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june.12.2017 MONDAY
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あああ……目が覚めちまった。
一週間で一番億劫な月曜の朝。ここからたっぷり勤労の日々が始まる。たかだか5日だっていうのに週末が遠く感じるのは、月曜特有だろう。そして俺だけではなく世界中の大部分が「ああ~また今週が始まるのか」とため息をついているに違いない。
横で眠っているヒロをギュウと抱きしめる。仕事くらいきちんとできないと愛想をつかされそうだ。それは困るから起きるとするか。ヒロを起こさないように、そろそろとベッドを抜け出しキッチンに向かう。
「フアアア~~」
気の抜けたあくびをしながらコーヒーのセット。週末はヒロが淹れてくれるが、平日は自分の分を用意する。そのあとは手早くシャワーを浴びて身支度を開始。
今年はなかなか暑くならない。スーツにネクタイだと涼しいくらいでちょうどいいが、秋が来る前に夏を感じたいとも思う。暑くなれば一気に生産性が落ちる北の人間でも、短い夏を楽しみたいという気持ちは持っている。
今年はヒロとビアガーデンに行ってみるか。どっちにしろ休みの日は朝からビールを飲んでいるから屋外でジョッキをガチンと合わせるのは気持ちがよさそうだ。
スーツの上着を片手にキッチンに行きコーヒーをマグカップに移す。リビングのソファに座りニュースを見るためにテレビをつけるとヒロが起きて来た。
「おはよ」
「おはよう。まだ寝ている時間だろ?具合悪いのか?」
ヒロは首を横に振りながら俺の隣にストンと座った。
「コーヒーの香りで目が覚めた。一口もらってもいい?」
「何口でも飲めよ。淹れてこようか?」
「んん……いやいいよ。あとで淹れるから。でも一口が欲しい、美味しそう」
ヒロはマグカップに手を伸ばした。寝起きのヒロはちょっとボケボケしていて可愛くみえる。身支度を整えてサラリーマンモードの自分と比べるから余計にそう感じる。
「おいしい」
ヒロはマグカップをテーブルに置くと、俺の身体に腕をまわして頬にキスをくれた。何回同じ朝を迎えても、ヒロの存在は俺の気持ちを優しくさせる。
「月曜か……また今週がはじまる」
「そうだな、今日から5日働くことになる」
「俺なんか6日だぞ」
「拘束時間を計算したら俺のほうが働いている」
ヒロは指を折って数え始めた。19:00~1:00、これが「bright」の営業時間。準備と後片付けで7~8時間ってところだな。俺は9:00に始業して定時は17:30。その時間にあがることはマレだから10時間以上働いている計算だ。
「ほんとだ、儀の方が働いている」
「時間を比較しても意味がないだろうな。あまりに職種が違いすぎる」
「だね。月曜はいつもより忙しい?」
「毎朝軽いミーティングをするが、月曜は先週の確認と今日の動き、次週の予定、今月の進捗状況を打ち合わせする。やるべきことを進める為には必要だからな。それが終わってから業務を開始。いつもより忙しいというより、現実を把握して気を引き締める」
「ちゃんとしたサラリーマンだ」
「当たり前だろ。ヒロは月曜ヒマだろ?」
「まあね、週の前半はゆったり。半ばから週末にむけてドーン。YOSAKOIも終わったし、今週は流れ客もいないだろうね」
YOSAKOIの評価は真っ二つに分かれている。まったく興味がない派と熱狂派。今は世界中から参加者が集い、会場も増えたようだ。何年か前はテレビ局全局が中継していたが、それはなくなった。
地下鉄で会場を移動する踊り子集団で車両は溢れ、大通は通行止めになり人で溢れる。できるだけ近づかないことにしているのは俺だけではないだろう。YOSAKOIの参加者、観光客が200万人以上やってくるから札幌市の人口はいっきに倍に跳ね上がる計算だ。雪まつり同様、祭り期間はおとなしくしているに限る。
「キイちゃんのところ忙しかったんじゃないかな」
