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apr.28.2017 大事で素敵
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「おかえりなさい。」
「ただいまです。」
どちらかの家に帰る。仕事が終わったあと一人で過ごすことはほとんどなくなりました。僕は合鍵を持っていませんが、坂口さんが僕の部屋の鍵を持っています。女性の留守宅に入り込むというのがどうにも居心地が悪いので、合鍵はお断りしました。ちゃんと理由は言いましたよ?
女性の留守宅に独りで居るのは気が引けますってこと。あと坂口さんの方が帰りが早いので、僕がどちらに帰ればいいか教えてくださいと伝えました。
『今日は家に帰りました。』
『トアさんの所で待っています。』
そんなメールが毎日くるだけで心がウキウキします。そして帰宅すると必ず「おかえりなさい。」が待っている。「は~疲れた。」「コメントチェックしないと。」そんな独り言しかなかった僕の時間が一変しました。一日の締めくくりと一日の始まりを一緒に過ごすって、実にシンプルですがとても素敵なことだと思うのです。
独り言とDVDで過ごす寝るまでの時間・・・にはもう戻れません。
「お疲れ様でした。」
「坂口さんもお疲れ様でした。」
「着替えて楽になってくださいね。」
坂口さんはもう着替え済です。ガーゼ生地のルームウエア。ひざ下丈のパーカーワンピースです。サイドに大きなポケットがついていて、これを着ている姿はとても可愛い。手触りがいいので、僕も真似をしてガーゼ生地の長Tとウエストが紐のパンツを買いました。軽い、通気性抜群、そして柔らかい。いいとこだらけで最近のお気に入りです。
着替えてソファにポスンと座ればテーブルの上にはグラスがあります。シュワシュワした炭酸飲料に氷が浮かんでいる。
「今日は何味ですか?」
「シークワーサーです。」
ビールもスカッとしますが、疲れた体にはチューハイがいい。もともと坂口さんが飲んでいたので真似をしたら、これがなかなか・・・真似ばっかり?(そこは突っ込まないでください)
カチンと乾杯して今日二度目の「お疲れ様」を言って一日を労う。コクリと飲み込む炭酸が気持ちいい。けっこうドライですが甘みがあるのでクイっと飲めてしまう。しかもアルコールはビールより高いので、それなりにフワフワできるので、なかなかお得な飲み物ですよ、おすすめです。
「何杯もドリンクを作るせいか、こうして用意されているとホッとしますね。有難い度100%です。」
「大げさですよ。プシュっとしてグラスに注ぐだけなのに。」
「それを言ったら僕だってプシュっとしてドボドボ注いでステアするだけです。」
「お店で飲んだゆず酒のソーダ割り、おいしかったですよ。」
「あれは評判いいですね。日本酒ベースなので、油断してはいけません。」
「そうなんですか?」
「アルコールも13%ありますし。一升で3000円オーバーなだけあって美味しいです。ロックで飲む方もいますが、顔真っ赤になりますから。」
「うわ~気をつけなくちゃ。」
坂口さんはお酒を楽しみながら飲むタイプでガブガブ飲むようなことはしません。僕も強いとはいえず、並みの下ぐらいでしょうか。ミネさん命名の「ザルカップル」のお二人は平気な顔をしてガブ飲みです。いっそのことジョッキでワインを飲んだらいいのでは?デキャンタ感覚でワインをジョッキで・・・今度提案してみましょうか。理さんがイヤ~~~な顔しますね、絶対。
「今日お客さんとお花見の話になって。」
「函館で開花!がトップニュースの局もありましたしね。」
「札幌も早い所では少し開いた木もあるみたい。」
「9日まで花残っているといいのですが。」
「ですよね。そのお客さん行ったことがあるみたいで、迫力満点だって言ってました。ず~~と並木なんですよ!って。写真見せてもらいましたけど、本当にずっと続いているんですね。」
「両側の桜の真ん中が道路で、その先に山脈が見えます。青い雪山がピンクの桜と綺麗なコントラストで。一度見たら忘れられません。そしてまた来年もこようって思ってしまう。」
「楽しみです。」
「皆さんも坂口さんに逢えるのを楽しみにしているみたいですよ。」
「えええ!緊張しちゃう。」
「大丈夫です、皆さん優しいですから。」
SABUROはジェントル軍団ですから心配無用です。
「明日からGWですね。で・・・終わったらお花見。なんだかドキドキしてきました。大丈夫かな私。」
「大丈夫に決まっています。今だって最高に可愛いですしね。そのパーカーワンピースに並ぶアイテムを探しましょう。」
「ワンピースが可愛いってことですよね~」
「僕がそんなつまらない事言うと?」
「いいえ、思ってません。言ってみただけです。」
ぐうう・・・むうう・・・・
僕はグラスに残っているシークワサーチューハイをグビグビ飲み干した。
「歯を磨いてきます。」
「今日は早いですね。」
「まだ寝ません。」
「DVD?」
「いえ、坂口さんと話をしながらいつの間にか眠ってしまった・・・というのが好きなのです。だからそれをするつもりです。」
坂口さんはクスリと笑って僕の手を握った。
「わかりました。続きはベッドの中ですね。」
ぐうう・・・むううう・・・・
「私も歯磨きしよっと。」
特別話したいことがあるわけではない。でも今日の出来事や感じた事をポツポツ話していると少しずつ眠くなって・・・いつの間にか今日が終わる。そして新しい朝を迎えるっていいですよね。
僕にとってはとても大事で・・・素敵なことなのです。
手触りのいいガーゼの服を来て連れ立って洗面所に向かう僕達。
華やかさとは無縁の僕ですが、毎日がきちんと流れていく充実感を手にしました。どんな格好いい服よりも、どんなに立派な住まいよりも大事な物。
「手を繋いでいたら歯みがきできませんよ。」
そう言って微笑む坂口さんは・・・大事な人。
何よりも、誰よりも
・・・自分自身よりも。
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