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november.12.2017 幸せな一大事 その2
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「おまたせしました」
「おおお~うまそうじゃないの」
テーブルに置かれたのはグラタン。
「『ギイさんスペシャル』と勝手に名付けました」
「まじか!」
キイが運んできてくれたのはアツアツのチーズが噴火口の溶岩みたいにブスブスしている皿。俺のお気に入りになったモッフモフのマッシュポテト。ヒロが好きなチリビーンズ。これを一緒に食べたら滅茶苦茶美味しかった。それで俺は思いつきをキイに言ってみたというわけ。
「マッシュポテトにチリビーンズかけてチーズタップリのグラタンにしてくれないか?」
俺の要望は通り、見事なグラタンが出来上がった。SABUROに来るたび俺達はこれを頼んでいる。裏メニューっぽいし優越感もある。最初王子様達全員に睨みつけられた俺のポジションも結構アップした証拠だよな。女性が多い中、毎回男二人で食事を楽しんでいる俺達にはそのくらい恩恵があっていいと思う。
「熱すぎて火傷しますよ」
「このグラタンの熱さは知っているよ。口の中の上側がヒリってなるからな」
「儀はせっかちだからね。ほら、取り分けるから皿を取ってよ」
ヒロに素直に皿を渡してワクワクしている間、キイはまだ俺達のテーブルの脇に立っていた。店内はいつものように客で一杯だというのに。
「キイ?さぼってたら不味いだろ」
「ええと……お二人にお願いがありまして」
「お願い?」
俺とヒロは顔を見合わせた。なんだろう?お願い?
「明日の夜、食事にきてくれませんか?」
「明日?」
「はい。17:30くらいに」
「なんで?」
「なんでもです」
なんとも煮え切らないキイの発言。なんでもです?なんだそりゃあ。
「キイちゃん、何か特別なことでもあるの?」
「ええと……まあ。明日お店は臨時休業なんですが、急きょお客様を迎えることになって。でもガランとした店内に一組だけって寂しいですよね。それで何組か常連さんに協力してもらっています」
「いまいちよくわからないな、それ」
「料理はお任せで2000円ポッキリです」
「行く!」
ヒロの電光石火の即答。明日はヒロも休みだし、いつもの日曜なら昼間から飲みだして、何かをつまんでダラダラが定番。たまにはデートもいいか。
「ヒロが行きたいならいいよ。ちょっとおしゃれしてデートだな」
「儀……恥ずかしいこと言うなよ!」
「ああ?いいじゃないか。近所のスーパー以外、最近二人で行ってないし」
不貞腐れたヒロの顔は、あくまでも照れ隠し。相変わらず可愛い奴。
「はっきりしないキイが面白いから明日来るよ」
「ああ、よかった。ありがとうございます!」
キイはようやく笑顔を浮かべてトレンチを抱えて厨房の方に向かった。2000円ポッキリでお任せの料理が食べることが協力になるならそれもアリだろう。なんだかんだでキイには世話になっているし。もちろんこの店にも。
「明日何があるのかな」
「なんだろうな。ヒロのスーツ姿を久しぶりに見たいな」
「なに言い出すんだよ。着慣れていないスーツなんか最悪だ」
「大丈夫だ。俺がばっちりコーディネイトしてやる。ヒロは今年のクリスマスもゲッソリしているだろうから、一足早いクリスマスディナーってことにしよう」
「2000円ポッキリとは、俺は随分安上がりなんだな」
プイと横を向いてみせるヒロ。だからな、それ可愛いだけなんだって。
<to be cotinue……>
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