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その2
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知らなかった。全然知らなかった。
「・・・俺だけ知らなくて・・・教えてくれてもよかったのに。」
「ほんと、サトはかわいいね。」
頭のてっぺんにキスをされて、出そうになっていた涙が引っ込んだ。
「お友達期間の時に紹介してくれてもよかったのにさ、もっと早くよし兄と逢えたのに。」
「紗江が絶対ダメって言った。」
「なんで?」
「ん~。もう言っちゃってもいいよね、時効だし。それはね~サトは僕の好みだから。」
ピキーンと背筋が伸びで固まりまし・・・た。
「紗江と友達だった時期、僕はだいぶしっかりしてきたとはいえ、それなりにフラフラしてたから。あの時だったら、うっかり押し倒してたかもしれないしね~」
「…冗談はヤメテクダサイ。」
「紗江はそれわかってたから逢わせないって。」
「姉ちゃんに感謝したほうがよさそうだね、この件に関しては。」
今となっては想像できないけど、若造の時によし兄にロックオンされて逃げられただろうか・・・
たぶん無理な気がする。
「紗江は3年の間、ずっと僕を見守続けた。僕が人間らしくなるために軌道修正をしてくれたし、たくさんの楽しい時間をくれた。そのくせ紗江なしでは無理になった僕を放り出したんだよ。」
「ひどい話だね。」
「そんなことない。それで何が大切なのか、僕は気が付くことができたから。今幸せだけど少し怖い。」
「何が?」
「紗江を失ったらどうしようかって、お父さんもお母さんも失うことになる。もちろんサトも。」
「そんなことになる前にどうにかすればいいんじゃない?
よし兄一人でどうにも出来ないことでも、ねえちゃんと考えたら解決するかもしれないし。
俺だって力になるし・・・どうしてもダメで姉ちゃんに捨てられても、俺はよし兄とずっとつきあっていくから、それは約束する!」
「どうしてこんなに可愛いんだ!反則だぞ、サト!」
「ちょっとあんたたち・・・・なにじゃれてんの?」
ぱっと離れたよし兄を見て笑がこみあげて噴きだす。いつからいたんだよ、ねえちゃん。
話に夢中で気が付かなかった。
「サト。孫は私が産むから、あんたは何も気にやむことないからね。」
「は?」
「脱『恋愛欠陥人間』よ。足掻いてみなさい、初恋は実らないっていうのはね、子供の時にするから実らないの。自分の生活を自分で作っている今だからこそ実らせることができるって思わない?」
「なんだよ、俺なにも言ってないし。いきなりそんなこと言われても・・・」
「恋愛で悩んでいるのは予測済み。女のことなら私に聞きなさいって話だけど、由樹に聞いている時点で・・・私なりに察してるわけ。まあ情けない顔じゃなくなったのはいい兆候ね。」
「ドロドロに甘やかして泣かせてすっきりさせたかったのに、ね、サト。」
「よし兄・・・怖いって、それ。」
「サト?」
「ん?」
「実らせた私本人が言うんだから、頑張りなさい。」
そういってほほ笑んだねえちゃんの肩をそっとよし兄が抱き寄せた。
飯塚の顔がみたいな・・・。
並ぶ二人の姿を見てそんなことを思う。アイツがやりたいことができるように、それを実現できる環境を俺が作ればいい。
それが現実にできた時・・・「好き」だと言おう。
俺はそう決心した。
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