほうがいいし。」
「理、荷物持って先に帰ってくれるか?」
「はあ、何言ってんだよ、俺も行くよ。ドリンク関係まとめておけば、俺も明日少し楽だし。」
「ミネさん、僕も行きます!お手伝いします。」
地下鉄代金とたいして変わらないということで札幌駅から全員タクシーに乗り込みSABUROへ。
疲れは後から出てくるだろうから、明日の朝が楽なほうがいい。厨房チームは年始開業前日に出勤して仕込みをしている。足りないものを補う日々の仕込みと違って、全部作るわけだから大変だ。そう考えると同じ月にそれを2回というのは・・・改善点だな。次は時期を吟味しよう、絶対に。
「あれ?電気ついてますよ。」
「あれま、ほんとだ。」
SABUROの店内はダウンライトだけが灯っていた。
タクシーのトランクからキャリーを出しながら衛はチラと店をみてニヤリ。
「なんでトアが出て来てるんだ?誰か連絡したのか?」
ミネと正明がぶんぶん首を振る。衛は俺を見て「しないよな。」と呟く。
「なんで俺達が来るってわかったのかな。」
そして京都組がぞろぞろ連なり店内に。ドアを開ければ「いらっしゃませ!今日はまだ・・・あれええ!」というトアの声に出迎えられた。
あれええはこっちのセリフだよ!
「どうしたんですか皆さんお揃いで!」
「お揃いというか仕込みを今日の内にしちゃおうって飯塚と決めたら、サトルもハルも来るっていうから。てかなんでトアは来たの?」
トアは普段着にギャルソンエプロンだけをつけた格好だった。手にはモップ。
「掃除だけでもしておけば明日皆さんが楽かなと。旅行って行く前はいいけど帰ってくると意外と疲れているものです。お留守番チームとしてはそのくらいしようかと思い立って30分前くらいに来ました。」
お留守番チームって・・・一人じゃないか。心なしか皆の顔が曇る。たぶん全員「悪いなトア、今度は一緒にいこうな。」と心の中で言ったはずだ。
「よっしゃ、じゃあ全員いることだし、やれることやってしまおう。ハルは厨房入ってくれるかな。んでサトルはホール全般よろしく。今日のうちにおすすめ決めちゃうからコピーまでできるようにする。」
「了解。」
ミネの一言で活動開始。たぶん明日は「昨日来てよかったな~」と言い合っているはずだ。
そこからホールと厨房にわかれて作業。トアは掃除の続き、俺は発注のリストアップや備品のチェック。留守番電話とメールをチェックして予約状況を整理することにした。
「京都はどうでした?」
トアがクロスを整えながら言う。
「ん~どうって楽しかったけど。ただすごい人だったよ。次回は時期を考えなくちゃ。」
「それはここも一緒です。雪まつり別会場がオープン間際ですから。」
「・・・え。」
「雪のない東南アジアからの観光客が多いみたいですよ。」
えええ!ここもなの!札幌も?
「雪まつりって2月の連休あたりがピークじゃないの?」
「それは大大ピークですよ。爆買いが下火になってきて最近は体験型が人気らしいじゃないですか。それでツドーム会場の雪の滑り台やボールの中に入って雪のなかゴロゴロするとか。雪像だけが雪まつりじゃないって事らしいです。午前中三井アウトレットをぶらつこうかと札幌駅のバス停にいったらありえない人数が並んでいたので行くのやめました。」
「ってことは雪まつり軍団がもう来ているってこと?」
「到着済です。それとあまり考えたくないのですが。」
「なに・・・言っちゃってくれるか、トア。」
「雪まつり終わってすぐ冬季アジア大会です。」
「あ・・・。」
トアが悪いわけじゃないのに申し訳なさそうな顔。俺も申し訳ない気持ちになる。
「休んだ分を取り返すには・・・十分な人が札幌に滞在するってことだね。」
「ええ、頑張りましょう!」
「・・・うん。」
今年はバレンタインデーでウキャウキャする元気があるだろうか・・・。
旅行気分はすっかりしぼむ程の現実!そうかああ・・・・雪まつりのあとはアジア大会かああ!沙羅ちゃんやフィギュア選手も来るよね。それを見に人くるよね・・・世界中から!