「だろうな。ネットで検索したらエライ数ヒットしたぞ。個人のブログや書き込み、画像もたくさんあったし。メガネ男子の番組のサイトにもコメントついていたな。でもHPやスタッフブログはなかった」
「そこまで手がまわらないんじゃない?ネットで予約できるシステムにしたら管理も大変だし、HP作れば更新しないとね。今だって十分賑わっているから手を広げる必要がないのかも。あまり繁盛して予約が取れなくなるのは勘弁してほしいし」
「それもそうだな。そういやさっき思いついたんだ。今年はビアガーデンに行こうぜ」
「暑い日の昼間、外で飲んだら頭が痛くなるって」
「ジョッキ2杯くらいだよ。炎天下で深酒は俺だって嫌だ。散歩がてら大通に行ってブラブラしてビールを飲む。枝豆ぐらいしか食べ物ないだろうけど」
「客が言ってたけど、結構増えたらしいよ」
「へえ、そうなのか。会社のヤツとも行かないし、すっかりご無沙汰。でもヒロとなら行きたい」
「……俺も」
クタリとヒロの身体が俺に傾く。横並びのポジションがよろしくない気がして、アームにクッションを乗せて横になった。ヒロの腕をひっぱると、そのまま俺に重なる。腕を回して抱きしめると、力の抜けたヒロの体温が伝わってくる。
くっついているだけで気持ちがいい……一緒に暮らし始めてわかったことがある。小さいことでも幸せだと感じられるようになるってこと。
「月曜日は早起きしようかな」
「なんで?」
「よし、今週も頑張るぞって意味で」
「そうだな、ヒロの顔を見てから出かける方が頑張れそうな気がする」
「うん、俺も」
あ~くそっ!どうして今日は月曜なんだ!会社に行きたくなくなるじゃないか、まったく。
「スーツを着ている儀にくっつくのもいいな」
あ~~だから!そういうこと言わない!
「スーツ姿の儀とヤリ……たい」
「ヒロ!」
ヒロに唇をふさがれて、それ以上何も言えなくなった。ズル休みをしたい気持ちがモクモク湧き上がってくる……でもな、確認事項もあるしアポだってある。誰にも任せられない案件もあるし……あああ!もう!
ニヤリと笑ってヒロが身体を起こした。
「遅刻するぞ」
誰のせいだと思ってるんだ!
「ヒロのせいだろうが……まったく」
ヒロに腕をひっぱられソファの上で向かい合う。あと1時間早起きすればよかった。
「いつでもいいよ。俺が帰ってくるまでスーツ着て待っていてくれる?」
「今晩そうする」
ヒロは笑って立ち上がり、またもや俺の腕を引っ張る。仕方がないので立ち上がるとヒロに抱きしめられた。
「楽しみだな。今週頑張れそうだよ」
ああああ!!!!!くそつ!
「いってらっしゃい」
「……いって……きます」
ソファの背に掛かっていたジャケットを手渡され、時間切れを自覚。早起きは三文の徳……まったくだ。この際「徳」でも「得」でもどっちでもいい。俺が大損したことに変わりはない。
「儀」
「なんだよ」
「今日はさっさと店じまいして急いで帰ってくるから」
……俺をどうしたいんだ、ヒロは。
「わかった、待ってる」
ジャケットに腕を入れカバンを掴む。これでホントに時間切れ。今晩の為に、キイのところでランチを食べる事にするか。栄養をとって夜に臨む。
さてと、月曜日を乗り切るか。お楽しみがまっていればいつも以上に頑張れるだろう。憂鬱だった月曜もヒロとなら楽しい曜日として上書きできる。
よし!頑張るぞ、俺!
・・・・・・・・・・・・・・・
会社勤めの皆さんは「うげえ~月曜だ~」ですが、私は今日を乗り切ると明日はお休み!金曜か土曜日にあたる素敵曜日です。
休みといっても仕入れがあれば遠出。何もなくても何かがあって午前中は潰れてしまう。14:00くらいから酒盛りを初めて17:00には撃沈しているという、1日があっという間に終わってしまう定休日。
お金を稼ぐって大変ですよね===
ギイさん、若造君に「顔にやけてますよ」なんて言われそうです。
キリっと男前になってバリバリ仕事しないとww
せい
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