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july.17.2017 ハッピーマンデー
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朝……か。
うっすら目を開けるといつも見えるのはミネさんの背中のはずなのに。
「おはよ、ハル」
「お……はようございます」
ミネさんはもう起きていて肘をついて頭を支えていた。ゆったり僕を見下ろしている。
「起こしてくれればよかったのに」
「んん~そうなんだけどね。ハルを見ながら噛みしめていました」
噛みしめる?いったいなにを?……まさか寝る前の……モゴモゴ。
「顔が赤くなりましたよ?いったい何を考えたのかな?ハルのエッチ~」
「ミネさん!なんですか、もおおお」
ふわりと頬にミネさんの手が添えられる。とても優しい触れ方で少し上にあるミネさんの瞳を見る僕。そこには同じくらい優しい目が僕を見つめていた。
「飯塚に言われたんだよね。俺達1年を迎えたんだよ」
「一年?……ええ?もうですか?」
「ハルも気が付いてなかったか。そうなんだよ。それで去年のことを思い出してみたら、俺が不味いキンピラ作ってジタバタしてた日、ハルはお泊りでいなかった」
「あ……マスターの所に行ってたん……だ」
ミネさんが朝帰りをして、僕はそれの仕返しみたいなことを繰り返して一緒に帰らなかったり、マスターのお店に遊びに行く振りをした。どんどん毎日が淀んで暗くなって、でも僕達は「ごめんなさい」と言われても困る状況で、すれ違っていた。思えば1週間に満たないそんな日数だったのに、延々に続いていくような憂鬱な毎日。そんなことがあってから……1年。
「そのあともちょっとハルを困らせちゃったけどね。俺がみみっちいケジメに拘ったから」
「そんなこともありましたね」
「ハルがお泊りから帰ってきて「俺がなにそれ~」言ってね。世界が変わった」
ミネさんが僕をふんわり抱きしめる。ふんわり、素敵にふんわり。
「不思議なんだ」
ミネさん?僕はすっぽり包まれたままミネさんが何を言おうとしているのかを探る。でも……ここは温かくて優しい場所だから、うっとりしてしまう。僕の精神安定剤だね……ミネさんは。
「できない、無理ってね……俺そればっか言ってきて。でもさ、ハルとは京都にいけたし、箸もオーダーした。できないじゃなくて、実現するにはどうするかって考えるようになった。これは飯塚とサトルの影響もあるけど……俺、色々やる前に諦めていたんだなって」
諦め……わかります。多くを望まなければ失望もない。そんな風にいつも考えていた。でも望まないと得られない事だってある。この目の前の人だって……望んだから得られた。
「ハルもアキラメ派だよな」
「ええ……以前は。でもミネさんのことになると貪欲派です」
ミネさんは頬にあった手を頭に移動させてグシャグシャにした。
「俺さ、海外ドラマみてね、そんなイチャコラって周りが迷惑だろ!とか。好き好き言いすぎてウザったいだろって思ってた……でもさ……ハルを好き、恋人になってくださいって言った日からどんどん「好き」が積み重なって大変なのよ。世界中に愛を叫びたいくらい」
ミネさんの表情は……ほんとに僕が好きって顔で……そんな顔を貰えるなんて思ってなかった頃の自分を考えたらジワっとした。
「ハルは……俺と一緒になる想像してなかったんだな。今そんな顔してる」
……はい、してませんでした。
「あやうくすり抜けるところだったのか……うわ~~怖すぎる!」
「ミネさん?」
「俺はハルのことになると打たれ弱いのよ。もし……もし、俺以外の誰かを好きになったらすぐ言ってくれる?筋トレみたいメンタルに鎧着せるから。ああ……無理か」
ミネさんの手のひらと指が僕の顔を滑る。
「こんな……かわいくて……俺を大事にしてくれて……」
ミネさんの目からポロっと涙がこぼれて僕はびっくりした。
「ハルがいないと……困る。泣けるぐらい……困る」
僕は精一杯の力でミネさんを抱きしめた。僕も同じ……です。ミネさんじゃないと困る……他はいりません!
「……来年の海の日まで……よろしくお願いします」
「ミネさん……来年?じゃあ、僕は10年予約します」
「10年?」
「……当面の目標ですね」
「……ハル、二人で日本中あちこち行こう。海外でもいいけど」
「……はい」
「俺……ハルがいればいいや。他はいらない」
「他に行かれても困ります」
「ハルは冷静だな、俺はもうタイヘン。お客さんの大人女子に可愛がられているし、男子だって密かに狙っている奴がいるかもしれんとか……心配すればキリがない」
ミネさん、そんな心配は無用です!ミネさんの鼻をムギュウと摘まんだ。
「そんなこと言ったら、ミネさんが「やっぱり女子がいいのよね~」って言いだすんじゃないかって……いつも心配しています」
ミネさんも僕の鼻をムギュウ。
「俺はハルに向き合っているからね。女性は全然関係ないよ。俺言ったでしょ、ハルがいればいいって、他はいらないよって」
「……じゃあ、来年もそう言ってください」
「任せなさい。海の日は絶対ハッピーマンデーになるってことだ。だからモレナクお休み。また来年もこの日を迎えましょうって毎年約束しようか。そうしよう……それで餃子を作る!」
「餃子?」
「皮から手作り。二人仲良く餃子を包んで焼くの。あ~水餃子も捨てがたいね。皮が美味しいから水餃子も驚異的な美味しさになるわけよ」
「……おいしそ」
皮から手作り?粉は何かな……強力粉?普通の小麦粉?皮に味つけるのかな?肉まんの生地にはお砂糖いれますもんね。どうなのかな。
「ハル、色々考えてる顔だ」
「ミネさんに鍛えられていますからね。皮は何の粉ですか?」
「レシピを想像しちゃうなんて……ハル……俺ちょっと感動しちゃった。それに嬉しいよ。ハルと料理の話ができて、一緒に料理ができる……餃子の前に1周年記念をしようかな」
「記念?」
ごろんとミネさんが僕に乗っかる。ミネさんの少し上気した顔は一周年記念がなんであるか一目瞭然。僕はこの顔が好き……格好良くて、ちょっとエッチ。
「仲良しの確認。どうでしょう?」
「いいと……思います」
「さすがハル。やっぱりハルは最高さんだね。来年の今日も一緒に迎えような、ハル」
「もちろんです。ミネさん?」
「なんですか?」
「僕はさっきからずっとキスを待っているのに、ミネさんおしゃべりばっかりです」
「ふふふ、やっぱりハルは最高~~」
柔らかい唇が降りてくる。ミネさんと僕が繋がってお互いが一緒だって確認できる大事なキス。とっても気持ちよくて、優しい気持ちになれる……そして熱を生む。
ミネさん、素敵な1年ありがとう。そして来年も「ありがとう」を言わせてください。僕、頑張ります。ミネさんが好きでいてくれる男になるために。ハルじゃないとダメって思い続けてもらえるような男になろう。
僕と一緒に笑っていてください。ミネさんの笑顔があれば前を向いて進んでいけます。
ミネさんと一緒で……よかった。ずっと手を握り続けよう。ミネさんと歩いていけるように。
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