真面目に2月の予約の割り振りを考えておかないとフリー客と相まって大変なことになる。2月はずっとインターナショナルな札幌ということか。
ミネの言う通り3時間弱で厨房チームは目途がついた。正明がコーヒーをいれてくれたので皆でテーブルに着席。
「トアにお土産買ってきたぞ。リサーチはハル、気に入らなかったらハルに文句を言うべし。」
「いえいえ、お土産に文句なんていいません!」
「あ~そんなこと言っちゃっていいの?どうするよ、変なお面だったら。」
「・・・京都にお面なんかないはずです、きいたことありません!」
「はい、トアさん、お土産です!」
正明がテーブルに置いた紙袋を有難そうに受け取るトア。俺も中身が楽しみ、この二人何を買ったんだろう。
トアが袋からとりだしたのは、ど定番の漬物セット。
「お漬物ですか!」
「はい、僕が食べたい!を基準に選びました。全部試食して美味しかったから味は保証します。」
「ありがとうございます!普段漬物って買わないじゃないですか。これは楽しみですね。つまみにもいいですし。ギョニケチャと並べれば豪華おつまみセットになります。」
トアが漬物を袋に戻している間に俺も取り出す。・・・ごめん、充さんの鉄板土産と同じです。
「これ、俺と衛から。」
「ありがとうございます!」
トアがニコニコしながら包みを受け取り中身を取り出した。
「こちらはちりめん山椒!ごはんが美味しく食べられそうです。こちらは・・・梅昆布茶。スーパーで売っているのとまるで違う高級感!」
「それ、福寿園のなんだ。伊右衛門のところ。」
「へえええ!梅昆布茶と漬物にちりめん、もうこれで立派な晩御飯になりますね。こんなこともあろうかと、僕も持ってきてよかった。今お持ちします。」
トアは立ち上がりバックヤードに消えた。「僕も持ってきてよかった」って言った?
「トア、何を持ってきたんだろ。」
「DVDですかね。」
「いや~~ハル、この場でDVDはさすがにないと思うよ?」
「ですよね・・・なんだろう。」
トアが戻り、俺達の前にそれぞれ包みの違うものが置かれた。俺と衛の前には長細い紙袋。ミネと正明の前にはこじんまりした箱。
「ええ・・と?トア、これは何?」
箱を指さしながらミネがキョトンな顔で聞いている。俺も思った・・・ん?俺達の前に置かれた紙袋にはレイクサイドの文字・・・レイクサイド?聞いたことあるぞ、なんだっけ。
「僕も皆さんにお土産です!」
「え?」
「は?」
「土産?」
・・・・レイクサイド・・・レイク・・・ああああ!!!
「トア、これって洞爺か!」
「さすが理さん、大正解です。」
「ええええ!トア?洞爺って温泉行ったのか!!!ええええ!!」
「ミネさん、僕だって温泉ぐらいいきますよ。」
「ってことは何、しっぽり温泉してたのか?」
トアの顔が赤くなる。
「うわ~~赤くなるな、俺が恥ずかしい!」
「じゃあ、言わないでください!」
なんだろう、この肩の荷がすっと降りたような感じ。ああ・・・よかった、トアも楽しい休暇していたんだ!っていう安堵。
「トアさん、メールくれてもいいじゃないですか!」
「いやいやいや、ハルさんの邪魔はできませんよ。それになんてメールするんですか。温泉にいま~すって?そんな恥ずかしいですよ!今ですらこんな恥ずかしいのに。」
「よかったなトア。」
衛が笑顔で言うから、トアの顔がさらに赤くなった。じゃあ、お土産中身をみましょう。
紙袋からでてきたのは・・・「いぶりがっこ」だった。
「いぶりがっこ・・・って東北の漬物だよね。」
「理さん!そうなんですよ。でも登別でも洞爺でも必ず売っていますよね、何でだろうといつも思っておりまして。」
「俺も思ってた、それで何で?」
「それはわからず仕舞いです。」
「・・・あ、そう。」
「でもこれを見たら、お二人にピッタリだ!と思い当たりました。いぶりがっこ&クリームチーズは必殺のおつまみらしいじゃないですか。もうこれしかないですよ。」
「漬物とクリームチーズ?なんかな~美味しいのかな。」
「発酵食品だから合うと思う。それにスモークしてあるから美味しいはず。」
「村崎の言う通りだ、家で試してみれば答えがでるさ。」
料理担当二人がそう言うなら・・・そうなんだろう。
「うわ、美味しそう!」
正明が箱からとりだしたのは陶器に入ったプリン。
「手作りで、ホテル近くのカフェで作っているらしいです。販売数が少ないので朝一でゲットしました。」
「うわ~トアさん!ありがとうございます。」
「うわ~~トアさん!ありがとうございます。」
「・・・ミネ、気持ち悪いよ。」
「冗談はさておき、トアありがとうな。なんだかんだで皆楽しい休暇を過ごしたってことだ。そして俺達は前倒しで仕事もやっつけた。ってことは、休暇の締めくくりは皆の土産話がいいと思うわけ、皆でどっかで話に花をさかせるってのはどお?」
「ミネ、大賛成!行こう行こう。」
皆ガタガタと立ち上がる。
衛がニヤリ。
「トアの話を俺はたっぷり聞きたいな。」
トアの顔がボンと赤くなった。衛も意地が悪いけど、いちいち赤くなってるけどトア・・・なにを思い出して赤くなってるのかな?俺も聞きたいよ、そのあ・た・り。
自然にここに集まり、全員で休暇を締める。そしてまた明日からSABUROに来たお客さんたちが笑顔で帰ることのできる、そんな仕事に戻る。
ああ、帰ってきたんだな俺。
頑張るか!また明日から
皆さん「ただいま!!」
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